――第四章―― ジタ達のスカウトのこと。
カードが宙に浮き、動き回れるようになったということで、当分はミューさんの玩具に困ることはあるまい。
宝石野良娘達も、おもしろがって組手のようなことをしていたり、走ったり跳んだりしているようだ。
俺の目には見えないが。
「それでは、地上に帰りましょうか」
そう言って、地上に向けて空間を移動させていく。
あまり長いこと滞在すると、カードに濁り魔石の影響が出てきてしまう。
来た道を辿って戻っていく。
表層近くまで来て、ようやく濁り魔石の影響が薄れてくる。
生命探知への反応が少ない。
地上で活動している人間が、朝より減っているようだ。
地上に出ると、魔石を探している人間はわずかだった。
俺達が午前中いっぱい地中に潜っていたので、朝から探していた連中は、さっぱり収穫が無いことを受け入れた頃合いだろう。
後から来た連中が、事情を聴きつつも、わざわざ来たからにはと多少粘っているくらいか。
ジタ達を探す。
ちょっと疲れた様子で、木陰に三人が固まって座っていた。
「ジタ、戻ったぞ。調子はどうだ?」
「さっぱりですね。どうしちゃったんだろうって感じです」
半日を無駄にさせたことは多少心が痛むが、もっと大きな話を持ってきてやったぞ。
「素材集めの仕事は、結局その場限りのものだからな。素材が出なくなってしまえばそれで終わりだ。いつまでも続けれられるものではないさ。それで、どうする? 俺達と、一緒に来てみるか」
「そうですね、ここでこうしていても、どうにもなりませんしね。精霊の森の護り手のお仕事、ぜひ教えてください」
ジタは、受け入れてくれた。
「遺跡の中は、どうなっていたんですか?」
エッタは、そっちの方が気になっているようだ。
「濁り魔石だらけで、あまり近づけなかったな。とんでもない量だ。精霊術にも影響が出るほどだからな、もう一度中に潜るための坑道を掘るにも、時間がかかるだろう。
普通の冒険者が潜れるようになるのは、相当先だな」
「そうなんですか……。
あれ、あのカード達はなんですか? 浮いてるし、動いてる……」
エッタは、ミューさんの後方のアクシア達に気が付いた。
「あれは、精霊が宿るカードだ。話もできるぞ。ローデ、ちょっとこっちに来てくれないか」
薄桃色の光のかけらを漂わせながら、ローデのカードがこちらへスルスルと移動してくる。
「こんにちは。君はエッタ君?」
「うわあ、カードが喋るの? それとも、カードの向こうに精霊さんがいるの?」
「ふふふ、どちらなんでしょうね。こちらからは、エッタ君の姿も見えているんですよ……」
エッタも、案外理屈っぽいんだな。
悪いことじゃないが、やはり小さな村で過ごすのは向いてないだろう。
テータも、カードをのぞき込んでいる。
「きれいだね……」
カードのエッチングのことか、光のかけらのことか分からないが、ローデが一人で注目を浴びているのが気になったのか、ほかのカードも集まってきた。
「我は鉄斧石の精、アクシア。人間の少年よ、覚えておくがいい。我らは、やがて人の間でも広く名を知られることになるのだからな。エッタと言ったな。お前が、冒険者を目指しているなら、我もその供をするのにやぶさかではないぞ」
アクシアは、結構自己顕示欲が強いよな。石の精霊は、あまり自己主張がないものだと思っていたが。
それに、冒険に出たいタイプだったのか。
「いやいや、アクシアよ、お前はミューさんのところの研究用の石で召還されているんだから、そうそう自由に出歩くわけには行かんだろう」
「む。ミューよ、そなたは我らをあの部屋に縛り付けておくのか?」
「うーん。さすがに、勝手にどこかに行ってしまって帰ってこないというのは困りますね……
私が個人的に精霊石を買い取るには、ちょっと高価すぎますしね……」
「そうだな、お前たち7体の石で、十万G以上の価値があるからな…… 俺でも、金で買って集めていくわけにはいかん」
そもそも、強力な討伐対象でやっと一粒の石が手に入るだけなのだ。
ミューさんと言えども、元に戻せるから実験として許されているだけだろう。
珍しく、風信子石のヒヤシンスが口を開く。
「すると、金を払わねば自由にならぬ我らは、債務奴隷のようなものか……?」
妙な言葉を覚えているな。
「奴隷というわけではないが、借り物の石で召還されているのだから、自由というわけにはいかんな。
カンテラやパイロペ達は、彼女らの力で討伐をしているし、アルゴンは俺の為に働いていたからな。まあ、貸しがあるという感覚はないかな」
「すると、我らも何か働く場面がなければ、借りを返しようもない」
「うーむ。その辺りは、ミューさんのところで相談してくれ。
もともと、お前さんたちの任務は、こちらで見聞きしたものを石の精霊の世界に持ち帰ることだったんじゃないか? そのために、借り物の石で召還されたわけだし」
「それもそうだな。ツヴァイ殿、精霊の里へ、連れて行ってくれ」
アクシアは相変わらずのマイペースだ。
「というわけだ、みんな、一緒に精霊の里に向かうことにしたいが、異論はあるか?」
なし。
というわけで、精霊の里に移動することとなった。
銀尖、銀晶、頼むぞ。




