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「おはよ。じゃなくて久しぶり、ね。」
「…久しぶり。」
「ほんっと変わってないね!あたりまえか。別れてか
らまだ2年だもんね。」
「そうだよ。」
「…なに。口数少ないなぁ。久しぶりに会った、あんなに大好きだった元妻なのにー。」
「だった、だもんね。」
「もう!相変わらず減らず口!でも、私いい女でしょ?やっぱり。」
この僕の前でペラペラと1人で喋っている女は、立花優実。僕と同い年28歳の、…僕の元妻だ。
「それで。考えてくれたんでしょ。あの話。」
「うん。…ってさっきもLINEで送ったじゃん。」
「そうだったね。…思ったんだけどさ、奏助、元妻のLINEブロックしないのね。もうブロックされてるかと思ったのに、私。」
「…。」
そうだ。僕は優実のLINEをブロックしていない。…未練がましいみたいに見えるが、ただ単純に忘れていたらだけなのだ。多分。
「だってさー、もう新しい彼女いるんでしょ。…美香?佐野美香ちゃんだっけ。」
!!…なんで知っているんだ!?
「なんで知ってるの!?って顔。そりゃあ妻ですから、分かるよ。別れる前から、あなた達危うい感じ、してたもの。」
「でも…。1度も会わせたことは…。」
「なに言ってるの。奏助のまわりにいる人のことは大体把握してたわよ。ばかねぇ。」
「でも、それだけで、僕らの関係まで…?」
「女って鋭い生き物なの。」
…。そうか。知ってたのか。知ってても何も言わなかったのか。なんでだろう。別れ話を切り出したのは僕で、それに君が渋々承知した…って感じだったかな。…ってことは君は最後まで僕のことを好いてくれていて、一緒に居たいと思ってくれていたのかな。…そして、この今も。それとも、ただ単に面倒くさかっただけかな。
…分からない。君の気持ちが。結婚した時から、今でも、ずっと。君も僕も素直じゃないからそんなこと聞けないし言わないから。
「あの話、考えてくれたんでしょ。で、答えは?」
「お願い、するよ。」
「そう。やっぱり。奏助才能ないもんね。じゃあ、今から家に行っていい?」
「うん。」
―こうして、僕の元妻、立花優実は、僕の、僕の“ゴーストライター”になった。