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探索開始のこと。

「陽光殿と、その仲間達ならば、ダンジョンを封印状態のまま調査できると?」


「宝石公女と、俺であれば、です。こちらの宝石公女は、強力な戦闘集団であると同時に、石の精霊の使節団でもあります。探知の術にも優れ、小柄で身軽、実体化した精霊であるため、人間では入れないような場所も踏破できます」


デルタ卿も冒険者ギルドの職員も、一理あるという顔つきだ。


「確かに、生成中のダンジョンともなれば、通路や部屋も人間が通行できない狭さの可能性があるな。

ダンジョンがどのような方法で生成されているかも未知数だが、マスターが仮に通常の生命体ではないタイプのモンスターだった場合、構造やトラップとして、そもそも通常の生命体では通過できないような仕掛けをすることも考えられる。

 内部の調査については、まずは一任しよう。だが、新たに出入り口が形成されたりすれば、周辺への対応は必要となる。一般の冒険者に対する封鎖の依頼も、同時に手配していく」


ふむふむ。宝石公女の実力を目撃する者が増えるという意味では歓迎するべきだな。


「では、地上部の対応に関しては、お任せします。

 我々の任務は、地下の状況を調査し、ダンジョン化が進行しているのか、モンスターが存在するのか、存在した場合はその情報を収集し、可能であれば討伐を行う。こんなところでしょうか」


「うむ。モンスターの種類も特定できていない。まずは断片的な情報を重ねていけばよいので、無事帰還することを優先してくれ」


細かいことは、現地の先行調査隊と打ち合わせることとし、連絡用の書類を預かって出発する。


銀尖達に乗って移動しながら、ストラスを召還して話を聞いている。


「この世界では、ダンジョンというのはどういうものなんだ?」


「コアがあり、周辺の魔力を吸収して自ら成長していくタイプのダンジョンもありますが、遺跡にコアが生成されるのは聞いたことがありませんな。

 ただ、遺跡が崩壊したために、結界のようなものが失われてコアが生成できるようになったということはあるかもしれません。濁り魔石とはいえ、あれだけの魔力が管理者も無しに存在すれば、様々なものを呼び寄せてしまうでしょうから」


うーむ。その辺は、あまりシステマチックじゃないのな。

ストラスに礼を言って、召還を解除する。


街道から遺跡に向かう道に、警備の兵が簡単な拠点を作り、通行も制限している。

デルタ卿からの書類を見せると、簡単に通してもらえた。


森を抜けていくと、遺跡の手前に、今度は冒険者ギルドが拠点を作っていた。

まだ数人だが、野営の準備もしている。

お、ギャンマ達もいる。


「ギャンマさん!」

声をかけると、手を上げて応えてくれた。


アルファインも、そばにいる。デルタ卿の書類を見せて、依頼を受けたことを伝える。

「珍しく陽光殿に先行したと思ったが、潜入調査は特命となったか。確かに、現状では通常のダンジョンのような進入はできないな」


ヴィタもいる。

「お供の妖精さんたち、また増えてるのね」


「お供ではない。精霊の使節団じゃ。ツヴァイとは、盟友ではあっても対等の関係ぞ。」

お、珍しくパイロペが自分から主張している。いい傾向だ。


「使節団? それは何だ」

ギャンマが興味を持ったようだ。


「彼女らは、地の底にある石の精霊の国の代表者。石の精霊の国の国益を守るために、こちらの世界で活動するのです。

石の精霊は、俺から独立して活動していくってことですよ」


ギャンマが意外な顔をしている。

「ほう。宝石公女というのは、陽光殿が精霊を使役する術なのだと思っていたが、そうではないのか」


「俺が召還するときにはそういう契約を結んでいますが、彼女たちは、自分の肉体を得て実体化しており、俺との契約も解消されているのです。ほかにも、契約なしに召還される場合もあります。今は、石の精霊がこの次元の世界に来るための術と考えてもらった方がよいかと」


ほかにも、カイアやアラゴンを交えて、宝石公女についての基本的な事柄を伝えておく。

アルファイン達のほかにも、冒険者の何人かが宝石公女たちに興味を持ったようで近くに寄ってきていた。

この先、俺がいない場で活動することも増えていくから、こまめにPRしていかないとな。


さて、探索任務に入るか。


「ツヴァイ達は、どうやって遺跡に入るつもりなんです?」


ヴィタが尋ねてくる。

顔つきからすると、方法によっては、同行しようと考えているのかもしれない。


「土魔術の応用で、自分たちを囲む小さな泡のような空間を作り、地中を進みます。

大きな空間を作ると魔力の消費が大きいので最小限のサイズに抑えるんですが、彼女たちは体が小さいわりに火力や探知の能力が高いので、相性がいいんです」


さりげなく、同行お断りの理由を混ぜておく。

悪いが、この事案は名前を売るチャンスなのだ。有名な冒険者にはご遠慮願う。


空洞を感知していた場所を教えてもらい、土魔術を発動させる。


「それでは、行ってきます」

「ああ、慎重にな」


数メートル下に、通路のような空洞がある。濁り魔石の影響で、少し離れるともう分らない。

近くには、魔力探知、生命探知にも反応はなく、音もない。


とぷん、という感じで泡のような空間を作りつつ地面に沈んでいくと、周りに集まっていたギャンマ達が手を振って見送ってくれた。


地中の空洞に、いったん出る。

丸いトンネルだ。

人一人がギリギリ通れるくらいで、壁はわりと滑らかで、砕いて掘ったような跡はない。

うねりながら続いているが、濁り魔石が濃い場所は避けているようにも感じる。


「アラゴン、どうだ?」

「人工的なものの気もしますが、地中にすむ生物にも似たような穴を掘るものが何種かいますニャ」

「同意。魔獣や魔虫を使役している可能性もある」

カイアも短くコメントする。


前に、緋夜も使っていたな、地竜だったか。

術の痕跡は、濁り魔石のせいで分からない。

行ってみるしかないな。


「遺跡の深部に向かう」

歩き出そうとすると、カイアが地面を指さした。


「地中を進むべき」


「俺の術はそこまで速くない。歩く程度の速度しか出せんぞ?」


アラゴンが、補足してくれた。


「通路は無視すべきですニャ。

ダンジョン化が何者かの意思で進められているとしたら、通路は簡単には中枢部につながりはしないですニャ。

逆に、単に迷い込んだ生物のせいだったとしたら、やはり例の施設とは関係ない場所に向かっていくですニャ。

地中を進んで最短距離を取っていけば、この通路の意図も分かるでしょうニャ」


カイアさん、言葉、少なすぎっす……



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