表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/100

未知のスキルのこと。

獣の形をしたコースターに乗せられた気分だったが、人間ではないので、すぐに回復する。

しかし、背中で騒いでいる最中に、銀尖に言われてしまった。


「皇子殿よ、戦いの修練を積んでおらぬが、そのままで良いのか」


そうなのだ。

ストラスがこの世界についてのチュートリアル担当だとすると、銀尖、銀晶は戦闘・戦術のチュートリアル担当である。俺は、これまでの戦闘を、他のゲーム世界での経験だけでやりくりしてきてしまっている。


宝石公女の存在は眷属のチュートリアルには組み込まれていないはずなので、宝石公女を使って戦っている分には不要かもしれない。しかし、そういう思い込みのせいで宝石公女の肉体の創造のメニューも見落としていたのである。反省が足りないということだ。


折しも、眷属の里のこちら側の土地を守るには、精霊術に頼らない戦闘力が必要だという課題が出てきたところだ。


宝石公女は、召還しているだけで精霊の力を使う。

ゲーム的に言えば俺のMPを消費しているだけなのだが、俺のMPは大地の精霊から補給されてしまう。


宝石公女が精霊術を使った場合も、俺から見ればクーリングタイムとして捉えられるが、同じように周囲から精霊の力を吸収してMP回復に充てているので、結局土地の精霊の力を奪っていることになる。


