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キラーパス。
それは人前で話すことが苦手な私に問答無用でしゃべれという、ひょん教の悪意を感じるパスのことである。私はそう感じた。
「薄皮、答えてみろ。」
なにーーーーーーー!? もう一つおまけに、なにーーーーーーー!? 私を殺す気か!? ひょん教の分際で教師という権力を使い私を歴史から抹殺するつもりだな!? それでも教師か!? という疑いと恨みのこもった眼差しで私はひょん教を見つめる。
「ど、どうした? 薄皮。 答えていいんだぞ?」
目は口ほどに物を言う。私の殺意のこもった鋭い視線がひょん教にプレッシャーを与えている。そこまではいいのだが・・・このピンチをどうすれば乗り切れるのか、慌てないで悩む必要がある。しかも高速悩み事で・・・。私は悩み事を脳みそフル回転で悩んだ。
「・・・。」
おお! そういうことか! フッ、分かったぞひょん教。私へのパスの意味が。これは私に覚醒しろということだな。それならそうと前もって言ってくれれば、こんなに悩む必要はなかったのに。ひょん教のいけず。もうシャイなんだから。
ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。
私は覚醒の言葉を心の中で唱えた。教室で初めて発動させるので、どうなるのか予想はできなかった。それでも、この状況を乗り切るには悩んで、悩んで、悩んで私を私が覚醒させるしかないと悩み抜いた。
「その答えはヘリコプターです。電車にバスに新幹線ヒッチハイクも無理です。その短時間に目的地に到着することはできません。唯一可能なのがヘリコプターです。ヘリコプターなら富士の火口に突入することができます。」
どうだ! 人前でも緊張せずにしゃべれる私は無敵なのだ! どうだ周囲の私を見る目が丸く飛び出して開いた口が塞がっていない。私が悩み抜いて出した結論を声に出して伝える。これが私の実力だ! ワッハッハー!
「正解だ。さすが薄皮だ。」
それだけか? ひょん教。問題に正解した私に驚くのは分かるが、私に恥をかかせようとした最初の目論見は外れたな。これが話したい時に話す。笑いたい時に笑うことができる私のもう一つの私。薄皮ヨモギだ!
「薄皮さんすごい!?」
「薄皮! 薄皮! 薄皮!」
薄皮コールだ! ああ~! 気持ちいい! 私であって私ではない、でも私。薄皮の私も、薄皮ヨモギの私も私なのだ! なんだろう? スマホ生活では味わうことのできない快感を全身に浴びている? この感覚はなんだ? まだまだ私の知らない世界があるというのか?
「どうも! どうも! 薄皮です! よろしく!」
なんか調子がいい。調子がいい奴になった気分だ。信じられない・・・私が笑顔でクラス全体に愛想を振りまいている。私にこんなことができるなんて・・・内気や顔見知りの私。笑顔で自分の言葉でしゃべれる私。どちらも私。ほんとの私はどっち? それともどっちも私なのかもしれない。私にもよく分からないけど私の中で悩み事の内容が少し変わってきたことを私はまだ自覚していなかった。
つづく。




