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――第五章―― 帝国の術師のこと。

間が空いてしまいましたが、復帰です。

ブックマークを残していて下さった方々には、感謝を述べたいと思います。


この間、「僕は、剥奪術士。」(https://ncode.syosetu.com/n4596er/)を書いてました。

同じ世界の物語で、エピローグに当たる部分で、この作品とクロスする形になっています。

というわけで、先に「剥奪術師」を読んでいただくと、第五章以降がより分かりやすくなるかと思います。



結局、俺達だけで、今回の事案を制圧してしまった。

と言っても、中での戦闘のことは、内密にしてある。

スティグマからして、戦闘の様子は目撃していないしな。


ダンジョンが発生していたわけではなく、野良宝石公女……スティグマが召喚した石の精霊の一部が、魔石目当てに遺跡の地下に坑道を作っていたのを、魔石拾いの連中が勘違いしただけだった、ということにしておいた。

魔道具や何やかやが持ち出された件の説明は、俺達の知ったことではないので、スティグマに丸投げだ。


遺跡の地表にいたアルファイン達は、興奮状態で汚れた姿のまま出てきた俺達の様子を見ているので、もう少し何かが中で起こっていたと、気付いただろうが。


そして、オブシーデ達とは、しばらくの間、大人しくしてもらうよう、話をつけてある。

俺達が、精霊の声を聞ける人間を見つけて連れてくるという約束と引き換えに。


オブシーデ達から受け取れる対価はないが、彼女らとの関係が改善されれば、石の精霊の国の世論に影響を与えることができる。

それに、俺自身も、そんな術師に会ってみたい。

あとは、西の帝国の技術とやらにも、興味があるしな。


しかし、サルサリアに戻り、デルタ卿に西の帝国に向かおうと思っている旨を伝えたところ、うーむ、と唸りながら顎に手をやり、考え込んでしまった。


「イオタ帝国ですか……。このところ、国内で騒動が続いていたそうな。宝石公女や銀狼を連れていると、面倒ごとに巻き込まれるかもしれませぬが、どうでしょうな」


「例の、人間族以外への風当たりが強いという話でしょうか?」


「うむ、元々そういう雰囲気があったところに、領土内での魔物の活性化や、基幹魔道装置が混乱したことがあったせいで、警備隊などが警戒を強めているようです。

まとまった戦力を持った、見慣れない存在が入国したとなれば、目を引くでしょう。」


「なるほど。それを言ったら、精霊達だけでなく、俺自身も引っ掛かってもおかしくないですね。」


「そうですな。ある程度の身分証明は用意できますが、サルサリアと帝国は、商業ベースでのやり取りはあるものの、国家間の平和条約などは結んでおりませぬ。どこまで効果があるかは、保証しかねます。かの帝国の現場は、サルサリアほど合理的な考えで動いているわけではありませんので」


「うーむ、そのような身分証を持っていて、さらにトラブルに巻き込まれた場合には、かえって迷惑をおかけしてしまうやもしれませんね。俺の用件も、精霊の声を聞ける術師に会いたいという、個人的なものですし……」


「精霊の声を聞ける術師ですか。ちょうど、帝国の高位の術師が、近々サルサリアを訪れることになっております。精霊の声を聞けるかどうかは分かりませんが、渡りをつけてみましょうか。」


「ほう、そうなんですか。それはぜひ、お会いしてお話をうかがいたいですね。どんな方なので?」


「リュシーナ公女とおっしゃる大貴族の娘さんで、まだ若い学生にして、帝国全体でも指折りの術師らしいですぞ。」


「それは、さぞかし優秀なのでしょうね。どのような形ならお会いできそうですか。」


「有力な冒険者として紹介するのであれば、お茶会や晩餐会などがよいのでしょうが、陽光殿の場合、あまり飲食はされませんでしょう?」


食べたり飲んだりする振りはできるが、相手がそれなりの観察力の持ち主であれば、不自然さに気付く危険がある。

味覚もそれほど優れていないので、料理や飲み物の細かい味の話題を振られると、答えに窮することもあるかもしれない。

「そう、ですね。」


「それに、どちらかといえば、長く詳しいお話をされたいかと」


確かに。精霊の声や帝国の精霊術のことを、パーティーの大勢の前で話し込むわけにはいかないだろう。

デルタ卿に、うなずいてみせる。


「公女は高位の術師だけあって、サルサリアで魔道具店を訪問する日程が組まれています。そこで、精霊石や魔道具の買い付けの場に、参列されるのはいかがですか。スティグマ殿には貸しもあることですし、嫌とは言えないでしょう」


いたずらっぽい目というのは、こういうのを言うんだろうか、という目つきだった。

アルファイン達とはまだ話していないはずだが、遺跡で何かあったこと、デルタ卿なら察しているのだろう。


「なるほど。魔道具店のいち研究員という立場で参加できれば、ありがたいですね。堅苦しいこと抜きに、中身のある話ができそうです。」


デルタ卿と握手を交わし、後日の連絡を約して退去する。

できる知り合いがいると、話が早くて助かるな!


その後、図書館に立ち寄って、イオタ帝国について調べてみた。

この図書館の閲覧権も、スティグマの紹介で得られたものだ。

彼には困ったところもあるが、俺にとっては幸運な出会いの一つだったと言えよう。


さて、イオタ帝国について、まずは一般向けの書物を眺める。


俗に「揺り籠から墓石まで」と言われるほどに、身の回りのあらゆる道具に精霊を宿し、魔道具としている付与術大国。

かつて六人の英雄が、魔王と呼ばれる強大な存在を討伐し、皇帝と五精家として帝国の基礎を作った。

多彩で強力な魔道具を多数擁し、強国として名を知られている。


ふむふむ。

サルサリアが転生者の作った国だとすれば、イオタ帝国はこの世界の人間が作った国ということになるか。

魔王という存在はちょっと気になるがな。


もう少し、詳しい資料を見てみる。閲覧権限区分で言えば、役人や研究者向けか。


帝国の形はとっているが、皇帝の権力は弱い。帝室は調整役や官僚機構の運営を行っており、五精家と呼ばれる大貴族が中心となって政治や経済を運営している。

大貴族はいずれも高位の術者であり、付与術の能力が貴族家の継承順位で重視される。なお、付与術の能力さえあれば血統はそこまで重視されず、養子から当主となった者も少なくない反面、付与術が使えない者は血統によらず貴族家から出されるという。


俺は、帝国では貴族になれぬようだ。

人間でない時点で、どこまでの権利が認められるかも分からんが。


にしても、リュシーナ公女の通っているというイジュワール魔導学院とやらは、どこにも記述がないな。

デルタ卿の口ぶりでは、特に機密というわけでもなかったようだが…… はて。




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