遺跡を探索するのこと。
遺跡探索用の道具をまとめて売りに出している掲示があったので、それをカウンターに持って行ってみる。
浮遊する灯や照明弾、地図板、光跡印などが含まれているそうだ。
なるほど、ダンジョン専用の便利グッズの詰め合わせだ。
買ってみる。
「精霊石の持ち込みってありますか?」
「討伐依頼は少ないですけど、珍しいものならここで買い手を探すこともあるかもしれませんね。特殊な属性武器や防具の素材になりますから、ちょうど欲しい人がいれば、良い値になるかもしれません。よくある精霊石なら、武具ギルド行きでしょうね」
何がよくある石なのか分からんな。
ま、大して金もないし、珍しい石などとても手が出ないだろう。
武具ギルドには行ってみてもいいかもな。
…いやいや、石を手に入れてちゃイカンだろ。また魔石を使ってしまうぞ。危ない。これが課金(魔石) の罠か。
アウィネアに流し込んだ魔石で、どれだけの子オオカミが養えると思ってんだ…
反省はしているが後悔はない。
それと、目を着けておいたダンジョンについて職員から情報を仕入れておこう。この街からそう遠くない廃墟の遺跡だ。
奥地でもないのになぜまだ探索の余地があるかといえば、遺跡の主要な構造が崩壊しかけているからだ。
ストラスによれば、地下深くに魔石の精製施設があるはずだが、頻繁に崩落があり、人間には危なくて探索できていないらしい。
だが、俺なら潰されたって死にはしないし、霧化でもスライム化でもして隙間から這い上がってこればいい。
職員には俺のことは詳しく話していないが、とにかく問題ないことを伝えて状況を聞く。これも転生者特典か?
大丈夫です、問題ありません。装備など飾りです。
割りと浅い場所でも魔石が湧くため、行き場の無い駆け出し冒険者が時折入っているという。
崩落は奥の方から起こっているらしく、入り口周辺はまだしばらくは危険度は低かろうと、完全な封鎖にはなっていないそうだ。
途中までの地図もあった。
というわけで、今回は黒長剣もギルドの金庫に預けていくことにした。遺跡の崩壊に巻き込まれたら、回収は難儀しそうだからな。ダンジョン探索セットと宝石公女のカード、あとは召喚で乗り切るつもりだ。
転生者特権で偉い人たちには話が通ったが、道行く人々にまで特別扱いされたい訳ではない。歩いて街の外までちゃんと出て行って、それから森を経由して飛び立つ。
森の中の遺跡の入り口には、冒険者ギルド長の名前で、この遺跡が崩壊しつつあること、二次災害の危険が高いため、この遺跡については要請があっても救難活動を行わないことを警告する掲示がなされていた。
ふう。
軽く息を吐いて、緊張感をほぐす。
では、行きますか。
壁や天井の石積が緩んでいるせいで、土や木の根があちこちから入り込んでいる。
そこから入り込んだ虫たち、それを狙う小動物、もう少し上位の捕食者。
思っていたより多くの気配が中でうごめいている。
もっと、乾ききって砂になっていくような風化のイメージだったが、むしろ土に還る、の方か?
遺跡の入り口をくぐり、コウモリを召喚、少し先行させる。近くに冒険者はいないことを確認したら、威嚇と牽制を発動。
細々したモンスターを相手にする気はないし、上層部は探索済みだろう。
地図に従い、一気に立ち入り禁止区域まで進む。
途中から、小さな魔石の欠片がパラパラと落ちていた。
最初はひとつずつ拾っていたが、段々不思議になって、ストラスを召還する。
「お呼びでございますか、皇子殿」
いつもの柔和な口調だが、どこか疲れているようにも見える。
「ストラス、里の魔石は足りているか?」
「ご配慮、痛み入ります。しばらくは過ごせるかと」
「早いところ、魔石を手に入れねばな」
「早速だが、聞きたいことがある。
魔石というのはどうやって生まれてくるのだったか?
遺跡の装置で作るものと思っていたが、そこらじゅうに散らばっているようだ」
「装置で作った分は、通常は一緒に設置された回収装置に貯めるようになっております。装置以外でもある程度は自然に作られますが、このように高い頻度で魔石に結晶することは有りませぬ」
「崩落といい、異常な事態か?」
普通の冒険者には聞こえないだろうが、俺には伝わってくる。
何か分からんが、地下深くで不規則に大きな衝撃を発生させている存在がある。それがドカンとやるたびに、ズズン、ズズズと崩落が進んでいるようなのだ。
ストラスも耳を澄ませている。
「何とも云えませぬな。ひょっとすると、精霊の力を吸い上げる機構だけが生きていて、魔石に結晶させる機能が失われているのかもしれませぬ」
「するとどうなる?」
「濃密な精霊の力が装置の周辺に溢れ、流れ出した力の一部が遺跡のあちこちでバラバラに結晶化することも有り得るかと」
「なるほど。崩落についてはどう思う」
「装置の故障と崩落と衝撃、因果関係を考察するには、少しばかり情報不足でございます」
発生源を見に行くしかないか。
立ち入り禁止区域といっても、封鎖するような工事がしてあるわけではない。再度の警告があり、鎖が張ってあるくらいだ。
警告の意味合いを強めるためか、小さな赤い照明が灯してある。
気にせず進む。
真の闇に包まれているのだが、俺にとっては薄暗がりくらいなものだ。むしろ落ち着く。
所々に魔石の煌めきがあり、威嚇を感知しないような単純な虫が這っているのが見える。
迷宮、迷路というほど複雑ではなく、侵入者避けの仕掛けもない。時折扉があるが、機械的な錠で仕組みも簡単なものだったので指先を変形させて解錠出来た。
この辺りで地図は尽きている。
通路の構造も頻繁に歪み、崩れている。
わずかな隙間を残して埋まっている部分もあり、スライム化を繰り返して抜けていく。
こうして進んでいる最中にも、微震動とともにパラパラと壁や天井が崩れている。
歪んで開かない扉を、カンテラの斬鉄で切り飛ばして開けると、吹き抜けになった縦穴に突き当たった。
ここは縦穴の上端部で、下の向かって底の知れない空間が続いている。
ムワッとするような精霊の力の気配を感じる。
縦穴の天井も壁も、カルストのような濡れた乳白色の石で薄く覆われている。
崩れかけて凸凹が生じている部分が多いが、その凹凸に沿って石が覆っている所もあれば、後からずれたのか、石で覆われていない断面もある。
今までよりも高い頻度で小さな魔石の煌めきが散りばめられ、それは乳白色の石と溶け合い、入り交じっている。
結晶になりかけの魔石が、膜のように見渡す限りを覆っているのだ。
触れてみる。
綺麗に透明な結晶になっているところは、触れればポリゴンの光が散り、回収出来た。白く濁った部分は、削ったりしても回収できなかった。
ふと思い立って、カンテラのカードを壁に触れさせるようにしてみると、カードが魔石を取り込んで光を放っている。
これはいい。
コウモリ化して飛び立つと、カードを壁に沿って滑らせるようにして、螺旋状に縦穴を辿って降りていく。
次々と壁の魔石を取り込んでいくカンテラのカードが、キラキラと彗星のように金色の光の尾を残している。
「綺麗だな、カンテラ」
返事はないが、経験値も美味しそうだ。
と、近くを飛んでいるはずのコウモリの様子がおかしい。
ブックマーク、評価、どうもありがとうございます。
謎のごった煮小説ですが、引き続き読んで頂けると幸いです。




