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皇子の正体のこと。

俺と、仲間たちの国を作る。


そういう世界観(ゲーム)だとは思ってもいなかったが、俺はあの銀狼達に(あがな)いたい。いや、奴らが楽しく暮らせる場所を作りたい。


これがゲームだというのなら、そうやって遊ぶことに決めた。全力で。



さて、宰領たるストラスよ、我々の取るべき道について、語るべきではないか?


ストラスと色々と語ってみるうち、本来のゲームの流れとの食い違いが分かった。通常のパターンを教えてもらうと、こんな感じだ。


「幼い皇子は、継代の転生の際には、小さく無力な状態でこの世界に生まれまする。

大地の精霊の力を集めながら周囲の獲物を徐々に狩り、物心つく頃には我らの子らを召喚できるように、もう少し長ずればワタクシや銀尖達もお目通りが叶うようになります。

さすれば、ワタクシどもは帝王への道を教え、戦いの術を鍛え、精霊術を身に着けていただき、繁栄の道を歩みだすのです」


ゲーム的に解釈すると、このフクロウの悪魔はゲームシステムと世界観のチュートリアル担当、そしてオオカミの銀尖夫妻が戦闘と戦術、コウモリの遣い手の緋夜が魔術やスキルの担当という感じか。


で、通常ならばもっと早い段階で俺はこのメンバーと接触しているはずで、あるいは接触する前に冒険を始めてしまったせいで、今回の悲劇が生じてしまった、と。


確かに、俺は自分が不死なのを最大限利用しようと考え、最悪一人で逃げ出すだけなら何とかなるだろうという発想で、無茶な戦闘を仕掛けてきた。

だが、LV4でこの召喚(上位個体)を使えるようになるとして、雑魚を狩っているだけではちっともLVが上がらなかったのも事実だ。


いや、雑魚を狩りまくった、といっても数時間か。

ゲーム的には、LV上昇の効果を説明するため、戦闘チュートリアルで多めに経験値が貰えるなんてパターンもありうる。


俺の時間感覚が、圧倒的にせっかちすぎた、ということか。

俺は()()ついてからまだ数日なんだけどな、と冗談めかして告げてみたら、不思議そうな顔をしていた。


次に、彼らの側からして現状がどう見えているかを語ってもらった。

ストラスの紳士的配慮を経てもなお、俺のココロをえぐる悲しく長い話だったので大幅に端折ると、次のようなものだった。


今回の皇子の継代転生は、ややおかしな状態で始まった。

皇子は上位個体、つまり眷属の長達と接触する前から眷属を酷使し、必要な魔石を補充することもなく戦力をすり潰しながら明らかに格上の敵に襲い掛かっていた。


眷属の国の中では、皇子は魂を置き去りしてしまったのだとか、邪悪な狂戦士の魂が入り込んでしまったのだとか、まだ物が見えず愚かなだけなのだとか、残虐無比な悪霊に取りつかれたのだとか、色々な議論が沸き起こっていたらしい。

さりげなく俺、ディスられてますか?


そして、上位個体がついに召喚された。上位個体が消滅してしまえば、もはや子らは生まれない。眷属の滅亡の時は来たれり。

それが先までの状況だった、と。


ちなみに、俺もストラスも疲労や空腹は問題とならないのだが、森の中で延々立ち話しているのも時間の無駄なので、周辺地形の把握を兼ねて、高空を飛びながらレクチャーを受け続けている。

ストラスは、魔石を時々ポイっと投げてやると、空中で体をひねりながら上手に食べてみせるのだった。


そうそう、召喚したオオカミやフクロウにも、働いた後は回復と慰謝の意を込めて魔石を与えるべきだったらしい。

俺は、用は済んだからさっさと帰れみたいな振る舞いでした、はい。


で、今は向こう──国というには小さいので、眷属の里とでも言っておこう──は落ち着いているのか、と聞いてみる。


「そうですな。里は、それぞれの長と子らからなっておるものですから、長の心が休まれば、大丈夫です。

新月のようにお隠れだった皇子の魂は、今は三日月の如く、やがて満月のように大きくなって我らを導くであろう、そのように伝えております」


ストラス殿…かたじけない…このうつけめを…叱ってやってくだされい!


