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カードは口ほどにものを言う。

俺は、サルサニアに向かって飛んでいる。


結局、ストラスと話しながら一晩中飛び回っていたので、周辺の地理にずいぶん詳しくなった。

前はコウモリによる探索を繰り返して「マチ、ミエタ」みたいな念話に頼っていたので、今後の移動がかなり効率的になったといえる。


あと数キロというところで森の中に降り、コウモリ変を解除、走って街道に向かう。

街道に近づいたところで人の気配があったので、通過していくのを森の中で待つことにする。

シャイなもんで。


娯楽の少ないこの世界だが、独り(ボッチ)に見えても俺には大勢のお供がいる。

呼び掛ければ、いつも応えてくれる。

そう、宝石公女(このこ)達が。


新しく考えた遊びとしては、アラゴンの水源探査で占いをしてみたり、アウィネアの身代わりを発動させたあとに、アズの連撃を自分に向けて発動してみたり、というのがある。


後者は、スキルは仲間にも発動出来るフレンドリファイアがあることと、身代わり発動中に攻撃を受けると別なセリフが聞けることを発見したのだ。


アウィネアの防御力は相当高く、アズ程度の火力では傷も負わない。「くっ」とか「ふっ」と言うくらいだ。

ラズの連撃Ⅳを当ててみたら、多少削られて、「まだ、大丈夫です」みたいなコメントが頂けた。


ラズの治身は、自分自身よりは少し効率は落ちるが、他人の回復もそれなりに出来ることも判明した。

それで、しばらくアズやアウィネアに対してラズが殴って回復を繰り返してみたが、大した成長はなく、強化は魔石に頼るしかないと結論付けた。


なお、ラズの連撃を喰らうとアズのカードはすぐに吹っ飛ぶのだが、そのせいで連撃の中盤以降が当たらなくなるなど、相手の軽さによってはコンボ構築に配慮が要るという事実も発覚した。

無駄なアクションゲー要素、要らねえ…


街道から人の気配が消えた。もう少し間をあけて、出発するか。

念のため、街道で出会った人間におかしな印象を与えないよう、威嚇や牽制は解除する。


人は第一印象で全てが決まるというからな。

これでも前世では就職活動をくぐり抜けた人間だ。

それくらいのことは知っている。知っている。

取り返しがつかないことがあるということもな…


いかん、つらい想い出がなんか湧いてきた。

手に持ったラズのカードを眺める。


武闘家タイプの修行も、つらいものが多そうだ。

師匠もライバルも、どいつもこいつも理屈なんか通じなさそうだったりな。考えるな、感じろ。俺もか。


お前にも、つらいことはあるのか。

心の中で問いかけてみる。


はい。一方的に仲間を殴るのは、修行とはいえ、苦しいものでございます。


そうか、修行とはいえ、な。

ん?


(やめろ、ラズ、何を言っている!)


ひどく小さな声で、別な声の念話が聞こえてくる。

知っている声だ。


「アウィネア?」


ひっ、という息を呑む音が聞こえる。

小さな声だが、この俺の聴力は逃れられん。


えーと。

「アウィネアさん?」


「アウィネアを責めるのはやめてください。出過ぎた口を利いたのはわたくしです」

ラズの声。

お、お前たち、会話も出来たのか…!?


(やめるのだ、ラズ!)

まだアウィネアが言っている。

「アウィネアよ。なぜラズを黙らせようとする」

問いかけてみる。


う、うぅ、みたいな唸り声がしている。

「答えよ、アウィネア」

重ねて問いかけてみる。アウィネアが逆らうなんて…なんでや。


「ラ、ラズを、少しでも巻き込まないためです…」

巻き込む?何のことだ?


ラズが割り込んでくる。

「アウィネアは、忠義の者です。隷属を強いなくとも、主の為に全力を尽くす者です」

れ、れいぞくをしいって何だ?美味しいの?


「アウィネア、そなたは解放を望むのか…?」

「私は…私は貴方の盾、貴方の鎧であります。ただ…」

ただ?

