少年
雪の降り積もったとある晩。
ボクは一人、外に駆け出した。
意味は特にない。
ボクの心にあったのは夜の街への好奇心と、降り積もった雪への興奮だけだった。
ふと気が付くとボクは知らない場所にいた。
どこか目指す場所があったわけではないけれど、そんなに遠くに走ったつもりはない。
でも、いいんだ。
ボクがあの家に帰ることはたぶん二度とない。
そんな事よりも、さっきからやけに寒いと思ったらボクは赤い斑の付いた半袖のシャツ一枚の姿で外に出てきてしまったらしい。
しばらく歩いていると、おじいさんが話しかけてきた。
おじいさんは一言二言喋ると、黙り込んでしまった。
あぁ、また服を汚してしまった。
でも大丈夫。
もういくら汚してもボクを叱る人はいないから。
ボクは黙ってしまったおじいさんを置いてまた歩き始めた。
すると次は優しそうなお姉さんが話しかけてきた。
しかし、きっとボクが汚れていたからだろう。
お姉さんはボクを見た途端に短い悲鳴を上げて走り出した。
ボクは必死にお姉さんを追いかけた。
待ってとお願いしても止まってくれやしない。
でも、しばらく追いかけているとお姉さんが転んでしまった。
きっとボクのお願いが神様に通じたんだろう。
お姉さんはおびえた様子でボクを見て来る。
あぁ、そんな目で見ないでよ。
ボクはその目が嫌いなんだ。
気が付くとお姉さんは地面に横たわっていた。
ダメだよ。
こんなことろで寝てたら風邪ひいちゃうよ?
いくら揺すっても起きないので、もう放っておくことにした。
それにしてもまた服が汚れてしまった。
どこかで洗濯しないと……。
数日後。
最近ここらで通り魔事件が起きているらしい。
最初は自分の両親を頭を何度も殴って殺した。
次の被害者はおじいさん。
散歩中に襲われて、心臓を一突きだったらしい。
次は二五歳の女の人。
仕事帰りに襲われて背中を滅多刺しにされたらしい。
犯人の名前はもう上がっていて、テレビでも報道されている。
世の中不思議な偶然があるものだ。
被害者はみんなボクが出会ったことのある人たちばかりで、犯人の名前もボクと同姓同名なのだから………。
全く、恐ろしい世の中だよ。
前から十歳くらいの少女が歩いてくる。
あぁ、また服が赤く汚れそうだ………。




