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町の熊さんのこと。

評価、ブックマーク、どうもありがとうございます。

なんとか書き上げていきたいと思ってます。


お引越し支度の、まったり回です。

朝を待って、スタルトの町へ。

イナグマも合流して、二人だ。

いや、俺の肩にパイロペも乗っかっているが。


門番に、自分は「陽光」で、連れているのは知性を持つ熊と実体化した精霊、どちらも人に危害を加えないと説明する。

正確には、イナグマはカンテラの配下だし、パイロペはすでに俺との契約が完了しているので、俺に従属しているわけではないのだが。

今後、こういう連中が周辺をウロウロするのだから、正面切って紹介しておこう。


門番は、陽光殿のお話は伺っております。転生者の連れる者について、我々は制限することはありませんが、損害を与えた場合の責任は心にお留め置きください、といった感じだった。

太守や都市長がああだったんだ、小さな町風情が逆らったってどうもこうもないだろう。


町で普通に過ごせることが分かったついでに、それはどんな魔獣や形でもか?と聞いてみる。

さすがに、大きな獣や竜、悪魔のようなものは遠慮してもらっていたらしい。過去の転生者の側も、その程度の配慮はしていたということか。

まあな、ゲームの中でも常識が無いプレイヤーと呼ばれたくはないからな。


イナグマが、話しかけてくる。

「これが、人の町か」

「これでも少ない方だな」

「大した数だ。野の獣では考えられん」

何か言いたいことがありそうだ。促してみる。


「吸血鬼の皇子よ、俺は仲間の熊を失った」

「そうだな。皆殺しにする必要はなかったかもしれんが、手加減を出来るような状況ではなかった」

「分かっている。身内を守るのが長の務めだ。俺は務めを果たせなかった、それだけだ」

「分かってもらえて有難い」


「この後、俺は再び仲間を集めてもよいか」

「無論だ。むしろ、そうして欲しい」

野の獣の扱いなど、俺には分からんしな。


「食い物や酒につられて仲間になる者もいると思うが、いくらか資金を戴けぬか」

「問題ない。大金ではないが、持って行け」

熊討伐で得た金と魔石がある。1万Gを渡してやる。食料品を買いこむなら十分だろう。


「冒険者を見てみたい」

ん?冒険者か。ギルドに行けばいると思うが…悶着を起こすような雰囲気でもないな。


「そういえば、言葉が話せるようになったのか」

「将軍の配下となったためだろう」

ふーん。考えるな、感じろ。

ギルドに向かう。中に入ると、そこそこ人がいた。


「陽光様、お戻りでしたか。熊討伐、おめでとうございます」

受付のお兄さんが挨拶してくれる。

俺の後ろに付いてきたイナグマを見てちょっと驚いた眼をしているが、取り乱したりしないのは大したものだ。


「コイツはイナグマ。訳あって俺達の配下になった。町にも出入りすることがあると思うが、よろしく頼む」

「イナグマと申す。面倒は起こさぬようにするのでよろしくお頼み申す」


後ろの方から小声が聞こえる。

「いや、あれにちょっかい掛けるのは大馬鹿野郎だろ…」

「あれが熊討伐の対象か?放置で大正解じゃねーか」

イナグマ、威嚇を発動しっぱなしか。こそっと念話で伝えて解除させる。


イナグマは、さらにカウンターの職員に話しかけている。

「冒険者としての登録と、依頼の仕方を教えていただきたい」

「あ、はい」

え?あ、そうなの?


