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無色な僕と燻んだ妖精  作者: 栗間理玖
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プロローグ

「あなたは何色になりたいの?」


記憶の奥深くで何者かが問いかけてくる。

聞き覚えのある声。

しかし誰の声なのか、いつ何処で聞いた声なのか全く思い出すことができない。

夢の中ではよくあることだが、夢ではこの声の主を理解している。誰だかわからないのにそれを不思議とは思わないのだ。

そして夢から覚めたとき、僕はそれを寂しがり余韻に浸る。どうせしばらく経つとまた忘れ去ってしまうのだ。また次に同じ夢を見るその時まで。

しかしまぁ、なんとも僕は物好きな人間だ。なにせ物心ついたときから何度も夢の中で同じ場所を訪れているというのだから。

ここは鍾乳洞のように何らかの液体が結晶化した、ぬめりのある洞窟だ。しかし決して暗くはなかった。僕は、何度もここに来た経験からその理由を知っている。

大きな結晶のひとつひとつが淡いぼんやりとした光を放っていて、それらが本来暗いはずの洞窟を照らしているのだ。

その光も奥へ進んで行くほどに強くなってくる。

そしていつものこの場所にやってくる。奥深くには時の止まった泉が湧いていて、おそらく先ほどの声はそこから聞こえて来たのだろう。

さざ波ひとつ立たない………近づくまでそれが水だと気づけないほど静かな泉だった。

泉の中央には小さな島があり、何らかの宗教らしき女神像が立っている。

そして再び……


「また来たのですね。ようこそ妖精の泉へ」


聞こえてきた声には抑揚がなく、一切の感情を読み取ることができない。声色とはよく、人物の性格や感情を表すがそれすらも失われている。

色が…失われている……

そこまで考えたところで記憶は曖昧になり、意識は途絶える。


「…また来てください。いつでもあなたのことを待っていますから」


心の奥底の無色の泉に一滴の涙が滴り波紋が広がり、やがて元の静けさを取り戻した。



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