ちなみに、ストラスの子であるフクロウは現在23羽、銀尖・銀晶の子であるオオカミは47匹、緋夜が生み出しているコウモリは78羽くらいであるらしい。オオカミ、今までに何十匹を犠牲にしたか覚えていないな…


眷属の子らも、それぞれ生まれ方が違うようで、オオカミは、短期間ではあるが狩りの仕方などを比較的実際の動物に近い感じで教えなければならず、愛着がひとしおなのだと。


なお、フクロウは卵で生まれ、巣に置いておけばあとは独りでに育つもので、コウモリは髪の毛など緋夜の体のごく一部から魔術で生まれるものなのだそうで、これまでの仕打ちのことはそれほど気に病むことはないという。


オオカミの悲嘆の度合いが大きい理由は分かった。

緋夜のどことなくユルイ雰囲気の理由も。


里の運営については、差し当たっては子の数も減っているので、直接魔石を補充してやればよいという。

将来的には、精霊の力がよく生み出される場所を選んで整えてやり、そこが里の拠点となれば栄えていくであろう、と。


里というのはどうやら地形的にはこの現実に重なるように存在し、レイヤーが上位というか、こちらからは普段は見たり触れたりできない状態にあるらしい。

精霊の力は微生物や植物などによって少しずつ作られるのだが、先にこちら側の存在によって吸収、消費されてしまうので、環境を整えてやらないと、里まで届かないという。


里を利用するようにしたのも、ある代の真祖で、ブンサントウシの一環であると伝えられているらしい。

里では、時の流れが加速されており、働きかけのレバレッジが高い。僅かな精霊の力と時間で多くの眷属を生み出し養うことができてリマワリが良い一方、万が一里への精霊の力の補給が途絶えると、眷属を現実世界に連れてきても維持できず、壊滅的な状況となる。

現実世界と里へのトウシのバランスを考慮してポートフォリオを形成し、現実世界と里のカワセ変動を見計らってウンヨウするのが肝要であると伝えられているらしいが、この域に達しない代々の皇子も多いとか。


牧場経営…なのに金融テイスト…?眷属の子ら、俺以上にリソース扱いだな。

ほんとに何なんだ、全体を通じての、この要素マシマシ感は。

取り合えず里については魔石の補給だけ優先しよう。


別な話として、真祖の由来についても説明があった。これも、本来ならば長い月日を掛けて語るべき歴代の祖先の物語があるのだが、今は緊急事態だ、かいつまんで語ってもらう。


星の海を渡る卵によって真祖の一族は星へ送り込まれる。真祖はその星で成長し、やがて王国を打ち立て、いずれはその星を真祖の一族の拠点としていく。眷属はその教育係であり、支援のために生み出された。

そんな話を聞いていて、最初はどこぞの戦闘民族みたいな設定か、卵って宇宙船の比喩かと思って聞いていた。


が、真祖がどのような形で成長していくかはその真祖次第であり、人型が一番多いものの、獣の形を好んで取ったり、中には世界樹のように巨大な植物の形を取ったり、もっと極端な例では見渡す限りを覆いつくす菌糸の森になって暮らしていた者もいたとか言われると、また頭が痛くなってきた。


リアル卵か。っていうか俺たちは異星人(エイリアン)侵略者(インヴェーダー)か。


確かに、この真祖の血の本体は、液体状の生命体であり、形は全く自由だ。

大地の精霊の力さえ吸収出来れば、取り合えず生存できる。

殻を形成すればどんな形でも取れるし、霧のような状態になっても意識や記憶はちゃんと保持できる。


地球上の他の生物とはまったく異なる基盤で存在するとも言える。

でもって、真祖はその星の神を目指すのだとしたら、神の形は様々ありうる。八百万っていうくらいで。


だから、何でもかんでも同じ世界にぶち込むな、と。

どこまで目指せばいいのか、最初の決心の持っていき場に困るっつーの…



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