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少女の救出作成のこと。

作戦を、開始する。


第一段階(フェイズ・ワン)、塔頂への道。

立坑内の水位は徐々に上がっているが、その速度は下がっている。

おそらく、塔の上部には届かない。

メンバーで飛べるのは俺や緋夜、ストラスくらいで、いずれも火力がない。

なので、道を作る。


「カイア先生!お願いします」

凍橋を発動。初めて使うスキルだ。

「耳を澄まさなくても、これは詠唱なしに発動できますから」


周囲の水分を集め、固結させて氷の道を作り上げる術だ。

水ならあるぞ、溜まるほどな!


バキバキと薄青い結晶の橋脚が立ち上がり、塔へと向かっていく。

濁った白い巨塔を取り巻く、螺旋階段だ。

カイア、嫌なことがあったら氷の城だって建築して立てこもれるんじゃないか?


「あの衝撃波には、耐えられない。急いで」

言ってる脇から、銀尖、銀晶の輸送部隊が出発。

ラズ、アウィネア、カンテラは銀晶に貼り付け、ストラスは後詰だ。

俺とカイアも緋夜と共に銀尖の背中に乗り込み、氷の螺旋階段を駆け上がる。


第二段階(フェイズ・ツー)、斬首作戦。

カードを掘り出すには、どうしても近づかなきゃならないが、この塔に近づきすぎるのはヤバい。

パイロペが攻撃を繰り出したらまとめて吹き飛ばされるので、時間もない。

大まかにカードと塔を分離し、細かい作業はその後だ。

というわけで、塔の頭を切り飛ばす!

出来るだけ小さく。


カンテラの鬼人化は、威力は増大するが微細なコントロールは失われる。

通常モードの斬鉄で、行けるか…?

ラズ、アウィネアは硬化を発動。フォローに備える。

銀晶、銀尖が踊るように青白銀の螺旋を駆け上がり、塔頂が近づく。

「カンテラ、近づきすぎるなよ!」


ウインドウ表示で、カードの位置は見えている。

切断部位を最小に。慎重にターゲッティングする。

銀晶の動きにタイミングを合わせ、斬鉄、発動!

居合の如く、引き絞った弓を放つがごとく、双頭斧が一瞬ブレるイメージ。


その瞬間、塔が──白い巨大な芋虫が──身じろぎする。

ザキキン!

濁り魔石の塊が、塔から切り離されようとして…くそ、あと少し、つながったままだ。

カードが、光を帯びている。

スキル発動に入る兆候だ。

あああ、セコイこと考えずにもっと大きくぶった切っておくんだったー!


そこへ。銀晶が、ふわりと宙に舞う。

「ふん、世話のかかる娘っ子だこと」

そんな声を聞いた気がしつつ。

銀の狼爪が光の残像を残して振るわれる。


パキ、ン。

カードを内に飲み込んだ、1メートル四方ほどの濁り魔石のスライスが、塔から切り離されて墜ちていく。

「ラズ!アウィネア!銀晶を、護れ!」

身代わり、捨身、忠義、献身…スキルなのか想いなのか分からんが、とにかく。護ってやってくれ。


パイロペのカードから、衝哮が放たれた。

ゴゥン…

塔丸ごとで発動していた時に比べれば、ごくごく小さな音だった。

というか、あれ、衝哮だったのかよ…どんだけの魔石オーバーブースト掛けたらあんなことに…


俺たちの方には、衝撃の余波こそあったものの、堪えれば済む程度のものだ。

第三段階(フェイズ・スリー)、減衰させた攻撃を耐えきる、も無事クリアだ。


と、視界の隅を銀晶が墜落していく。

三枚のカードも一緒だ。


おいいぃ!