俺の通常戦闘能力が向上して術に頼らない攻撃力が得られれば、MPの節約につながり、土地の精霊の力の温存につながると、こういうわけだな。


銀尖、脳筋担当扱いしていたわけではないが、まともに話を聞かずにいてすまんな…


よし、ちょうどいい機会だ。

この引っ越し作業の最中に、いろいろ戦闘戦術についてレクチャーを受けておくことにしよう。


単なる作業と思って段取りしていたが、思わぬ展開に、おら、ワクワクしてきたぞ。

って、むしろ忘れていた宿題に手を付けているだけかもしれないが。


それはそれと、引っ越しの段取りが先だな、うん。

碇石にたどり着く前に、アラゴンとカイアのカードを取り出し、配置。


「カイア、ここから街道まで、ソリで碇石を運ぼうと思っている」

「道を用意する」

「というわけで、アラゴン、水源を探しておくれ」

「了解だニャ」


カードが柔らかな光を放ち、水盆に浮かべた磁針のようにゆらゆらと向きを変える。

「少し掘れば、この辺りの下には細い水脈がいっぱいあるニャ」

砂地の下に地下水の層があるってことか。


「そのまま水脈の水を利用する。距離があるから、地表面だけ氷の膜で覆う形で行く」

「カイア、よろしく頼む。銀晶、念のため付いておいてくれ。それじゃ、俺たちは碇石のところに向かうぞ」


カイアが、凍橋を発動する。

地面の下から霜柱のように氷の道が浮かび上がり、キシキシと音を立てながら滑らかに繋がっていく。

感覚を掴んだのか、ペースがどんどん上がっていき、あっという間に向こうの丘まで氷の道が延びていった。


ここからは、移動しながらの作業になりそうだ。

カイアの鼻唄のような詠唱に聞き耳を立てていたら、ひゅっと離れていってしまった。

カイアのカードと銀晶をその場に残し、再び銀尖に乗って走り出す。


碇石の操作魔法陣を起動させ、移転のための手続きを行う。

いったん、眷属の里との接続が不可能になるらしい。

昼間なので緋夜は向こうで留守番、ストラスと、フクロウ数羽、あとオオカミを数頭召還してから里を閉鎖、圧縮固定。


これで碇石の中に眷属の里が収められたことになるらしい。

次元が違うとはいえ、容積や質量は増えないんだな。


地面への固定を解除、地中から抜き出す操作を実行。

砂の中から、弓型の黒い石の塊がせり上がってきた。

この土地との切り離しを実行。

魔法陣が点滅し、ポリゴン化して消滅する。


俺の筋力では300キロは持ち上がらないし、ロープとか梃子とか組み合わせてソリに積み込むか。

ロープも梃子も俺の殻を使って作ればいいと思っていたので、道具は特に買ってきていない。


腕を組んで手順を考えていたら、銀尖が話しかけてくる。

「憑依を行うか?」

「なに?」

「眷属憑依の術を使用するか?力が要るだろう」

ちょっと何を言っているか分からないな。そんなスキルはリストにないぞ。


「俺はまだ習得していないが、今から習うということか?」

「眷属憑依は眷属側で発動させる術だ。皇子は命ずるだけでよい」

「そうか。試してみよう」


銀尖が俺の脇に伏せると、銀色の光に包まれる。

光が帯のように俺の側に巻き付いてくる。

あ、血の本体が増えるような感じだ。ちょっと色がついているような感覚。一時的に、分け与えていた力を俺に戻すという術か。

筋力、感覚、殻の強度などが劇的に上昇する。


そのままの人型の殻では、密度が高すぎて動かしにくいな。

少しサイズを上げていく。もう少し、まだだな、こんなもんか。

結構デカい。

190センチくらいか?かなりマッチョな武闘家スタイルだ。

あ、メニューにテンプレのスタイルがあるな。適用してみると、違和感なく四肢が動かせる。

顔つきも少し変わったようだ。


ステータスを見ると、相当強化されている。

人狼、LV36か。

そこらに落ちている石を拾って指先に力を入れてみる。

おお、細かく砕けた。


スキル構成で言うと、硬化や連撃、治身のようなモンク系に、獣化、通常物理攻撃耐性なども付いている。吸血鬼としての不死も残っているが、銀や魔法武器でなければ打撃自体をほぼ無効化できるようだ。


…めっちゃ強いんですけど!

取説読んでゲームやれって話なんですけど!

ストラスにしか話聞かなかった俺が悪いんですけど!


「眷属憑依は、ストラスや緋夜にも出来るのか?」

「出来なくはないが、我らほど頻繁には使われなかった。精霊術が強化されるようだが、術者の場合は二手に分かれていた方が戦術の幅が広がるのだろう」


「銀晶も一緒に憑依できるのか?」

「出来なくはない。しかし、重ねて憑依させると、単純な力は増すが、反応や速度は失われる。使いどころが難しくなるであろう」


「他のメンバーとの重複憑依は?」

「それも出来なくはないが、実戦で行ったことはほとんどない。ストラスや緋夜の術は多彩だ。眷属憑依で人狼となるだけでも行動速度は相当上がる。その最中に皇子が一人で差配して複数の術の発動を行うには、相当の修練が必要だ」


憑依がらみだけでも、めっちゃ検証要素ありそうやん。

ていうか全く使いこなせる気がしないし。


人狼化はともかく、ストラスや緋夜は基本的にお任せだな。

俺には他人の戦闘管制能力もないのに、自分に取りまとめられたって、なおさら管理しきれん。


しかし、眷属憑依も、精霊の力をなかなかの勢いで費やしていくようだ。


「銀尖が単体で活動するのと、俺に憑依しているのではどちらが精霊の力を使うのだ?」

「皇子の思考に常時追従するために費やされる分、憑依の方が大きい。常に緊張して待機していることになる」

「細かく解除するとどうだ?」

「憑依したり解除するのにもそれなりに精霊の力を費やしている」


やはり、用途を限って使用すべきということか。この姿で考え事をしていても無駄遣いだな。

積み込みだけ先にしてしまおう。

300キロくらいの碇石も、片手で持ちあがる。丁寧に扱うために、もう片手も添える。


クッション代わりに俺の殻の一部をソリに詰め込み、合わせてソリの構造も強化する。

クッション部分は弾性を重視して発泡構造に、本体はハニカム構造を意識して軽量ながら強度を備えた補強材を追加、ソリの滑走面は硬質なウロコ状の殻を並べて抵抗を減らしてみた。


碇石の収容が終わったところで、憑依を解除。

おお、力がぐっと抜けてしまうような感触。

いつもの人型に戻すが、重力を大きく感じるな。

憑依解除直後は、魔力の消費や違和感でかなり能力が低下すると思っておいた方が良さそうだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