札と石のこと。
社会ネタ、物語に書きにくいし読みにくいので、誰得?なのですが、書いておかないと後で積み上げるための土台がない気がするので挑戦してます。
次くらいから、また冒険らしい話になります。
討伐するする詐欺!?
エプシロンのところで、意外なことに10の札を手に入れた。
あと、8と9の札も。
エプシロン、馬鹿にして済まなかった。
ま、術者としては、まだエプシロンの方が上かも知れないが、研究者としての発想や視野ではミューの方が上ということだろう。術者としても師を超えるのはそう遠くなさそうだ。
エプシロンよ、小銭を稼いで喜んでいる場合ではないぞ。
一応礼を言って、工房を出る。
続いて、武具工房に向かう。
今日の同行者はアラゴンだけ。
小うるさい連中がいないので、ゆっくりと精霊石を見られるチャンスだと気づいたのだ。
小さく区分された引き出しごとテーブルの上に出してもらい、眺めてみる。レアリティの低いものばかりだが、百以上並ぶと中々の迫力だ。
俺の膝の上で、アラゴンも興味深そうにのぞき込んでいる。
お目当ての第一は、と。
ひょいひょいといくつか同じ種類のものを見繕っていく。
俺には鑑定のスキルはないが、魔力探知で波長の違いを色で見ることが出来る。
石の色合いと帯びた魔力の色合いを組み合わせれば、よく似た石でも見分けることができるのだ。
もっとも、隣のアラゴンに聞いた方が早いんだけどな。
「これ、みんな霰石で合ってるか? まだ他にも残ってたら、教えてくれ」
「この石と、この石もそうですニャ」
「おお、アラゴンのときは、薄い茶色だったけど、白や透明もあるんだな。
ちなみに、この石達を取り込むのに抵抗感はあるか?」
「うーん、同じ精霊の成れの果てと言えばそうなんですけどニャ、地面の中はともかく、武器や道具に使われるのなら、私と一緒の方が、少しはマシですかニャ」
「要は、気の持ちようか」
アラゴンは案外サバサバしているみたいだ。
また今度、別のやつにも聞いてみよう。
まずは霰石を五つ買い取る。
まとめての値引きがあって一万二千G。百二十万円相当だ。
俺も、富豪というには程遠いが、これは、アラゴンが果たすかもしれない役割への投資でもある。
アラゴンが、仕事ができそうだってだけではない。
石の精霊達が、「自分で考えて決断をしている」とはっきり示せる人材を、少しでも多く欲しいのだ。
ドライも言っていた。
知識やスキルと、考える力は違うと。
札や魔石で強化するだけでは、巨大な暴力を秘めた子どもの群れが出来上がるだけだ。
そんな勢力が人間の街の近くに陣取るなんて、危なっかしくて仕方がない。
というわけで、これからの強化は、戦闘力優先にはしない。
アラゴンが、買い取った石を一つずつ、順に胸元に抱くようにして受け入れていく。
総合的な魔力も増えているが、確かに落ち着いた雰囲気が増している。
宝石公女はステータスさえ見えないからな。
何がどう変わったかは分からんが、これならば今までよりもずっと高い地位にも見合うだろう。
ハートの10の札を差し出す。
アラゴンは、背中を見せる。
背中に重ねると、体の中のカードの輪郭が光に浮き出し、札が光の中に崩れて消えていく。
シルエットは、わずかに衣服がゆったりとした重なりを増した程度の変化だが、悪戯っぽい光を残しつつ、その目はずっと遠いところまで見ているようだった。
精霊導師、アラゴン、星四つ。
「アラゴン、お前に期待することは何だと思う」
「イナグマと一緒に、精霊の里を作り上げることニャ」
「うむ。それから?」
「ここでの、人間以外の暮らし方のヒントを皆と考えるニャ」
「あとは?」
「一緒に暮らせない奴は、おさらばするニャ」
オーケイ。
「お前には、バランス感覚と柔軟性がある。
石の精霊も俺の眷属も、まじめで一生懸命な奴が多い。こうと決めたら一直線だ。
