表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

第2話 白ウサギの手袋、それから扇子

「知ってると思うから言うけど。それって営業妨害だ」



赤憑きが傘を差して立っていると、背後から気取った女の声がした。

太陽はちょうど真上にあるとみえたが、それでもいつも雨が降っている、このニンフ通りの街道沿いには関係ないことだ。



「傘を差してるだけだろ?」

「それが日傘なら問題ないよ。でも、雨傘となれば話は別さ。雨傘は馬車の御者ぎょしゃを怒らせる。ほら……」



女のセリフが終わるやいなや、目の前の街道を馬車が猛スピードで過ぎ去り、道路の水溜まりの雨水を二人はひっかぶった。



「クソ。あの馬車、わざと引っかけやがって」

「仕方ないよ。雨の日は男《紳士》なら馬車に乗って移動しなきゃいけない――そういう“常識”がなきゃ、彼らは食っていけないんだ」

「にしたって、雨傘くらいは許せってんだよ。何のための“異世界の知識”だか」



グチを垂れつつも、赤憑きが振り返ると、白シャツに短パンで赤目の女は白いショートカットな横髪をくるくるとイジりながら肩をすくめた。

シャツが透けていて、どうも胸元おっぱいが危ない感じの女だ。

赤憑きは年相応に慌てて、その胸元おっぱいから目をそらす。



「見えてんぞ、ウサギ」

「……見たかったら見てもいいよ?」

「バカ言うんじゃねーよ……その……バカ」

「あはは、かわいいね。少年らしい。とても人殺しには見えないなぁ」



赤憑きは顔を背けたまま、ボロ布をポケットから出して、タオル代わりだ――とばかりにウサギに投げる。

ウサギはそれを受け取ると、不思議そうに目をパチクリとさせた。



「それで拭けよ。貧しい胸なんかボクは見たかねーから」

「ありがと。でも、そのセリフはなんかキモいや」

「お前な……」

「で? 今日は誰を殺したんさ?」



質問の後に、ウサギは赤憑きに近寄って、彼の周りの空気を口でスゥっと吸い取ると、味見テイスティングをするように瞳と唇を閉じて舌を転がした。



「んん~んん……ん、四大貴族が一つ、シルフ家の太っちょオリバーか」

読心術それやるんだったら、そもそも質問すんなよな」

「四大貴族は、異世界転生させられた勇者の子供たちだ。殺しても無駄だって思わなかったの?」

「人の話を聞きやしねーのな」

「で?」

「奴らは殺しても数年で聖堂から生き返る……それが勇者の血の力だ。だろ?」

「分かってるのにやったのかい? 報酬もないのに?」

「そうだ。それに奴らだって不死身じゃない」

「……どっちにしろ、あたしには意味のないことに思える」

「どっちにしろ、お前に関係あることじゃねーし」

「どうかな……それって“彼女”も同じなの?」



赤憑きはキッとウサギを睨みつけた。



「何の話をしてんだよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