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スタルトの猫獣人のこと。

ツヴァイが眷属の里から戻ると、まだ日も高く、午後も早い時間帯であった。

緋夜の柩が魔法陣の中に沈んでいく。


「無事、行を修められたようですな、皇子殿よ」

ストラスがバサバサと木の枝から降りてきて頭を垂れる。


「うむ。銀尖達とも、もっと早くに話をするべきであった」

「私の不徳の至りにございます。我ら眷属の連携を高めねばと、思ってはいたのですが」


「いや、謝るようなことではない。俺がいつも拙速に動き出してしまう故のことだ」

「いまだ拙速を聞くも遅巧を聞かざる也と申します。いずれはそれもまた長所と成り得ましょう」


相変わらず甘やかしてくれるぜ、フクロウ爺。


さて、剣技も身に付けたことだ、当初の予定通り、俺のLV上げのために討伐依頼でも探してみるとしよう。

スタルトの町に向かうことにし、ストラスは召還を解除する。


そういえば、パイロペもイナグマも見当たらない。

イナグマに付けておいたコウモリを探ると、スタルト方面に居るようだ。ちょうどいい。

街道に向かう。


ステータスもかなり上昇、血の本体も増えたので、人型のまま翼を広げられるようになった。

翼だけではまだ高速とは言えないが、翼での加速と周囲の木々を使った立体機動を組み合わせると、少年漫画的なスピードだ。

うっひょー、ニンジャー!!


走りながら体術や剣技を発動させて、重力の感触に馴染んでいく。

眷属の里では低重力とスローモーションの世界だったので、こっちではワイヤーアクションや早回しのような違和感だが、それもむしろ笑えてくるくらいの軽快さだ。


これは、イケる!

スタイリッシュアクション編、始まる!


結構なテンションのまま、スタルトまで走り抜けたツヴァイであった。




スタルトの近くまでやって来ると、門のそばに猫耳としっぽのある獣人が何人か、たむろしている。体形は人間っぽいが、顔つきは猫っぽく、体が毛皮で覆われているタイプの獣人だ。


男も女もいる。木の周りで寝転がったり、太い枝の上で座ったりしている。

アラゴンでイラストとしては見たことがあったが、実物の獣人を見るのは初めてだ。


うおお、リアル猫人いてるやんけー!

俺は、猫獣人の生声を聞いてみたいという誘惑と、不自然にならぬようそのまま通りすぎて町に入るというまともな判断との間で、葛藤を生じている。


しかし、さすが獣人、気配に敏感だ。

俺が視線を反らしながらも気配を探っていることに気付いたのか、こちらを睨んでくる。

あるいは、俺が人間でないことに気付いたのか?


目を合わせないようにしながら、門にゆっくり近づいていく。

野生の動物は、目を合わせると敵対視を意味することがある、らしいからな。


猫獣人同士が声を交わしているのが聞こえてくる。

俺の聴力は、常人の数十倍なのだ。


「何でこいつ、あたしらのこと意識してんの」

「目、そらしてるところがまたキモいわー。どこ見てんのって」

「あー、やだやだ。人間が耳とか肉球とか触ろうとしてくんの、マジでうざいわー も、想像するだけで毛が逆立っちゃう」


普通の人語だったよ? しかもギャルみたいな?

はっと気付く。

アラゴン、お前は…… ドライによって具現化された、この世界にも存在しないはずの猫語属性だったのか……


大丈夫。俺は、作られし者だろうが天然だろうが差別はしない。

むしろ、早く肉体を与えたくなってきた。


それはそれとして、もはや未練はない。さっさと門に入っていく。

門番の男に、冒険者の証を見せながら、そっと聞いてみる。


「なんで猫獣人、あんなところにいるんですか?」

「町中だと、日向ぼっこにいい場所があんまり無いんだとよ」


「この辺って、そんな普通に猫獣人いたんですか」

「いいや、ここ数日の話だよ、こんなことになってんのは」

「こんなこと?」


町の中に入ってみて、驚いた。

あっちにも、こっちにも猫獣人がいる。

しかし、どいつもこいつも……人語喋ってんじゃねえよ、耳生えがよぉ!

いかん、ついつい属性ロールの押し付けをしてしまうな。


ここの猫獣人には用はない。

そうだ、イナグマはどこだ? おや、冒険者ギルドか?

あいつも確か、冒険者登録をしていたな。金でも稼いでいるのか。

冒険者ギルドに向かう。


扉の中に入ると、ここにも猫獣人が何人もいた。いや、奥の方にも大勢いるな。

ギルドのホールが猫獣人屋敷と化している。


「陽光殿、よくぞ戻られた」

おや、ギルマスまでカウンターの外にいる。


「ツヴァイ、遅かったではないか。ろくに説明もせんと、妾を何日も放置してからに」

「皆、待っていた」

パイロペとイナグマもいる。


「ギルマス、ここは猫獣人の難民キャンプなのか?」

「知っていたのか? 陽光殿は。私の出した使いの者は、サルサリアでは会えなかったと言っていたが」


「何のことだ」

「今言ったではないか。猫獣人たちは、巨獣の災厄から避難してきているのだ」


何のことだ。


改めて話を聞く。

奥の打ち合わせ部屋には、アルファイン達も詰めていた。

「久しぶりだな、アルファイン。ギャンマに、ヴィタもか。元気そうだと言いたいが、ずいぶん疲れた顔をしているな」


「おお、陽光殿か。お主が来てくれれば百人力だ。打開策を期待するぞ」

アルファインの目は赤く、睡眠不足がうかがわれた。


ギャンマも、目の下にクマが出来ている。

「何しろ、情報が全く集まらんのだ。あれだけの巨体なのに、どこに隠れているのか」

「巨獣の災厄か」

「そうだ。相当な大きさと力を持つ魔獣だろう」


ふうむ。ストラスとこの辺りを飛び回った時にも、そんな大きな魔力を持った存在は探知できなかったがな。


「そんな奴が、この辺りにいるのか?」

「少なくとも、この周辺に生きている者で、そんな魔獣のことを聞いたことのある奴はいなかった」

「なら、いきなりやってきて、もう遠くへ去ってしまったということか」


今度はヴィタが答える。

「ドラゴンがねぐらを移すとき、旅の途中で気まぐれにブレスを吐くことがあるそうです。地形が変わるほどの被害が出るらしいのですが、ただ、今回の件はもっと意図的なものと考えられます」


「どんな意図だ」

「猫獣人に対する、恐ろしいほどの悪意です。一族の皆殺しや追放、あるいは生贄を要求しているのかもしれません」


「尋常ではない話だな。それに、ひどく曖昧だ。なぜそうと分かる」

「アルファイン、ツヴァイにも現地を見てもらった方が早いですよね」

「そうだな。陽光殿、ギルド依頼、巨獣の討伐を我々と一緒に受けてくれないか」


「討伐依頼か。望むところだ」




ブックマーク、ありがとうございます。

続きが読みたくなるような文章に憧れますね。

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