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夜の集いのこと。

焚火を囲んで、大小さまざまな影が集っている。


「ここに、この地を代表する様々な種族が集まって輪を為せることを嬉しく思う。我が眷属、石の精霊、猫獣人、人族。この精霊の里が、その友誼を象徴する場であって欲しいと、願っている」

云々。


堅苦しい挨拶は誰も期待していないだろう。

簡単に乾杯の形を取って、あとはダラダラとおしゃべりの時だ。

こんなにゆったりと過ごす夜なんて、記憶にないくらいだ。

この体になってから、昼も夜も大して意味もなかったからな。


酒を飲んでいるわけではないが、大勢が集まって騒いでいる気配というのは、こちらの気分もフワフワと高揚させる。

焚火の周りのメンバーを、順に眺めていく。


俺の背後の大きな二つの影は、銀尖と銀晶。

寄り添ってうずくまり、目を軽くつむり、ゆっくりと尾を振っている。

月明かりに、銀の毛並みがなだらかな陰影を浮かび上がらせている。


その脇に、ストラス。

鷺のような細い脚に、丸みを帯びたフクロウの体。

時折りまばたきをしながら、首を回したり傾げたり、こうして静かにたたずんでいると、ちょっと大きな普通の鳥のようだ。頭にちょこんと乗せた王冠が、キュートでさえある。

本性は、あんなだけどな。

時々、銀尖や銀晶と短く言葉を交わしている。


アウィネアは、いつもの銀の鎧。見た目は金属だが、実際の素材は俺の殻だ。着心地は悪くないはずだ。

巨大な盾とメイスも、同じく俺の殻が素材だ。必要ない時は、体に溶け込ませてしまえるのだろう。

藍色の髪は、月の光の中では限りなく黒に近い色合いに見える。


ラズの青色の髪も、ほとんど黒に近い。

タイトな衣装に施された銀糸の刺繍が、わずかに焚火の光を受けて煌めいている。


アラゴンは、ちょこまかと立ち回って食べ物や飲み物を配って回っていたが、今はようやく落ち着いて座ったところだ。

淡い茶色の髪が、月の光をそのままに映しているようだ。

髪から飛び出た猫の耳が、ときどきピコピコと動いている。


三人は、そろってカップの紅茶を口にしている。


ジタ、エッタ、テータの三人も固まって座っている。

それぞれの皿に、肉やパンやシチューのようなものが盛られているようだ。

魔石拾いの拠点よりは、だいぶんマシなものが出ているのだろう。まずは夢中で平らげていたが、お代わりの時からはアラゴンの宣告でセルフサービスになっていた。

お客さん扱いはそこまで、あとは従業員扱いというところか。

本人達も、むしろ喜んで自分で山盛りにしていたが。


この中で酒を飲むのはミューさんとクシィだけということで、二人が並んで座っている。

ミューさんは文献で読んでいた猫獣人の姿と実際のギャップをいちいち確かめているようで、今のところはクシィも機嫌よくそれに応じていた。

しかし、クシィが語る猫獣人の由来の下りに、先日のアラゴンの作り話が幾つも入り込んでいたのが気にならないでもない……

ミューさんの、学者としての客観性に期待しておこう。


残るは、というか、俺の両脇にへばりついているのは、パイロペと緋夜。

夜なのだからワタクシに譲りなさいよという緋夜と、昼間はニンゲンがくっついたのだと主張するパイロペ。

二人まとめてわきに抱えて、胡坐をかいた両ひざに乗せておいた。


残る空間には、カードが何枚も浮いている。

ミューさんの連れてきたエピドテ始めローデやアクシア、ヒヤシンス達八枚のカードに、カンテラ、アズ、シーラ。


聞いておきたい話があるな。

「ローデ、ちょっといいか。石の精霊の世界のことなんだが」


ローデだけでなく、カードが一斉にこちらに集まってくる。

「どのようなことでしょう?」


「パイロアが開催しようとしていた石の精霊の会合とやらは、どんな感じだったんだ?」


「そうですね、千体の精霊に声を掛けたという触れ込みでしたが、会場とされた大空洞に現れたのは、一日待っても百体くらいだったかと思います」


十分の一か。

法も伝統も無いような会合に、良く集まったというべきか?

一日待つというのも気の長い話だが、精霊の世界のことは分からんしな。


「それで、選挙や投票という話は、皆には伝わったのか?」


「石の精霊の世界が危機に瀕しているという説明は、その場の皆が受け容れたと思います。

誰かがこちらの世界で活動しなければならないというお話しも、賛同を得られていました。

ただ、誰を代表とするかという議論をしているうちに、戦いを重視するのか、話し合いを重視するのかで意見が分かれてしまったのです」


「うむ。正しい姿じゃないか。議論を重ねたけれど、情報が足りないということになってお前たちが派遣されてきたのだろう?」


「それは確かにそうなのですが、戦いによって精霊脈を取り戻すという一派は、すでに会合を離れて動いているのです」


「え? ちょっと待って、それ、早く帰らないといけないんじゃないの?」


「次の会合は、こちら側で言う今夜零の刻に開かれます。我々は、その会合に出て、こちらの状況をお話しすることになっています」


「それまでに帰ればいいっていうこと? 急がなくていいの? っていうか、今ここでこんなゆったりしていていいの?」


「そうですね、このようにゆったりと過ごしていること、これこそが精霊の里の姿としてあちらで伝えたい体験だと、私は考えているのですが」


「……その場合、例え話にしかならんだろうが、そういう観点で行くと、誰が代表として相応しいと、石の精霊は考えるんだ?」


「それは、それぞれの精霊が考えることでしょう。私が言えることではありませんね」


いや、それはそうなんだが、石の精霊の考えることは、よく分からんということは分かった。


そして、夜も更けジタ達も眠った後、ミューさんの手元に七粒の石を残し、ローデ達は帰って行った。


歓迎会っていうか、送別会だったじゃねーか。





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