新たなるカードのこと。
さて、冒険者としての登録もしたし、トランプのカードと精霊石の情報も手に入れた。
ここは、色々と落ち着いて整理すべく、拠点となる宿を決めたいところだ。
俺には睡眠も食事も不要なのだが、せっかく知り合った人間たちと連絡の取れる場所があった方が何かと便利だろう。
ヴィタに案内してもらって、ギルドの近くの中級の宿に部屋を取った。
[ヴィタ達は、明日からどうするんですか]
[オーガが討伐されたから、明日からしばらくは街道の警備ですね。南の商人たちが、争うようにこの町に向かってます。オーガは討伐されましたけど、縄張りが空いた分、中小の魔獣が入り込んできますから。
ツヴァイは?]
俺は石も欲しいし、討伐依頼をめぐってみるか。ヴィタ達のパーティーに同行しても、召還も抜きとなると戦力にならないし、旨味もないな。
[俺は討伐依頼を請けてみます。数日かかると思いますけど、またこの宿に戻ってくるので、何かあったら宿の人に伝言しておいてください]
[じゃあ、討伐依頼を一緒に見に行きましょうか]
別に一人で大丈夫です、と言いかけて、文字が読めない設定を思い出した。おっと危ない。
この世界では、例の掲示の仕組みがあるので、討伐依頼は勝手に挑戦すればいいことになっている。
報酬もシステム的に自動的に処理されるし、ごまかされたり、手柄の横取りなども問題にならないってことだ。やっぱりソロプレイ専用かな?
それはさておき。
依頼票を眺めてみる。読めないことになっているが、勉強する振りをしておこう。
文字が読めても、意味が分からないこともあるしな。
[ヴィタ、この『シュバルツェ・ウルス・トロペーア』って何ですか?]
棒読み風に尋ねてみる。
[文字は知っている言葉と似ているんですか?
凶暴なクマの群れが発生しているみたいですね。この辺りでは珍しいです。全部討伐できなくても、一匹単位で報酬が出るタイプの依頼です]
クマかよ。このネーミングセンス、やめーや!
[じゃあ、それを狙ってみます。どちらの方角ですか?]
[街道のオーガの寝床のあった辺りから、東北の森に入ってしばらく行ったあたりです。途中から山になってるかもしれません。
わたしは詳しくないんですけど、木に付いた傷を目印に探すそうです。ここの冒険者は狩りの経験が余りないので、依頼も放置されていたみたいです。でも、ツヴァイさんは罠師なんですよね]
[そうですね。獣退治は得意分野なので、ちょうどいいです。今日は、どうもありがとうございました]
[こちらこそ。陽光殿を案内出来て、光栄でしたよ]
うーん、爽やかなお姉さんだ。手を振って別れ、宿に戻る。
さて、秘密のお楽しみタイムだ!
先ほど手に入れた石は、青緑色で金属光沢の藍銅鉱、薄オレンジで半透明の四角い結晶である蛍石、かすかに青みがかって針の塊のような結晶の異極鉱、それに少し大き目の石が、ごく薄い水色で透き通った色合いの藍晶石の4つだ。
低位のものから行くか。手元のトランプの束から、スペードの2、クラブの2、ダイアの2を取り出す。
ん?ダイアの2、それはシーラで使ったな。藍銅鉱を近づけてみると、メッセージが表示された。
「ダイアの2の地位を、上書きしますか?」
なるほど、枠のようなものなのか。カード的には被ったわけだが、役立たずのキャラを引いた場合や枠が埋まってきた場合は、メンバー交代できるということか。ま、今の時点ではわざわざ上書きすることはないな。
代わりに、ハートの3、あとダイアの3もあるな。残りは被り…もう、低位の紙や魔石なしで作ってもあんまり意味ないってことか。そんなもんだろうな。
では改めて。
スペードの2に藍銅鉱。クラブの2に蛍石。異極鉱は、ハートの3。
贅沢に、3人同時だ!
ベッドの上に3枚のカードを並べ、怪しい表情を浮かべた男が一人。
やがて三色の光の渦が立ち上り…三枚のカードが生まれていた。
短剣使い、アズ。見習い僧侶、フィオーラ。駆け出し盗賊、ヘンミィ。全員が星一つ。
主なスキルとしては、アズが連撃Ⅰ、フィオーラが小回復、ヘンミィが罠探知Ⅰ、くらいか。
見た目的には、濃い青髪でベリーショートのアズ。薄黄色のふわふわボブのフィオーラ。銀髪に一筋の青、ポニーテールのヘンミィというところ。3人ともまだ子供っぽい感じだ。
正直戦闘力としてはカウントしていないのでもっと便利系がよかったんだが、これで4つのスーツの2が埋まったという満足感はある。3はあと2枠だ。
しかし、二十人も三十人も覚えられるか…?うーむ。
次はちょっと大きい石だ。カードも、ダイアの6。
来たれ、藍晶石の少女よ!
今までに見ない密度の光の渦が、部屋の中を照らし出す。
魔力が、風のようにツヴァイの髪も吹き上げている。
「おお…!」
出来上がったカードは、美しく澄んだ青色に金の縁取り。
青狼の氷術師、カイア。星三つ、来ましたー。
スキルは、氷狼爪、青眼、水晶壁、凍橋。
攻撃、デバフ、防御、便利とバラエティに富んでいる。
厳しい目つき、魔術師っぽいローブは白をベースに濃い青が散りばめられて美しい。
雰囲気があるねぇ、いいねえ。
だが。次が最後の石。本命!
オーガリーダーから手に入れたカンテラオパールに、大枚はたいて手に入れたスペードの7のカード。
この近辺では最高クラスの組み合わせのはず。
どうだ!カンテラ、照らす者よ、その封じられた星の海から出でて来たれ!
カードの周囲に魔法陣が描き出され、金色の光の柱が立ち上がる。
光が竜巻のように柱の中を吹き荒れ、やがて雪のように静かに降り注ぐ。
現れたカードは、砂色に遊色が散りばめられ、周囲には複雑な文様の金の縁取り。
双頭斧の鬼、カンテラ。
身の丈を超える双頭の長柄斧の遣い手。腰まである豊かな金髪は幾筋か様々な色が混じり、乱雑に束ねられている。蛮族のような出で立ちながら、その面は貴種のもの。
額からは捻れた角が突き出しており、口元には長い犬歯が見え隠れする。
美人だが、すげぇ迫力だ!
スキルは、斬撃Ⅴ、鬼人化、衝哮、乱舞陣、血針、斬鉄。
細かいところは分からんが、見るからに戦闘特化、最右翼だ。
さて。揃ったところで、「配置」とやらを、試してみようじゃないか…
藍銅鉱
https://www.mindat.org/gm/447
蛍石
https://www.mindat.org/gm/1576
異極鉱
https://www.mindat.org/gm/1860
藍晶石
https://www.mindat.org/gm/2303




