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黒い魔剣とオーガのこと。

この剣の力も、見せてもらおうじゃないか。


大木から下向きに黒長剣を構え、飛び降りる切っ先は、オーガの喉元へ。


オーガの血を吸った黒い長剣は、刀身に絡みつく赤い脈動を浮かび上がらせる。


「おお、強者って認められたわけだ、このオーガは」


魔剣、シュトルム・ブリンゲン某についてポップアップウインドウが示した記述は、過去の逸話が長々と記され、「今は力を失った魔剣。強者の血を吸えば一時目覚める」云々。


ゲーム的に解釈すれば、敵との逆LV差依存の特性攻撃だ。


通常時は変哲の無い古びた黒剣だが、自分より大きくレベルが高い敵の血を吸えば、その威力を大きく向上させる。


なるほど、LVが極端に上がりにくい高位アンデッド(生命なき者の王達)のために作られた魔剣だ。


赤い脈動は赤黒く鈍くなり、オーガは喉元からポリゴンをまき散らして消滅。


遮動幕は制限時間いっぱい、第二ラウンドの立ち合い開始だ。


グォアッフ!

オーガが充血した目で掴みかかってくる。

威嚇は通らず、牽制も狂化と打ち消しあってるな。

焦らず、素早く後退する。


オーガの上体が浮き上がったタイミングで、伏せてあった十数匹のオオカミ達が左右の背後から一斉に躍りかかり、足元を攻め立てる。


アキレス腱を狙えないかと思ったが、蹴散らされ、踏みつぶされて次々とポリゴン化していく。


堅いな。

それに、さっきやられたオーガを見ていたな?

両腕は喉元を意識して、レスラーみたいなファイティングスタイルだ。


なら、こうか。

懐に飛び込み、黒剣を下から跳ね上げるのに合わせ、自らも跳躍する!

と見せかけての膝横への撫で斬り。


撫で斬りでは大したダメージはならないが、この黒剣には、防御力を無視できる、スタミナや精神力減少の追加効果が発動しているようだ。


恐怖とダメージが重なり、オーガの狂化が解ける。

目が、状況を把握しようと左右に激しく動いている。


ここからもう一度狂化を発動させるには、火事場や献身、忠義あたりのスキルが要りそうだが… このオーガはどうだ?


牽制が通じている気配があり、弱点を守るのに必死になっている。

攻撃の手が止まれば、もうこっちのものだ…


グォウァっ!

オーガは叫び捨てると、茂みの方へ逃げ出す。

脇からオオカミが数頭、激しく吠えながら飛び出す。

オーガは、最後の気力を振り絞り、横撃を躱して走る。


が、その先が最期の罠だ。

幻影幕を突き抜け、オーガは崖下へ墜ちていった。

後をオオカミにまかせ、他の2体がいた場所に戻る。


麻痺させた1体も、喉元を貫いて光散させる。


ふぅ。初めての、まともな戦闘だったな。

麻痺眼が思ったより働いてくれて、かなり手間が省けた。


黒長剣も、威力無い状態で格上の血を吸わせるっていう発動条件がキツいけど、ハマれば火力ソースだな。

相手のメンタルへの打撃も無視できないし。

今回は相手のスキルの解除って二次効果も出てたな。


対格上専用兵器って意味では、あれだ、幼少裏勇者の家出のお供。俺も、自分のレベルが上がっちゃったら誰かお気に入りの幼子に預けるとしよう。


あと、麻痺に抵抗して向かってきたリーダー格、あいつがもう少し単純に突っ込んで来ていたら、オオカミの被害は相当増えていただろう。


結果的には俺は一撃も受けていないし、そもそも不死者なんだが、俺が相手にしてたのは、オーガじゃなくてこの世界のシステムだ。


何が通り、何が通らないか。

世界を移る度に、その読みが試される。

この世界での初勝利に、乾杯したい気分だ。


足元で何か光っている。

確認すると、二つの石が落ちていた。

なるほど、討伐対象でドロップするってことか。


お、LVも上がった。3か。

トランプの札も一枚。


崖下に回ったオオカミの一体が、もう一つ石を咥えて走ってきた。

スキルをいくつも持ってただけあって、コイツのはちょっとデカい。

お楽しみの瞬間だ。


「オウガー・カリージャ」、リーダー格のオーガからドロップしたのは、砂色の母岩の中に、銀河のガス雲のような遊色蛋白石を取り込んだ石だった。カンテラオパール、と表示されている。


残る二人の戦士クラス、「オウガー・ゲリエー」からは、霰石(アラゴナイト)灰重石(シーライト)という石がドロップしている。

前者はくすんだような半透明の薄褐色、後者は透明感のある薄茶色だがどちらもかなり小さい。


やはり、討伐対象と言えども、強くなければドロップ品は渋い。

とりあえず、弱い方の札に地味な石を組み合わせてみることにした。

どちらも最低レベルだし、何があっても悔しくないだろう。


ハートの2の札に、霰石を載せてみる。

薄茶色の破片が渦を巻き、光がトランプの札を包み込む。

半透明のミルクティーのような色合いのベースに、銅の縁取り。

星一つ、アラゴン。


ですよねー…と言いかけてカードの上に視線が止まる。

エッチング風の横顔は素朴だが柔和な表情。そして、猫耳。


急いでウインドウを開く。

肌は前世で言う東洋系の肌色くらい、丸っこい猫目、栗色の髪は癖があり、三角形の耳がそこに。


そう来たか。

クラスは精霊士的なもの。

スキルとしては、「水源探査」「温度緩和」の二つ。


これは…大地の声を聞かねばなるまい。

「水源探査」を発動する。


「もう少し右…もう少し右に向くんだニャ。

その方角ニャ。その先、そんなに遠くないところに水場の気配を感じるニャ」


ほー。ほー。ベタベタですな。さすがハート。掴みに来てますな。


まあ、俺は水場とか要らないんだけどな。

コウモリ飛ばせば割とすぐ見に行ってもらえるしな。

でも、教えてください、アラゴニャン。


そして、俺は気が付いた。

カードを高らかに掲げたまま。


この世界に来て、俺、まだ誰とも喋ってない……


早いとこ、町に向かうか。


霰石アラゴナイト

https://www.mindat.org/gm/307


灰重石シーライト

https://www.mindat.org/gm/3560


蛋白石オパール

https://www.mindat.org/gm/3004?page=24

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