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ダンジョン探索のこと

学院を訪れる準備ができるまでの間、村に滞在して例の術の可能性を探ることになった。

学院に行けば、それだけ様々な実験や観測ができるらしいが、目立たない場所で検証しておきたいこともあるだろうという判断だ。

ダンジョンマスターには、ダンジョンに入っている人間の存在が把握できるらしい。

機密保持としては、これ以上の場所は無いだろう。


そして、工房のものではないダンジョンの入り口に、滞在できる施設があるという。

俺達は普通の睡眠や食事は必要ないが、ゆっくり話ができる場所があるなら遠慮なく借りておこう。

その程度に、考えていたのだが。


「驚いたな。これはすべてが魔道具……というか、すでにダンジョンの一部ということか」

俺は、思わず声を上げた。


サルサリアの宿であれば、魔道具があるとしても水を汲み上げる仕組みやお湯を沸かす装置に組み込まれているくらいだが、ここでは何もかもが魔力を帯びている。


厨房の調理のための炉を例に取れば、炎の大きさや強さ、形が自在に操作でき、表面だけを焼いたり内部から先に熱を伝えるようなことまでできるという。


「最初からこんな風に作ろうと思って、作ったわけじゃないんですけどねぇ。帝都の貴族の家のものを真似たら、こうなってしまって」


コーダが、苦笑しながら案内する。


「コーダが、作ったのか!?」


「内緒ですよ。その時は、急いで避難施設を作る必要があったもので……」


いったいどんな事情があれば、いきなりダンジョンを作ることになるのか分からんし、急いで作った避難施設がなぜ帝都の貴族と同じようなものになるかも分からんが、何しろとんでもない奴だということか。

ケーヴィン師達が呆れたように扱うのが分かる気がするな。


「ケーヴィン師、私達はこのあとダンジョンに潜ろうかと思いますが、どうされます?」


「あー、遠慮しておくよ。我以外、全員が睡眠も食事も必要ないというのでは、足手纏いになるだろう」


「そうだ、コーダ。別の仲間を一緒に連れて行ってもいいか?」


「他の宝石公女ですか?」


「いや、俺の眷属だ」


「……眷属?」


ダンジョンの中では召喚できないようだったので、いったん外に出る。


「宝石公女達は、いわば俺が術で石の精霊の世界から呼び出しているんだが、眷属は家族というか血を分けた兄弟みたいなものだな」


上位眷属召喚、銀狼、梟、蝙蝠。


俺の背後に、ぬるりと現れる二頭、肩に一羽、そして首に絡みついてくる、もう一人。


「おい、緋夜……」

「ずいぶんと、お久しぶりにございます…我が淡つ色の御方マイ・フェアリシュ・ロード…」


確かに、前に召喚してから長いこと顔を合わせていない。


「もう、忘れられてしまったのかと思っていました…」

「何を言っているんだ。忘れているわけなかろう、客人の前だ、ちゃんとしろ」

「忘れねばこそ、想い出さざれ……」


「し、失礼だが!」


声を上げたのはケーヴィン師だ。


「そちらの、方々は!?」


「えー、この困った娘が緋夜、狼が銀尖と銀晶、それに梟のストラスと、言います」


「…ツヴァイ殿は、宝石公女と眷属と、二種の精霊を従えていらっしゃるというのか」


また面倒なことを…、頼むから、どっちが本命とか聞くなよ…。

「詳しいことは、話せません」

またの機会に、とさせていただこう。


ケーヴィン師は、宝石公女を見た時ほどではないが、ジロジロと無遠慮な目を向けている。

主に緋夜に。


む。

何やら微妙な気分になって、緋夜を抱え込み、コーダに確認を取る。

「この者達も、魔物を狩れば力を付けることができるかもしれん。同行してもいいか?」


「あ、大丈夫ですよ。でも、この子達の相手になるような魔物は、かなり奥深くまで潜らないと出会えないかもしれませんね…」

コーダは、ちょっと驚いたように銀尖達を眺めている。

本性を現していないのだが、さすがに精霊化しているだけあって、分かるようだ。


眷属達にも興味津々のケーヴィン師は放っておいて、ダンジョンへ向かう。

この世界のダンジョンというものに入ったのも、初めてだ。

精霊の里と似たようなものかと思ったが、また違うようだ。


コーダとダンジョンについて話しながら、何となく考えをまとめてみた。

ダンジョンは、それ自体が一つの大きな魔道具のようなもの。

設置されたダンジョンは、周囲の魔素を取り込み、その魔素から魔物が生まれる。


魔物はさらに周囲の魔素や他の魔物の魔素を取り込んで成長し、やがてその身体の中に魔石を作り出す。

中には、精霊の力も宿し、精霊石を抱えるものもいる。

そして、ある程度の魔素を取り込んで成長し終えると、ダンジョンから出ていく。

極めてまれだが、自らダンジョンを作れるほど高位の魔物もいるのだという。


小物の魔物や、魔素をため込んだ植物、鉱物等を刈り取っていく。

確かに、少量ながら魔石が含まれている。


ストラスやカイアに聞いたところ、魔素を直接取り込むことはできないという。


そうなると、ダンジョンと魔物は、魔素と呼ばれる存在を、この世界の人間達が利用できる魔力や精霊の力に変換する装置の役目を果たしていることになる。


この世界は虚構ゲームのようなものだが、その中でも何かの法則に基づいてエネルギーの循環があるように見える。

ダンジョンも、そういうものとして設計されたということか。


二、三時間ほど、明るく爽やかな草原や森を歩き回った。

それほど魔石を与えていなかったフィオーラくらいならば短時間でも違いが見えるほどに成長できたが、すでに大量の魔石を与えているカイア達は、そこらの小物の魔物から得られる魔石では誤差程度だ。

単純に仲間の強化のためとしては、あまり効率がいいとは言えない印象だった。

ドライが、あの魔石精製装置の遺跡が重要だと言っていたのも納得できる。

ただ、「勇者」や一部の魔道具は、魔素を直接取り込むことができるため、また事情が違うらしい。


あとは、草原や森林のフィールドを超えてさらに奥地へ進めば、より高濃度の魔素が溜まるエリアがあり、さらにダンジョンらしい洞窟や建物もあるという。

魔物も、高位のものとなるそうだ。

いずれは、俺の成長のためにもそういう場所を目指すのかもしれない。


そういえば、意外な発見だったのは、この空も太陽も偽りのものだということだ。

そう、緋夜も、この陽射しは平気だったのだ。


「平気だというだけで、やはり落ち着きませんけどね…」

頭では分かっていても、体に染みついた光への恐怖感は、ぬぐえないらしい。

それでも、明るい光の下で俺と一緒に歩き回る時間は、新鮮なものだったようだ。

喜んでいただけたようでなにより。


「それでは、戻りましょうか。ダンジョンの外では、もうじき朝になると思います。リュシーナが来たら、例の実験に取り掛かるとしましょう。」

コーダが、声を掛けてきた。



第五章の終わりで、いったん締めておくことにします。

プロット自体はある程度考えてあるので、評価、感想などで需要がありそうなら続きを書きます。


よろしくお願いします。




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