俺は俺で、別の職員に報酬の精算をしてもらう。

石3つ分にその他の熊もいたようで、5万Gほどの報酬になった。

討伐で直接加算された分と合わせて、手元に10万Gほどか。

引っ越しの支度には十二分だ。


そういえば、結果的に一掃してしまったけれど、報酬の支払い資金は良かったのだろうか。

前に、前金で預かっているけれど全額ではないということだったが。

「熊討伐の依頼主の方は、最近いらしたのですか?」

「え?ああ、代理の方が来てらしたみたいですね。最初に大きな一頭が討伐された後に」

そうか、あれが狩れて生き延びられるなら、他にも狩れるだろうと見当を付けられていたか。

結局、何者かはよく分からんな。


イナグマは、まだ職員と話し込んでいる。

一体何を話しているのかと思い聞き耳を立てると、森の中の探索や猟の仕方について尋ねている。

イナグマの方がよほど詳しそうだが、と不思議に思ったが、どうやらこの辺りでの狩猟の技術や認識を確かめているようだ。

礼を言って、引き上げてくる。


「狩猟でもするのか?」

「狩猟も仕事の一つになるだろう。森の中を探索する技術も必要だ」

「イナグマなら十分やれるんじゃないか?」

「それがし一人では、とてもカバーできぬであろう」

「大物でも狩るのか」

「あの辺りには、もう大物はおらぬが、広い範囲で哨戒し、小物を寄せつけぬ仕組みを作らねばならぬ」

「警戒網か?眷属を使うのはどうだ。オオカミでもコウモリでも?」

「毎日のこととて、皇子の手を煩わせる訳にはいかぬ」


ようやく話が見えてきた。

眷属の里を引っ越した後の、その領域の警備の話だった。

デルタ卿にも言われていたが、精霊の力を食ってしまうような魔獣が入り込まないよう、巡回警備のようなことが必要だが、出来れば精霊の力を消費しないような仕組みでそれを実現したい。

人間の冒険者に、それをさせられないかということだ。


精霊術以外の方法で魔獣を狩り、植物を守り、一定の環境を維持する。

なるほど、前世的に言えば自然保護官(パーク・レンジャー)みたいなものか。


ちょっとした戦闘はあるが、荒っぽい性格よりは繊細な気遣いが出来るような連中がいいだろう。

この辺りでは狩猟は盛んじゃないし、森の中に入っていくのは避けられているようだ。

これまでに存在しない種類の仕事だ、見繕って育てるしかない。

大金を払い続けるのも難しいから、ベテランというわけにも行かないだろう。

「イナグマ。試しに雇ってやらせてみるというなら、心当たりがあるぞ。素人だが、伸びしろはありそうな連中が」


とりあえず、この話は引っ越しが無事に終わったあとのことだ。

イナグマの冒険者カードを受け取って、荷車とソリを入手しに行く。


ヴァンパイアはどうしても馬を怯えさせてしまうらしい。

馬を扱うのはあきらめ、取り合えず荷車はイナグマに引いてもらう。

四つ足で走れば結構な速度が出るのだが、服も着せているし、知性があるということが伝わりやすいので二足歩行のままだ。


眼帯をして服を着た熊が荷車を引いて歩いていると、近くから子供が集まってきて付いてきた。調子に乗ったパイロペが、イナグマの頭の上で歌ったり踊ったりして見せていた。

実体化した精霊だ、と説明してみたが、子供から見れば踊る人形か。

陽気なパレードのようで楽しかったが、このまま子どもの群れを連れ去るわけには行かないので、広場で菓子を買ってやって解散させた。また来るからな、と言ってどうにか収めた感じだ。


この辺りは冬でもそこまで雪や氷が厚く積もることはないのだが、一応荷運び用のソリもあった。まれではあるが大雪もあるので、緊急時用といった用途のようだ。載せる荷物は大した大きさではないので、十分だ。一回限りのことなので、強度不足は俺の殻で補ってしまうつもりだ。

吸血鬼の馬車とかな、中に乗り込んだら影に食われそうだけど。


町を出て、街道まで出たら荷車はオオカミに引いてもらう。空荷だし、銀尖たちは昼間は目立ちすぎるからな。

イナグマは、先に候補地の方へ向かってもらう。連絡役にコウモリを貼り付けておく。

それじゃ、また後でな、と。


荷車は、街道の最寄の地点で道端に隠蔽。

もう人の気配もないので、銀尖に出てきてもらって、その背中にソリを括り付ける。

俺とパイロペも一緒に乗せてもらって、草原の丘を走り抜ける。

草のにおい、風の音。

空を飛ぶのも便利だが、たまに地面を行くのもいいな。


最初はそんな風に思っていたが、銀尖の速度はどんどん上がっていく。

ちょ、ちょっと、ちょっと飛ばしすぎじゃないですか銀尖さーん!


ジェットコースターは、危険じゃないと分かっていても絶叫することがある。



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