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第1話
その夜は満月だった。紅に染まった月は、見るものを魅了するほどに美しかった。が、それと同時に人々は恐怖し、嫌悪し、夜明けを切望した。
阿鼻叫喚。
普段畑を耕す鍬も、その場では武器となり、食材を切る包丁も、今では敵の命を絶つために振るわれる。
だが、そんな村人の、ささやかな抵抗も、それらの前では無意味であった。
村のあちこちで家屋が燃え上がり、人々の絶叫が絶え間なく響く中、それに呼応するように、聞く者に恐怖を、絶望を与える雄叫びが、大気を支配し、大地を震えあがらせた。
それらは残酷なほどに無慈悲に、全てを狩り尽くすまで、目に写る命を、殺して、殺して、殺して、殺した。
そしてその夜、たった数分で、一つの村が壊滅した。