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初投稿、駄文です!
どうぞお付き合いください!!
眠いのに、ひどく目は冴えていて、頭痛がする。寝たい。でも、眠れない。寝てしまって、何もかも忘れて、自分が誰なのかさえ忘れて、それで、誰でもなくなってただ、ここから見えるものすべてを投げ出して今まで築いてきたものを全て、そう、一つ残らず、壊したい。そんな事してもなんともならないのなとうの昔に知った事なのに。
「…結局」
馬鹿なんだなぁ。あたしは。
騙されている事。そんなの付き合っていた頃から知っていた。相手がいる事。その人との間に子供もいる事。
知っていたのに、別れなかったのは、きっとあたしがズルいからで、もっと一緒に居たいなんて、思ってしまったからで。知っていたのに気づかないフリ。馬鹿なフリ。あなたのために、演じた。知ってるくせに辛いなんて、そりゃそうだろって話なんだよ。
ほんとに、ほんとに、馬鹿な女。知らなければ良かったの?別れれば良かったの?答えを教えて。誰か。正しい答えを―。
いつのまにか、眠っていた。というより意識を失っていた。頬に冷たいしずくが流れていた。何時だろう。歩けない。這いつくばって、進んだ。朝の5時だった。3時間しか経ってないのか。もう少し寝てても良かったな。なんて考えているうちに、昨夜の事を思い出した。透明なしずくが、音を立てて落ちた。止まらなかった。昨日、泣けなかったから。
あの人との思い出の中ではあたしは泣いてばかり。初めて会った日。初めてデートした日。初めてキスした日。初めてー。
思い出が、駆け巡った。
あぁ、あたしは、あの人なしじゃ、
「生きて、いけないよ…。」
どうしようもない男に、どうしようもない女が恋をした。それは決して、許されるものではなかった。
「なぁに。この話。」
君が不機嫌そうな顔をして僕に紙の束を突き返してきた。僕、櫻井奏助は小説家。でも、売れない…小説家。
「新しい、小説…だよ…?」
おずおずと僕が答える。
「そんな事わかってるわよ。見りゃわかるわ!」
僕の恋人兼アシスタントの佐野美香はご立腹だ。
「あの…どこがダメだった?」
「なんかさー。まずチョイス。話のチョイスがダメだね。」
え、そこから?!
「大手企業のやり手社員と新卒受付嬢の不倫?!はっ。なにそれ。」
「なにそれって?」
「ここまで言ってわかんないの?!ありきたりって言ってんの!あ・り・き・た・り!」
そうかなぁ。いいと思うんけどなぁ。
「えー。他には?」
「あなたさー。ひたむきに恋してて、頑張ってる女の子が描きたいって言わなかった?」
「うん。言った。ひたむきでしょ?」
「はぁー。なーんもわかってないのねぇ。」
へ???
「なんかさー、今後の展開によるかもだけど、掴みが下手くそ。ひたむき感はゼロ。ちょっとイラっとする。あと、読む気起きない。」
…悲しい。
「あんたさー。女目線で描くのやめたほうがいいよ。下手くそだよ。はっきり言って。」
ええっ?!
「ひたむきに頑張る女の子ってこんな感じかなぁ。なんかメンヘラ化するのが目に見えてる。」
ごもっともです…。
「じゃあ…。」
びりびりびりびりぃっ。
音をたてて僕の原稿は真っ二つになった。
「ああ!僕の原稿!」
「いいの!こんなくだらない話!」
「いつか使うかもしれないじゃないか!」
「いつ?」
「うっ…。んと、僕が、有名に、なっ…」
「ならないから。このままじゃ。」
ぐっ…。痛いとこついてきやがって…。
「そういえば、一応聞いておくけど、この話の題名は?」
「んと、許されない恋、だったかな…。」
「うっわ、ネーミングセンス。」
「うっさいなぁ。」
君が優しく笑う。いっつも馬鹿にしたようにしか笑わないから、ちょっと可愛い。
「…なによ。その顔、キモい。」
ああ、通常運転に戻っちゃった。可愛い顔してるんだし、もーちょっと優しくしてくれても…。
「さ、新しいお話書こうよ。てか、書いてよ。」
「…うん。」
「じゃあ、1人にしてあげるから、早く書きなさいよー。私、家に帰って支度して、編集社行くから。」
「…うん。」
「じゃ、期待してるよ!先生!」
ふわぁって君が笑う。扉がしまる。閉める時に起きた風が君の甘い残り香を運んでくる。…いい女だな。
幸せの余韻に浸っていると、現実に引き戻すスマホの着信音。
『ねぇ、この前の話、考えてくれた?』
僕は答える。
『もちろんさ。』
ああ、僕は―。