だが、一直線では片付かん問題も多い。何でもかんでも抱え込めばいいってもんでもない。
お前は、周りに左右されにくい。俺への気遣いも無用だ。
ダメなもんはダメ、無理なもんは無理。
良いと思うようにしろ。そのあり方が、里の為になる。
お前が、裁定者だ」
次は、と。
クラブの5の札に、蛍石。
フィオーラが召還される。
「久しぶりだな、フィオーラ。元気だったか」
「はい。再びお招きいただき、ありがとうございます」
お招き、ね。召還もまあそうかな。
「パイロアの様子はどうだ? 旅立つ用意は出来ているか?」
「パイロア様は、石の精霊の会合の準備に飛び回っておられます。
まだ、旅立つわけにはまいりません」
「ほう、石の精霊の会合だと。それは、以前からあるものなのか?」
「会合は、代表格の石の精霊数族の代表者のみが集まるものならありました。今回は、可能な限り大勢を集めるおつもりのようです」
「大勢というのは、どのくらいなのだ」
「同じ精霊脈を源とするもののうち、精霊の力を宿している者およそ千体に声を掛けているとか」
「驚いたな。石の精霊は、互いにほとんど干渉しないと聞いていたが」
「パイロペ様のお話を聞いて、パイロア様は何か決心をなされたのです」
「分かった。もうしばらく、そちらは任せよう。そして、助けがいるな?」
「パイロア様は、精一杯努力なさっていますが……」
「よし、カイア。長殿のために、しばしの里帰りはどうだ。お前は、長を探してこちらに来ていたのだろう?」
「後始末をする人間がいなくても、大丈夫か?」
「なに、すぐに呼び戻すから問題ない……って心配するところ、そこか? 任務は分かるか」
「長の支援と、こちらの状況を石の世界に伝えること。合わせて、パイロア様を、連れて戻る」
「もう一つ、大事な案件だ。もし会合が成立したら、そこで代表選の投票を行え。カイア宰相、投票方法の設計はよろしく。立候補演説はできんが、候補者はパイロアにイナグマ、パイロペ、お前くらいか」
「何を!?」
「パイロアは、石の精霊の会合を開こうとしてる。彼女なりに、石の精霊の総意ってやつを探してるんだろう。石の精霊は、いままでお互いにお互いのことなんて興味のないまま好き勝手過ごしてきた。
自分たちの未来なんて何にも考えなくても、あるがままに過ごしていれば問題なかったんだからな。
だが、今はそうではなくなった。石の精霊は、このままでは滅びる。それが嫌なら、こちらの世界に働きかけるしかない。
パイロペは、一人でデカい力を抱えて突撃していったわけだが、そんなやり方じゃ限界がある。誰なら石の精霊の総意を背負いつつ、こちらの世界と向き合えるのか。それを、自分たちで決められるということを示してみせろ。
カイア、お前との契約も、ここでいったん途切れる。旅立つことを選んだ石にならなければ、お前ももう俺の下に来ることはないだろう。だから、これは、命令じゃない。
お前たちは、お前たち自身でお前たちのことを決められる。それを示すんだ。俺は、それを待っている」
カイアのカードを取り出す。
「フィオーラ、来たばかりで済まんが、カイアを、案内してやってくれるか」
「仰せのままに」
「カイア、行けるか」
「必ず戻る」
「行け、二人とも。精霊脈の流れを共有する者たちの意志を、束ねてみせろ」
宝石公女のメニュー。
「廃棄」、「フィオーラ」、そして「カイア」。
実行した。
鉱石のイメージが分かるサイトを紹介しておきます。
同じ鉱石でも、わずかな環境の違いで色や形が変わるのが面白いな、と思うのは少数のマニアだけでしょうか……
霰石
https://www.mindat.org/gm/307?page=21
蛍石
https://www.mindat.org/gm/1576?page=6
藍晶石
https://www.mindat.org/gm/2303?page=18




