旅のはじまり
ぐ~~・・・ぎゅるるるる~・・・
自分のお腹の音で目が覚めたルナは先日から何も食べていないことに気がついて起きた。
テントから出て、まだ夜が明け始めたばかりの空を見つめる。
周りには電気などが無いせいか、まだ星がちらほら見える。
泉に近づき水に写った自分を見て少し違和感を覚える。
しばらく違和感の正体を探ってみた。
よく見ていたら少し痩せたて2重顎がなくなっていることに気付いたルナは、
“昨日は食べなかったから痩せた”のだと思い少し喜んだ。
周りには木の実など見当たらなかったからとりあえず水でお腹を満たし、顔を洗う。
服装の身支度も正して森に近づいたが、今回は熱で首が痛む手前にある木ところで止まる。
どうやらリチャードとザイルはまだテントの中で休んでいるらしい。
今は大人しくしていた方がいいと思いつつ、暇を持て余していたルナは
久しぶりに木に登ってみることにした。
木登りは子供のころ以来だったものだから絶対大変だろうなと思っていたのに反して、
全く苦労もせずスイスイと上れてしまった。意外と楽しく木登りができ、座れるような
いい感じの枝で少し考え事をすることにした。
―両親は今頃どうしているのだろうか?心配していることは間違いない。
―自分はこれからどうなるのだろうか?...むしろ何故召喚されたんだ?
―第一ここがもし(殆ど間違いないんだが)異世界なら帰れる手立てはあるのか...
小説や物語では帰れたり帰れなかったりだから、ここではどうだろう?...
そういえば最初にここに来た時に、世界の意思がどうのこうのってって言われたことを思いだす。まずはそのことに関して調べてみようと決めてふと下を見たら、ちょうどザイルがテントから出て泉に近づいていくのが見えた。
空を見上げれば先程よりずっと明るくなっていて、思っていた以上に物思いに耽っていたことが伺える。
耳を澄ませば昨日は何も聞こえなかったはずの森の音が聞こえてきた。
葉の揺れる音や小鳥たちのさえずり、小さな動物たちの生活の音を聴きながら
心を落ち着かせようと思って目をつぶりしばらくそうしていた。
「そろそろ起きてください。早く出発したいのです。朝食いらないのですか?」
私が休んでいたテントの前でザイルが私に呼びかけていた。
「一応女の人なんだ...ふわぁ~...大目にみてやりなよ。う~~ん。」
もう起きていたらしいらしいリチャードが泉の近くにいつのまにあった
テーブルに着いた。
テーブルの上には見ったことがない黄色い果実とカラフルな料理があった。
水でお腹を満たしていたが、食事を見たら思わずお腹がなった。
「もう、起きてるよっと。今行きます。」
そういって慎重に下まで下りて、テーブルの方に行った。
ザイルはテントの中からではなく離れたところから返事が来るとは思っていなかったらしく、少し驚いているようだったが何も言わずにテーブルについた。
リチャードは何故かきらきらした目で私が来た方向を見ている・・・・
「おはよう!今日は早かったんだね!君はもうこの空気の中に居るのには慣れたかい?」
にこやかに話しかけてくるリチャードは最初の失礼な奴だとは思えない。
根はいい奴なのだろうか...
「あ、うん。慣れました。」
短く答えるが、むしろ空気がないところで生きたことがないんだがと心の中でツッコミを入れてしまう。
「僕はまだ変な感じだよ!身体が重いように感じる!ずっと地面に引っ張られているみたいで君みたいに高いところまで浮いていくことができない!」
―木には登ったが浮いてはいないぞ?
なんだか勘違いされているなと思いながらザイルの方を見たらもう既に食事を始めていた...放置かいっ!
気を持ち直して手を合わせて
「いただきます!」
といって未知の食事に手を伸ばした。
――意外と美味い!果実はリンゴを一段階甘くした味がして、
カラフルな料理は魚と野菜のサラダの味がした。
空腹だったためあったいうまに自分の分をぺろりと平らげてしまった。
今日も一日頑張れそうだと思いながら幸せそうに食べ終わる。
腹が減っては戦は出来ぬ!って言うしな♪
食事が出来て少しご機嫌になったルナである。
食事も終わり片づけを申し出てみたがザイルにバッサリ断られた。
彼は呪文を呟いてテーブルやテントをなくし、そこに残った魔法陣の上にある
さまざまな形をした石を自分の持っていた袋に仕舞い込んだ。
残った魔法陣は霞んでいってなくなった。
さすがは魔法使い!最初は夢だと思っていたせいかあまり感動していなかったが、
改めてみるとすこしテンションが上がった!
異世界に来たからには自分も魔法が使えたい!掃除とか断然楽になるではないか!
うん、絶対に覚えようと心に誓いよしっってポーズをとる...
なんか視線が痛い.....
「これからの予定ですが、目的の場所までは10日ほどかかります。空気の中でも生きられる魔法薬は23日ほどしか持ちませんから、無駄なことをせずに寄り道をしなければ十分に間に合います...リチャード、聞いていますか?もう少し王子としての自覚を持ってください。」
ザイルが最後の方はリチャードに向けて話す。
「わかっている。ただ、周りが見た事無い物だらけですこし驚いているだけだ。安心していい!心配はいらない!」
何故だろう...不安だ...さっきから目が輝いているのは気のせいだと思いたい.....
「貴女もくれぐれも面倒なことをしないでください。バカ2人の面倒は観けれません...この島の中心にある祭壇が目的の場所です。」
失礼なことを言いながら地図らしきものを広げる。
地図にしては必要最低限なことしか描いてなく、大丈夫なのかと更に不安だ。
自分たちが出てきた泉と目的の場所、その道しるべのように描かれた9つの印がある以外とても簡単な地図だった。
「バカって僕は一応君の上司」
「うるさいです。この前の失敗を陛下に報告していいんですか?」
「すみません....」
この2人の上下関係がちょっと面白いかもしれない(笑)
「今日は日が暮れる前にこの地点まで進みます。」
ザイルは泉から一番近い黒い印を指した。
「よし!僕が先導しようじゃないか!」
上機嫌に先に行き始めたリチャードはザイルにジト目で見られていることに気が付いていない。
なんか がんばれ!
なんだかんだで状況を少し楽しんでいる自分に少し驚くが、焦っているよりはいいかと思い先を歩きながら言い合いを始めた2人の後についていく事にした....