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石の精霊の国のこと。

精霊井に関し石の精霊の権利を認めさせるため、石の精霊の自立を図る。


宝石公女は俺との契約に縛られているが、そこから解放するには、彼女らに肉体を与える必要がある。


でもって、俺には彼女らの肉体を作る力があるらしい。


内と外と双方の動機を得て、ついに本格的に計画に取り組む時が来たということだ。


デルタ卿の屋敷を辞したあと、ギルドの金庫から黒長剣を回収し、俺はサルサリアを飛び立った。

諸々の整理を含め、スタルトに戻るためだ。


しかし、デルタ卿のところで話し込んでしまったせいで、すっかり夜更けになってしまったな。


門から町に入ることは出来ないので、少し手前、オーガが巣食っていた森の辺りに降り立つ。


生命探知を発動させると、中小の反応があちこちに感じられる。

オーガがいなくなって、縄張りが消滅したところに入り込んだのだろう。

街道の警備が行われているとはいえ、森の中まで掃討するような兵力はあるまい。

朝までの暇つぶしがてら、小銭稼ぎでもしておこう。


彼女らとの打ち合わせも、済ませてしまうか。


ラズ、アウィネアとカイアを配置、自由行動とする。

カンテラも配置、防衛的待機。

パイロペを配置、これは行動禁止して待機だ。


「さて、我が盟約者たる宝石公女の幹部諸君、会議の時間だ」

発言はないが、訝しげに言葉を待っている気配を感じる。


「宣言しよう。ここに、盟約者たるツヴァイが、石の精霊の建国に全力を尽くすと」

「妾は、先日女王を退位してきたばかりじゃがのう」

いきなりやる気の無さそうな声。


脇ではカイアが、近寄ってきた羽虫のような魔獣を、遠いうちから叩き落とす。

ラズは前回の遺跡で殴り足りなかったようだが、虫を直接殴るのは嬉しくないらしい。


「まずはそこだ。カイア、お前はこの鳥頭のことを、石の長と呼んでいたな」

「はい、石の精霊の長でありましたから」

鳥頭は否定しないらしい。


「だが、石の精霊は人間の言うような国を作っているわけではないのだろう?それに、こいつが女王と言って、何か統治を行っていたとは思えないが」


ラズがちょっとした獣を狩る。飛身。忍者のような高速機動で、まるで瞬間移動のようだ

ポリゴン化して消えているだけだが、システム上は血の匂いでも広がっているのか、徐々にモンスターが寄ってくる頻度とサイズが上がってくる。


カイアが語る。

「石の精霊が生まれ育つのに必要なのは精霊脈からの元素。石ごとに必要な元素が異なるため、それぞれ元素が含まれる精霊脈に寄り添って暮らすしかない。

こちらの世界で言えば、植物のようなもの。気候の合わない場所では生きられないし、余計な元素を集めて他の精霊と交易するようなこともできない。

人間がするような、お互い助け合ったり、支配したりという仕組みは無い」


「つまり、王権など存在しない。すると、パイロペ、お前の言う女王とは何だ」


「妾と契約したあやつが、赤の女王(クイーンオブハート)という称号を付けたのじゃ」

「それだけか?それだけなんだな。まあいい。良くないんだが、いい。お前に期待はしていないからな」


「なぜおぬしはそれ程に妾を悪し様に扱おうとするのであろうかの。素直に歓迎するなり好意を示すなりしても罰は当たらんと思うぞ」


突っ込んではいけないと思うのだが、つい聞いてしまう。なぜ歓迎されると思うのか。


「くくく、妾にとて実戦経験はそれなりにあるのじゃ。

まず、おぬしの手持ちの戦力。範囲攻撃、遠距離攻撃に少々不足があるであろ。それに、火属性の攻撃も無いはずじゃ。その点、妾には強力な火炎や爆炎の術がある。

カイアも腕の良い術師ではあるが、早うに妾に魔石を捧げよ。妾を強化し、さらに術の行使に魔石を供するなれば、比較にならぬ破壊をその目に焼き付けてくれるであろ」


こいつ、俺と緋夜をハエのように叩き潰したことも覚えてないな。

スルーして、再びカイアに問う。

「では、カイア、何故パイロペは、長になったのだ」


「ガーネットは、月の一の座の石。パイロペは、その赤の一族にあって、一位の精霊脈から生まれ、十の年を数えし者。だから、長」

「生まれと年齢によって、長となったということか」

「そう。太陽と大地の位置が変われば、違う一族から長が立つ」


ガーネットは、確かに一月の誕生石だ。

しかし、ここで言う誕生石なんてものは、二の月のチョコ祭と同じく、宝飾品業界が仕掛けたキャンペーンがたまたま定着したに過ぎない。

考えるな、深い意味はなかろう、所詮ゲームの設定だしな。


「では、長はどういう権力があるんだ。宝石公女の契約は、パイロペがしたんだろう。石の精霊の代表権はあると言うことか」


「パイロペは、契約の約款、条件に合意しただけ。契約をするかどうかは、それぞれの石のこと。他の石を縛ることは出来ない」


黒い魔虫が飛んできている。

珍しく、アウィネアが攻撃役か。

何か恨みでもあるのか?

メイスで激しく殴り続けているようだな。


「すると、長は渉外役だが、石の精霊の統率役ではないということか」

「そう思う」


「パイロペがその役から降りたあとはどうしてる?」

「妹のパイロアが長となった。同じ時期に生まれた石、人間で言えば双子か」


「よし。パイロアを長として、こちらの世界に国を作る。お前たちは、今日からパイロアを支える武将だ。俺は、今はまだお前たち個人の盟約者だが、いずれ石の精霊の国の盟約者となっていく。そのために、お前たちに肉体を与える」


「何を言っている?」

カイアも動揺することがあるんだな。


「そうだな、カイアのポジションは宰相だな。カンテラが将軍、アウィネアが騎士団長、ラズが兵団長で、最初は純軍事国家だ。後は支配領域が出来てからおいおい考えたら良いだろう」


「そういうことではない」

アウィネアも何か不満か?


「良いか、お前たちは、宝石公女として契約し、この地に来た。公女とは、すなわち高貴なる身分の持ち主。高貴なる身分には、それに見合う責務が伴う。それを、ノブレス・オブリージュという。お前たちには、同胞たる石の精霊達の将来に対して、責任があるのだ」


混乱しているのか、返事も反論もない。こういう時、カードは表情がなくていかんね。


「で、パイロペ」

「妾にはどのような地位をもって迎えようというのじゃ?」


「地位か?一兵卒だ。というか戦場には出せんな。コントロール不能な兵器などナンセンス過ぎる。

お前の役目は、肉体を創る手伝いだ」


「妾に肉体を与えてどうしろというのであろ」

「お前に肉体を与えるのは最後だ。与えなくても困らんが」


「妾を鳥籠に閉じ込めたまま、共に久遠の時を過ごそうというのか。それがおぬしの欲するところならば仕方あるまい」

なんで嬉しそうなんだよ。


「その鳥籠を持ち歩くべきか悩むレベルだな。それはさておき、お前の肉体はどうやって創られたんだ?」

「妾の肉体か?あやつが創ったときは、こう、パパッと、こんな、こんな」

何やらおかしな身振りをして見せる。


肝心なことは分かったから放置だ。

一瞬で創ってみせたということ、その意味するところは、血の体の一部を分け与えたのだ。




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