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デルタ卿との晩餐のこと。

夕方になってしまったが、デルタ卿のところへ声だけ掛けておくか。予定を聞いて、情報交換をしたい。


デルタ卿の屋敷に向かい、門の衛士の一人に声を掛ける。

「ツヴァイという者なのですが」

「おお、お話を伺っております。デルタ卿ならば、ちょうど先刻お戻りですぞ」

「いきなりお邪魔するのは少々無礼では?」

「転生者とはそういうものとされております」


便利だな、最恵待遇ってことか。

俺がこの都市に大きな利益をもたらせるとは思えないけどな。


ちょっとした応接間のようなスペースに案内され、お茶が出される。

食事は、と尋ねられたが面倒なので済ませたことにした。

「デルタ卿がこれからならば、食事をしていただいて構わないが」

召使いがいったん下がり、再度現れる。

「宜しければ、主と共に語らいの場を」


デルタ卿の晩餐に付き合いながら、語る場を設けてもらえた。

俺は珈琲をいただく。

「陽光殿は、今日は遺跡に行かれたとか」

肉の塊を貪りながら、デルタ卿。流し込むようにワイン。


「お耳が早い。早速ですが、その事でご相談が。精霊石の精製技術について、詳しい方を紹介して頂けないかと」


「精霊石の精製技術ですか。例の遺跡の、地底の装置までたどり着けたということですか。さすがは陽光殿」


たどり着いたのは確かだがな。

「確かに地底まではたどり着いたのですが、肝心の装置は大きく破損していた上に、施設としても崩壊しかけていたのです。装置を修復するにしろ、封印するにしろ、専門家の知識が必要な状況と見受けられます」

適当に説明しておく。嘘は言っていない。結果について語っているだけだ。


「修復か封印か、いずれにせよ、人手と時間を要する作業です。詳しい人間を紹介することは出来ますが、それでは次に進めますまい。つまり、先立つもの(カネ)が要りますな」


そうだろうな。

難しいのは、これがどういう種類の事業か、定めにくいところだ。

修復するとなれば、これは言わば、投資話だ。一方、封印となると、都市の安全を守るための支出ということになり、領土保全の費用という性質になる。


「あのような遺跡でこういった状況が発生した場合、誰がその処置の方針を決定するのでしょうか」


遺跡内部の進入禁止などは、ギルド長の名前で布告されていた。だが、完全に禁止されるような工事はされておらず、入ろうと思えば入れる状態だった。

つまり、警告ではあるが、強制力まではない印象である。


冒険者ギルドの性質からしても、遺跡の管理を行っているわけではないだろう。

ては、遺跡で何か起こったとき、誰がそれに対応するのか。

あるいは、俺はこの件にどこまで介入できるものなのか。

それを確認したいということでもある。


「攻略されていないダンジョンから発掘された品物は、基本的には攻略した者のものとなります。ただし、それが領土や都市の安全に関わるものである場合、領主や都市長と話し合いが持たれます。

現金で買い上げる場合もあれば、攻略した者の管理としつつ攻略した者を領主の配下と位置付ける、あるいは攻略で得た品の功績を以って爵位を与えることもあります。だが」

「俺の場合、後の二つの手段は取れませんね」


デルタ卿は頷いて話を進める。

「陽光殿の場合、商業的な交渉によって処置されるのがよいでしょう。攻略者としての地位を以って現物出資と位置づけ、他の出資者を募って共同経営とするのはいかがですか。最終的な枠組みをどうするかによって、声を掛ける技術者の選定にも配慮が必要となりますが」


魔石は、この地域に限らず、換金可能だ。貨幣よりも広い範囲で価値があると言ってもいい。

魔石が欠乏すれば動かせない魔道具や施設があることを思えば、金以上の価値を持つ場面もあるかもしれない。戦略物資というやつだ。

()()()()政治感覚で言えば、精霊井の扱いも、当然そういう方向になる。

例の転生者が残していった内政チートの影響は、しっかり根付いているようだ。


だが、俺は、石の精霊の国を守ると決めている。


「いや、回りくどい言い方をしてしまった。デルタ卿、俺は、あの施設の地下にある精霊井は停止すべきだと考えている。そのために力を貸して頂きたい」


「精霊井の停止、ですか。精霊井は、力や富が沸いてくる貴重な施設です。稼働できないので放置する、侵入者を防ぐために封印する、そこまでは難しい話ではないでしょう。しかし、それをあえて手間暇かけて停止するというなら、協力を求めるにあたって相当な説明をせねばなりますまい」


「地下の奥底深く、精霊脈に沿って石の精霊の国があります。精霊井は、石の精霊の力を奪うものだからです。そして俺は、石の精霊の思いや言葉を預かる立場になっています」


「ほう、石の精霊とな。その存在を、陽光殿は他の貴族や都市長らに説明できますか?」


俺の提案は、現世で言えば、油田のある地域に、原油を食べて生きている目に見えない絶滅危惧種が居るので、原油を掘らずに埋め戻しましょう。その費用は私に資金が無いので皆さんに協力していただきたいと思います、というくらいの無茶なものだ。

そのままでは、とてもではないが飲んでもらえる話ではない。


特に、俺の場合は、転生者の特典と同時に制約も受けている。

転生者としての地位で話をする分には、援助は理由の如何を問わず受けられない。だが、転生者の地位を差し引いたら、デルタ卿も含め、そもそもこの辺りの権力者と口を聞けるような立場ではないのだ。


それを踏まえて、デルタ卿は「商業的な交渉」と言ってきたのだろう。せめて利益を示して、援助ではなく取引としての体裁をなせなければ、好意的な勢力であっても力を貸すことも許されないのだから。


利益か。俺に限れば、宝石公女は魔道具のような使い道はあるが、普通の人間には宝石公女と契約できないのは先ほど確かめたばかりだ。


ミューの様子を見る限り、意思疎通はできる。行動原理が違う場面はあるかもしれないが、今のところ、人間と石の精霊の倫理観が極端に対立することはなさそうだ。協力関係も成り立つだろう。ミューは、今でも通信具だと思っているかもしれないが。


パイロペの話を踏まえれば、彼女らも肉体を持つことが出来る。

イラストがあれなら、サイズはともかく肉体も人型なのだろう。肉体を持てば、契約相手から離れて自律的に活動できるようになる。

そこまでいけば、ある意味亜人種のような位置づけで、人権の獲得まで行かないまでも、存在感を示すことが出来るかもしれない。単純な戦闘力なら、普通の人間をはるかに凌駕しているわけだしな。


「そうですね、現時点ではお示しできる材料が少なすぎて、雲を掴むような話でしょう。石の精霊たちともう少し話をして、この周辺の利害関係者に納得してもらえるような前提を整えたいと思います」

デルタ卿に話し、いったん結論は保留してもらう。


宝石公女の存在についてメリットを示し、種族存続のための環境を保全させる。

そのために、彼女らに肉体を与えて、契約を完了させ、単なる俺の道具という位置づけを変える。

そうだな、石の国を守るのは、あくまで石の国の人間──精霊か、──の意思によるものでなければ、その正当性が生まれない。


彼女たちの肉体を作る。

どうやら、盟約の義務を果たす時が、近づいているようだな!



短編を一つ、書いてみました。

物語ではなく、今の執筆状況についてのエッセイ?です。

もしよろしければ。


父が息子に、オンライン小説を書く。

https://ncode.syosetu.com/n4409eq/

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