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無色な僕と燻んだ妖精  作者: 栗間理玖
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朝の教室での一幕

教室に着いて真っ直ぐに出席番号順の席に向かい、座る。ここ数日間で洗練された動きは自分でも見事なものだと自負している。誰とでも仲良く話せるリア充予備軍はすでにちらほらと頭角を現しているが、僕はどうもそんな人間にはなれそうにない。


「おーす昌平、おっは〜」


パチっと気障ったらしくウィンクをして挨拶をしてきたイケメンは、天明定信(てんめいさだのぶ)。歴史に出てくる偉人ばりの古風な名前に、ライトブラウンに髪を染めワックスでカチコチに固めている、入学早々から飛ばしている奴である。どう考えても僕とコイツが釣り合う要素などないと思うのだが、席が前後ということもあってここ二、三日程仲良くしているのだ。


「おはよう天明。」


「オイオイ定信でいいぜ。オレたち親友だろ、昌平」


ったく。どこをどう取れば二、三日で親友と解釈できるのだろうか。まぁリア充気質な定信のおかげで、僕も多少はクラスに話せる人ができたことはありがたく思っている。


「それよか昌平、今日の部活見学どこ行く?」


うちの高校は今日から週末を挟んで二週間、部活動見学があるのだ。二週間はいくらなんでも長すぎるだろうと思うのだが、部活動所属を推奨している高校の方針らしい。ちなみに中には、合格発表時から入部をして春休みから練習に参加する猛者(もさ)もいるらしい。


「あーいや、僕は部活入る予定とかないしパスで」


「えーなんでだよー。付き合いわりぃな」


まあ確かに部活に入らない生徒はごく少数みたいだから、付き合いが悪いと思われてもしょうがない。


「ごめん。ちょっと色々家でやらなきゃいけないことがあるから」


「あぁそっか。飯とかお前が作ってんだっけ」


定信には、父子家庭であることは以前話していた。こういう機微の利くところが、僕がコイツを嫌いになれないところなのである。


「あ〜天明ぃ、今度の週末ヒマぁ?ぁたしとカラオケ行かなぁい」


ふと割り込むようにして話しかけてきたギャル口調の女子は、天羽冴香(あもうさえか)。校則すれすれの金に近い茶髪、高い鼻にケバケバしい化粧と香水。聞いた話によるとロシア人の祖父を持つクオーターだとか。おかげで背も高い。

僕はこういうギャルっぽい女子があまり好きではないのだけれど、定信と冴香はお互いのその派手な外見に魅かれるものがあったらしく、よく話している(僕はこの二人を陰で苗字から取って『てんてんコンビ』とか呼んでいる)。


「今週末かー、日曜ならいいぞ。あ、そうだ昌平も連れてっていいか?」


と、僕の背中をドンと叩いて言う。

え、この二人とカラオケとかテンションついていけなさそうなんだけど……


「え、あ、僕はどうしようかな…」


「あ〜とぉ、友木…だったっけ?おっけぇ、じゃもう一人女子誘うかぁ」


おいこら勝手に決めるな。ケバいのもう一人増えたらどうするんだよ。

そして冴香はクラスを見回し、しかし意外な人物を指名した。


「梨果子ぉー、ちょっとこっちおいでぇ」


「ぇえっ、私……?」


呼ばれて飛び出て……というには怯えながら、一人の女子がおずおずと歩み出てきた。さっきからこっちをチラチラ見ていた子だ。彼女の名は酒匂梨果子(さかわりかこ)。同じクラスではあるがまだ入学して一週間程度しか経っていないこともあり、僕は話したことがなかった。

そして彼女はなんと言うか、僕が言う資格はないのかもしれないけれど…地味なのだ。まだクラス内での勢力も決定していない今は、はっきりとしたことは言えないけれど冴香と梨果子は釣り合っていないように思える。ーーーーそれこそ僕と定信の関係程に。

だから梨果子が怯え、躊躇いを覚えるのも無理はないだろう。派手な見てくれの二人のせいで僕たち三人はクラスでもだいぶ目立っていた。


「梨果子ぉ、あんたってさぁ今度の日曜日空いてるぅ?」


「え、えと……一応空いてるけど、、、」


そう言ってまたこちらを………って僕?


「友木くんも行くんですよね…」


「あ、うん。そのつもりだけど…」


すると彼女は少し頰を染めて………


「じゃあ…私も行きます」


ーーーーまあなんというか…本当によくわからないけれど、僕は週末にこのちぐはぐなメンバーでカラオケに行くことになったのだった。

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