「厳しき仕打ちを、わずかなりと控えていただければと…」

アウィネアらしからぬ小さな声で呟く。


「厳しき仕打ちとな?」

思わず聞き返すと、アウィネアが「ひぃっ」と声を上げる。


「ラズよ、教えてくれ。我は、アウィネアに厳しき仕打ちをしておるのか?」

「…我が主よ、なぜ私やアズにアウィネアを打たせるのですか」


強くならないかなーと思って。いや、それ以外もちょっとあるけど。

「…試練を与え、高みを目指す一つの試みだ」


「我が主よ、なぜアウィネアが倒れ伏すまで術の行使を命じたのですか」


スキルを成長させようと思って使いまくってた時のことか?MP尽きると倒れるのか…

「それも試練の一つ。アウィネアを試していた」


「我が主よ、カンテラやアズを呼んでいただけないか」

む。

もはや推理アニメの後半の雰囲気だ。

犯人は…俺しかいないか?


カンテラとアズのカードを取り出し、配置する。


フワフワと空中に浮かぶカードに囲まれる俺。

カードって思うからいかんのだな、せめてユニットのアイコンと思うことにしよう。皆の顔が浮かんでいる。あれだ、ギャルゲーの会話シーンと思えばいい。

断罪シーンか、バッドエンドだな。


「アズ、お前はどう思っていたのだ。正直に言ってみよ」

ラズがけしかける。

「正直に話してみるがいい、アズよ」

俺も頷いて見せる。


「ええと、ええと」

幼い声で逡巡したのち、告白が始まる。

「怖かったです。この世界に初めて呼ばれて、装備を持たされて。それで、いきなり気持ち悪い獣に襲われて。姉さんたちも、助けてくれなくて。爪で引っかかれて、噛みつかれて、目の前が真っ暗になって…」

えええ…じ、事故だったんすよ。わざとじゃなかったんすよー!


「そこまでで十分だ。アズ、すまない。つらいことを思い出させてしまったな」

そしてラズのイケメン感は何なんだ。


「カンテラ、お前はどうだ」

ラズは、カンテラにも声を掛ける。


「む。目の前で幼き子が獣に襲われているのに、禁止され、助けられなかった。戦士として、自分が赦せぬと考えた時もあった」

カンテラさん、長文喋れたんだ…そして俺か、確かに俺がカンテラを止めていた!


犯人捜しの場面はこれで終わりか。

あとは、俺の独白とエピローグというところだな。

残念だが、旅の終わりか?


「そうか、済まなかったな、お前たち。どうやら、俺は主として失格のようだ。お前たちを解放しよう。気に入らない者は、新たな主を探すがいい…」


ここで、「なんて言うと思ったかー、俺は全てを統べる者!」みたいにビビらせてやるぜ!と思った瞬間。


「そういうわけには行かない。私達が貴方に従うように、貴方にも私達に対して履行すべき義務がある。それが盟約」

しまってあるはずのカードの一枚から、冷たく、硬質な早口…カイアか。

詠唱以外のセリフも話せるんだな…


「私が話すのが、そんなに不思議?私は、アウィネアやアラゴンたちと違って単なる兵器だから、かしらね」

読まれてる!?

いや、兵器扱いなんてことないはずだけど…唯一の射程火力だったからね…そういう出番が多かったかな…


「履行すべき義務とはなんだ?」

「それは、私達には知らされていない。私達は、旅立つことを選んだ石。貴方の召喚に応じ、札の力をまとって精霊の力を行使する。それだけの存在」


ものを言うカードか。

セリフを喋るカードと、ものを言うカードでは、結構違ってくるものだな。

何かもう、逆らえる気がしねぇ…


「それでは、アウィネアは何を望む」

「私の望みは、既に叶いました」

「なんのことだ?」

「私の望みは、こうして普通に語ること、旅をすること。

召喚された、最初の日から、私はスキルを発動する以外の行動を禁じられていました」


「禁じられていたのか?」

「違うのですか?意識のある間中、スキルの発動を命じられていたので、それ以外のことは許されないものと解しておりました」


「…違ってはいない。だが、確かに、今はそうではなくなった」

「では、私の望みは叶ったということも確かです」


何かもう、逆らう気がしねぇ。

アウィネア、その心に寄り添おう。


しかし。またこの子達に対しても何だか正体不明の義務があるらしい。

何が本編ストーリーなのか、ホント分かんねーよ!!



もっと早い段階でこの話を展開を入れ込むつもりだったのが、ここまで遅くなってしまいました。

プロットなしの旅は続きます。


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