落ち着け。


召還(上位個体)オオカミ、を解除。

いったん二頭を眷属の里へ。

実体がなくなれば、墜落はない。


「ストラス、様子を見に行ってやってくれ」

「かしこまりました。皇子殿が、痛みを感じていないのであれば、銀晶は大丈夫でしょう」

ほう、そういうものか。体が、つながっているんだな。


さて、3枚の、いや4枚のカードを回収に行かねば。

ここから濁り魔石のせいで暴走なんて、ギャグマンガのような展開はごめんだからな。


銀尖もいなくなっているので、緋夜と一緒にコウモリ化して飛んでいく。

カンテラ達は、と。

いたいた。

水面から突き出た瓦礫の小山の上に落ちていた。

埃をかぶっているが無事なようだ。

はたいて回収しておく。

反応がないな。さすがに少しは濁り魔石の影響を受けてしまったか。


次は、と。

半ばまで水中に没し、瓦礫の山に突き刺さっている乳白色の石板に向かう。


第四段階(フェイズ・フォー)。ここからは、未知数だ。

行き当たりばったりともいう。


「緋夜、このカードの周囲だけ濁りのない魔石となるよう組み替えられないか?」

「わたくしの力では、そこまで繊細な操作は…」


「お手伝いいたします。いえ、させてください」

誰だよ!ってカイアだね。

「緋夜、カイアの技を借りられるか?」

「…やってみましょう」


緋夜がカイアのカードを持ち、俺が水晶壁のスキルを発動させる。

水晶壁を組み上げるプロセスに、緋夜による精霊の力の選別を組み合わせ、パイロペのカードの周りを魔石で包み込むようにする。


「いかがでしょうか」

ふぅ、と息をつきながら、緋夜が一歩下がる。

俺が魔石に触れると、魔石部分だけが回収されて消える。

パイロペのカードが浮き上がって、俺の元へやってきた。


パイロペのカードは、捻れ、濁り、欠け、ひび割れていた。

いつからこんなこと、やってたんだろうな。


「パイロペ、聞こえるか」

「ああ…聞こえて、います…」

おお、ダメもとだったが、意識があったか。


「お前は、あの装置を破壊しようとしていたのか」

「石の…国を…守りたかった…」


「あの装置は、石の国から力を奪っていたのか?」

「そうかもしれない…そうではなかったかもしれない…」

「どういうことだ?」

「力を集める施設を破壊すれば…力は残される…そう教えられた…

だが…本当に破壊したかった装置は…破壊できなかった…

私は…騙されたのか…?」


「誰に?」

「お前と同じ顔をした…あれは、如何なる存在だったのでしょうか…」


俺と同じ顔?先代か?

宝石公女の術式を作り出し、契約をした。

石の女王は、その契約で得た力によって、装置を破壊し、石の国から力が吸い上げられるのを阻止しようとした…

しかし、そもそも宝石公女が発動できるスキルでは、精霊井を破壊できない。


これでは、パイロペにとって、そもそもの契約が意味をなさない。

もっとも、そいつが聞かれなかっただけという可能性もある。

元々の契約交渉には、その力でパイロペが何をするかなんて話は、なかったのかもしれない。

待てよ。


「パイロペ、お前は今、誰に従っているのだ?」

「私は…既に契約から解き放たれました…あれは、自らの責務を果たしたので…」


宝石公女の盟約か!

「宝石公女の使役者の責務、それは一体何なのだ」

「それは…うっ…」

死ぬな、パイロペ!

いやいやいや。ベタ過ぎるだろ、そこは!


「うう、大丈夫…盟約の…一端は…我ら石の精霊に…肉体を与えること…」

俺と考えてること一緒じゃねーか!

いや、待て、違うぞ。肉体を与えたら契約完了しちゃうってことか!大事な情報じゃないか。

肉体を与えたら、命令できなくなる。

なんで…二次元縛り…なんだよ…モニタの向こうも二次元でしたってか…


「私は…与えられた肉体を…捨ててしまった…それは、いい…私の個人的なことです…

今は…私は…石の国へ…帰ります…」

カードのひび割れが、大きな亀裂になっていく。

光が、失われる。


「貴方とは…いつでも…お話できるから…」

本当に小さな、一粒の赤い石を残して、パイロペは消えていった。

そして、ハートのQ(赤の女王)は、空位となった。


かくして、破壊の限りを尽くした女王は消えたが、俺達には後始末が残っている。

おーい。どうすんだ、これ。


召喚(上位個体)フクロウ、発動。

ストラス、私を、導いてくれ…


「銀晶はどうだ?」

「ダメージ自体は通常のものですから、自然回復で十分でしょう」

「ダメージ以外に、何か問題が?」

「今回ここに至った事情の説明が、困難かと」


俺の責任問題かよ!

おかしいな。里のことを最優先に動いているはずなのに。

なぜだ…



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