ダンジョンの主のこと。
評価、ブックマーク、ありがとうございます。
とりあえずの目標としていた評価100まで、あと少しとなりました!
カイアが言った通り、いや正確には、カイアは言っていないがアラゴンが解説してくれた通り、か? 通路は微妙なカーブやねじれによって、遺跡の中枢からは離れていった。
途中からは枝分かれもしており、三次元的に交差していることもあって、地図や図面を起こすことは難しそうだ。というか、少なくとも俺には無理だ。
「どう思う? このまま地中で深部に向かうか、通路の方を調査してみるか」
アラゴンが言う。
「そうですニャ。通路で中枢に向かうのは難しそうですニャ。ただ、相手の情報が何もないまま中枢に入っていくのも危険ですニャ。通路に何か特徴があればヒントになるかもしれませんニャ」
そうだよな。
通路が特に入り組んでいる辺りで、通路に入り込んでみる。
当然ながら通常の光は存在しないのだが、周囲の岩に濁り魔石が含まれているため、俺達には、ぼんやりした光のトンネルに見えている。
岩肌はひだのような滑らかな凸凹が表面を覆っており、通路自体がうねっているのと合わせて見通しは悪い。探知がまともに機能しないことと合わせて、遠距離攻撃等は扱えないだろう。
「もし狙って作っているのだとしたら、探知妨害に力を入れているということか?」
「そうですニャ。この迷路の中で追いかけっこをしたら、追いつくのはなかなか至難の業ニャ」
アラゴンやカイアといえどもこの構造を記憶するのは困難らしく、ループして元の場所に戻ってくるような通路もあったため、分岐点では土魔術で天井に小さな目印を付けながら探索している。
おかしいと気づいたのは、一刻ほども経ってからだ。
「この場所は、見たことがある」
壁の結晶の模様を指さして、カイアが指摘したのだ。
だが、分かれ道に土魔術の目印はなかったはずだ。
戻って、目印を付けたはずの場所をよく見ると、そこだけ岩肌の様子が違う。
「目印を、削り取られている」
カイアの一言に、皆が息をひそめて周囲の気配を探り出す。
しかし、これだけの人数が追跡や監視に気づけなかったのだ。
改めて隠蔽されれば、そう簡単には探知できまい。
「サレ。サガスナ」
と、思ったら、向こうからアクセスしてきた。
位置を隠蔽した上での念話か。
すぐに切断されている。
皆の反応を見ると、全員が聞けたようだ。
かなりの情報が手に入ったわけだが。
「カイアはどう思う」
「私には無い行動の選択肢」
つまり、様々な可能性を勘案しても、合理性のない行動ということか。
お利口さんではないらしい。しかし、それで?
「アラゴンは?」
「独断か罠か、あるいは両方か、というところですニャ」
「キョトンとしてるメンバーのために、もうちょっと説明してやってくれ」
俺も聞きたいから。
「目印を削ったのと念話してきたのが同じ相手だったとしますニャ。
まず、知性があり何かの術が使えますニャ。
次に、この相手は土魔術は使えない、もしくはこのトンネルを掘った術は使えないですニャ。
そして、我々を傷つけることは出来ない、すべきでない事情がある、もしくは許されていないですニャ」
「あ、すまん、三行くらいで頼む」
「ひとつ。お使いに出された子が思わず話しかけちゃったニャ。
ふたつ。話しかけるよう言われてきたニャ。
みっつ。話しかけちゃうような子をわざと送り込んできた、ニャ」
アウィネアは首をかしげている。
すまんな、俺が話を端折らせた。
そして俺も分からん。
「三つ目がほかとどう違うか、教えてやってくれ」
「ひとつ目かふたつ目なら、その子は無事ニャ。きっと助けるために接触して来ますニャ。
みっつ目なら、その子は指示を出してる側からはどうなってもよい子ニャ」
「ど、どういうこと?」
俺も聞いちゃうよ。
「みっつ目なら、その子が捕まっても相手にわたる情報は少ないニャ。放置した時のダメージが少ないニャ」
何を言っているんだアラゴン、なぜ俺と目を合わせない……
と、ラズがふっと消え、ヘンミィが跳ねるように動く。
「はい、動くんじゃないよ。抵抗しなけりゃひどいことはしない」
天井付近の窪みに隠れていた、布を被った小さな幽霊のようなものに、ラズが行く手を阻み、ヘンミィが弓の狙いを付けている。
使節団を結成した時に、ヘンミィやフィオーラ、シーラにも体を与えていたのだが、ヘンミィの動きを見るのはこれが初めてだ。
ラズの飛身ほどではないが、普通の人間には一瞬のうちに視界から出ていくように感じられるだろう。
アラゴンが真下に近づいていき、声をかける。
「安心してくださいニャ、さっきのみっつの話は嘘ですニャ。あなたは大事にされてますニャ」
「う、嘘なの……? なんで……嘘つくの……?」
「あなたが動揺したら、居場所が分かると思っただけですニャ。
それに、あなたを送り出した仲間は、私たちがあなたを痛めつけたりしないことを、知ってますニャ。
逃げないと約束できますかニャ?」
「は、はい」
「じゃ、降りてくるニャ」
布を被ったものが地面に降りてくると、弓を下したヘンミィが布に手をかける。スルスルとめくったその下にあったのは。
見覚えのある、カードだった。
「お前は、確か……楔石のティターニアか? お前が俺達を監視していたのか。なんだって、こんなところに」
「……」
だんまりか。カード相手に尋問ってのもシュールだが、どうするかな。
「説明は要らない。行っていい」
カイアが言うと、ラズもあっさりと道を開けた。
ヘンミィは、手に持っていた布をティターニアのカードに掛けてやる。
ティターニアが何かの術を発動させる気配があり、ふっと姿が見えなくなる。
カード状態では、もともとほとんど音を立てない。
すぐに、いるかどうかも分からなくなった。
「何も聞かなくて、よかったのか?」
カイアに聞いてみる。
「必要ない。必要なのは、今後の方針。
パイロペ団長、石の精霊同士での戦い、その覚悟は」
楔石
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