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人外でも大丈夫のこと。

というわけで、転生者特権──人外でも共存可能(カモン・エブリバディ)──を手に入れた。

吸血鬼といえば、狩ったり狩られたりするものだと思っていたのだがな。


都市長と太守との会見の後も、デルタ卿は俺に付き合ってくれるという。

スタルトやサルサニアの辺りで活動するのなら、デルタ卿が太守や都市長との連絡役を務めてくれるらしい。


デルタ卿は元冒険者の商人上がり、今は貴族位を持つ行政の人というオールラウンダーで、その経験や人脈の豊富さから色々便利に使われていると自嘲していた。


気楽なうえに話が早いので、大変にありがたい。

街をざっくりと案内してもらいながら、この土地での転生者の位置づけみたいなものを確認していく。


「先ほど、魔王のような転生者だったらという話をしてましたけど、人族を支配しようとした転生者はいなかったのですか?」


「いたさ。実際、支配した者も。色々な姿を取れるモンスターで、滅茶苦茶強かったらしい」


「レジスタンスとか組織して、討伐したんですか?」

「いや。むしろ、その転生者が作り上げた統治機構や産業をもとに、今の国々が動いている。独裁者だから支持されないとは限らんさ」


おっと。ツエーだけでなく内政チート野郎だったか。


「社会インフラも一気に整備されたし、行政機構は手続きが透明化されて公明正大になった。開拓も進んだし産業も発展した。

しばらく独裁政権が続いた後は、学校がたくさん作られて、民主主義とは何かって教育が行われたかと思ったら、後は好きにやれ、といって立憲民主化されたそうだ」


統治に飽きたのか。危険な存在だな。

専制の効率性を見せつけておきながら、形だけの民主主義を与えて去る。

根の育っていない民主主義など、衆愚の玩具となるぞ!


「ただ、立憲はともかく、完全な主権国家もないのに民主化は早すぎる、という貴族間の話し合いが持たれて、今は緩やかな貴族政に戻されているのが現状だな。

その時に貴族制度も実用的に作り替えられて、だから俺みたいなのでも貴族位を持ってる」


さいですか…


「そのモンスターも、まだどこかに生きているのかもしれないが、長いこと人間の前には現れていない。

ま、俺に言わせれば、人々が飢えないのが一番さ。

さっきも言ったろ、美味いものさえ安定して手に入っていれば、民衆だって魔王だって納得してしまうものだ」


なんかある意味大物だな、ここの人たち…


「そういえば、武人から魔術師、魔物まで、転生者は姿にかかわらず料理方法の開発や変わった作物の栽培にやたらと熱心だったと聞く。『陽光』殿は違うのか?」

「今のところは食べ物で養う相手がいないのであれですが、ああ、自然豊かな土地を手に入れたいとは思っていますね」


「土地か?農地や牧場にするわけではないのに?」

「養いたい精霊の群れがおりまして、人や魔物が入り込まない穏やかな森を探しているのです」


「ふーむ、精霊か。人が利用していない森ならたくさんあるが、魔物が入らないようにしようと思うと、工夫がいるかもしれんな。精霊の力を生むための土地ということだな?」


「そうですね」


「となると、その土地を守るためには精霊術を使えん。

現場で派手に術を使って力を吸い上げてしまうのでは、元も子もないからな」


なんと。警備方法にも課題があったか。


「今は資金も資源もないので、ゆっくり考えます」


「そうだな。我々も、転生者に対しては奪ったり縛ったりしない代わりに、資金や物資の提供もしないことになっている。

私の個人的な知恵や情報なら提供できるが、精霊相手の話となると、貸せる知恵は限られる。当の相手とよく相談することだ」


「今でも、十分ご支援いただいていますよ。

取り合えず、彼らを養うために魔石を集めたいと思ってまして、近場の遺跡を探索しようと思っています」


「なるほど。腕に自信があるなら、遺跡の探索は収穫があるだろう。では、冒険者ギルドまで案内して私は失礼するとしよう。

ああ、ギルマスには『陽光』殿がこの街に来ていることはもう伝わっている。普通の冒険者として扱うことになっているから、他の冒険者には敢えて知らせてないかもしれんがな」


デルタ卿のサルサニアの屋敷を教えてもらってから、ギルドに向かう。

お互い、有益そうな情報があれば交換することを約束し、別れる。デルタ卿、頼りになるぜ。


冒険者ギルドに入っていく。

当初の計画とだいぶん前提が変わってきたので、ある意味依頼を確認する必要はなくなった。

だが、この街や国の在りようが思っていたのと随分違っていたので、どんな依頼があるのか興味が湧いたのだ。


豊かな都市だけあって、立派なギルドである。

例によって外観は感嘆するほどの芸術品、中に入ってもあちこちに巨大なモンスターの骨や剥製、希少な素材の見本などがセンス良く飾られている。


これだけ大きなギルドだと、クランも多く、それぞれの部屋などもあるようだ。通路や入り口の造りからして、そのクランの持つ力が分かりやすいくらい分かるようになっている。


一方、駆け出しの冒険者はやはり金がないのだろう。入り口付近の簡単な作りのベンチやテーブルには、貧相な身なりの冒険者が一人、二人と座っていた。


金がないから装備が買えない、装備がないから選べる仕事が少ない、仕事がないから…というトライアングルだ。

LVでも上がれば、多少は状況も変わるんだろうけどな。


とはいえ、俺も依頼などまだ2件しかこなしていない。いや、1件は討伐したら依頼が出ていただけで、もう1件は、まだ完了していないな。


無茶な攻略で大勢の眷属達を犠牲にしてしまう、あんな討伐はもう決してしない。

宝石公女の火力は上がっているが、こっちもいろいろ配慮が必要だと分かった。


当初の計画通り、ダンジョンの単独潜入探索(スニーク)を軸に、関連しそうな依頼をチェックしてみるとしよう。


カウンターの脇にある依頼の掲示板に近づいていくと、ギルド職員が一瞬だけ目線を送ってきた。

俺が誰だか分かっている、そういうことか。お互い、特にリアクションはしない。

ふむふむ、大人の街だ。


掲示板は数多くの依頼票で埋め尽くされている。スタルトが十か二十だったとすると、三百くらいありそうだ。


大まかにランク順、その中でエリアごと、ジャンルごと、といった区分がある。


純粋な討伐は少ない。

ここに巨大な戦力がいくつもあるなら、近くにいつまでも魔獣をのさばらせておかないだろう。


一番多いのは素材、それも食材の買い取りか。

遠い地域のものも結構混ざってるな。この街こそは美食の中心というわけか。

討伐依頼が少ないわりに大規模なクランが部屋を構えているのも、単に美味いものが食えるからってのもあるかもしれない。

グルメは戦争だって引き起こすもんな。


あとは、冒険者の装備に関するものも多い。

希少素材もあるが、装備の補修に用いるものや消耗品、魔道具やスクロールなどもある。「極寒耐性系装備一式求む」のような掲示の仕方もある。

依頼というより、冒険者同士の取引の場でもあるということか。


特定のエリアのみで用いる装備一式や消耗品などは、用が済んだら売却してしまいたい。だが、ばらして各分野の商人を通すより、まとめて別の冒険者に譲ってしまった方がお互いメリットがありそうだ。


よし、ダンジョン探索用のアイテムでも買ってみるか。




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