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004話 触手っていいですよね?

 危ない梯子を降りること、数分。

 やっとの思いで降り立った地下は、勿論、というか何と言うか暗かった。

 それを、キキちゃんが《ウィスプ》を2体呼び戻し照らしてくれる。合計3体の光源の御陰で、どうにか足下を確認出来る様になった。

 地下室…というより、地下道だな。俺達が降りた所から、長く真っすぐに続いている。

 壁面と床は、黒だか、紫だか、よく解らない色のタイルが用いられており邪悪な雰囲気を醸し出す。それが、この湿気た感じと良く合い、不気味な雰囲気を増長しているのだと思う。


「…うむ、いい雰囲気だ。やはり、ダンジョンとはこうでなくてはな!!」


 小さい頃は、冒険ごっことか言って遊んだ事もある。

 こういう未知への冒険と言うのも、結構乙なものだ。俺も日々、自分の知らない新しいジャンルに挑戦し続けているしな(主にゲームで)。人間とは冒険し続ける動物だと思う。


 さて、一緒に降りて来たキキちゃんの姿を探す。

 ふむ…居た。居たのだが…


「キキたん? なんで、俺の後ろに隠れてるんですか?

 あれかですか、怖いの苦手な人ですか? 

 ふむ、だとしたら今度一緒にお化け屋敷的な所にいこう。そうしよう。

 イベントは速いとこ回収しとくに限るからな」


「な、なに意味の解らないこといってるんですか?…

 こ、こ、怖くなんかないですし…ぜんぜん怖く無いですし。本当ですよ?

 …こんなんで、怖いとか言ってたら、《人狼族》の名折れですし…さっさと進んでください!!」


 ほほう、怖いんですね? 怖いんですね?

 俺がニヤけた笑みを浮かべたからか、思いっきり背中を摘まれた。

 マジで痛い…爪が、爪が食い込んどる…



 しばらく歩くと、その扉が現れた。

 黒色の…おそらく鉄製の扉だ。重厚な雰囲気を醸し出す扉は、この先になにかしら特別なものがあることを仄めかしているようで。さらに、この先の危険も伝えているようでもある。

 うん、明らかにボス部屋の扉だよね?

 扉の前で、俺とキキちゃんは顔を見合わせた。


「どうする、開けるか? それとも帰るか?」

「…い、行くに決まってるです。あ、開けてください!!」


 ふむ、では開けるとしますか…

 取っ手に手を掛け思いっきり開く。

 扉は見た目も重厚さに反して、以外と簡単に外開きに開いた。

 扉の先は全くの暗闇…しかし、その暗闇の中に何かが蠢いているのが解った。

 

「…キキたん、一匹飛ばしてみてください。なにか、居ます」

「わ、解ったです…行ってください」


 キキちゃんが命令すると、ウィプスの一体がその暗闇の中に飛んで行った。

 扉の入り口から2m程進んだ所だろうか、それのシルエットが暗闇の中に浮かび上がった。


 ウネウネ蠢く幾本ものそれ…

 薄暗い紫色のそれは、波打つ海の様に蠢き、艶かしい体液を滴らせている。

 それはまさしく、男のロマン!! あふるる夢の結晶!! 肉というかタコというか、軟体動物がもつそれを想起させる外見は、まさしくオーソドックスかつ、長年親しまれ続けた姿…

 太さには幾つかの種類があるらしく、中には何に使うのか名言はしないが《イボイボ》のある物もあるみたいだ…イイネ!!ありとあらゆる需要に対応する意気込みが伺えるね!!

 あらゆる責めに対応する万能の存在…そう、それこそが万能の願望機、《触手》である!!!


「…やっと…やっと、出逢えたというのか?

 最初に現れたのが、全く色気の感じない蛇だったから…もう出逢えないかと諦めていたのに…

 まさか…まさか、ココで男の夢に出逢えるとは!!

 …おお、なんと神々しい姿!! これぞ我が楽園エデン!!

 後は、その贄となる柔肌さえあれば…ククク、面白くなって来た!!

 さぁ、めくるめく官能の世界へ!! 

 ……………………相談ですキキたん、前、歩きませんか?」


「………」


 キキちゃんの方へ振り向くと……わお!! 突っ込みすらないジト目です。

 その冷たい視線で高揚とした気分が落ち着いて来ました!!

 だからお願いです、剣に手を掛けないでください。切らないで、お願い!!


「!?……シンジ様、危ないです!! 避けて!!」


 血相を変えたキキちゃんに驚いて触手に視線を戻すと、俺に向けて伸ばされた触手が1つ…

 色、太さ、ビジュアル、全てにおいて満点が付けられる素晴らしい触手だ。しかも、かなり速い!! これならすばしっこい女の子が相手でも余裕で捕らえられますね♪

 

 …て、狙うの俺じゃないだろ!!

 男の触手プレイなんて誰得だよ!? 

 ショタや、男の娘ならまだしも、俺の様な一般男子高校生…ちょっとした筋肉を備えた、身長170ちょっとの、大して美青年でもない、ちょっと肌の白い普通の男子高校生が触手責めされても、一部の愛好家以外、誰の得にもならないんだよ!!

 襲うならキキちゃん襲えよ!?

 需要高いから!!

 

「……誰が、需要高いのですか?」


 心の声が出たらしい。


「キキたんは俺が守る!!」


 咄嗟に手を広げ、襲いかかる触手からキキちゃんを隠す。

 触手は一度、動きを止めた後、俺の胴に巻き付いて来た。

 ふむ、ぬめり気が少し足りないかもな…もうちょっと、ヌメヌメしてても良い。

 身体に触れた触手を分析していると。

 俺の身体に触れた触手が、光の粒子になって消滅した。


 ん?…何事コレ?…


「すごい…すごいです、シンジ様!!

 なにかしらの《対魔術》ですね!! アレを一瞬で消滅させるなんて…

 あ、解りました…《雷撃》もその術で消滅させたのですね、見直しました、すごいです!!」


 後ろでキキちゃんが歓喜の声を上げる。

 いや、全く身に覚えが無いのだけども…

 しかし、光の粒子による消滅は連鎖的に続き、部屋中の触手が消滅してしまった。

 NO!!! 俺の楽園エデンがあああ!!!


 今の俺は悲痛な表情を浮かべているに違いない。

 折角…折角巡り会えたというのに、神は無情過ぎる…


「本当にすごいですね♪

 それでは、中を探索するですか。

 ウィスプ、中を照らしてください」


 キキちゃんは喜々とした表情で、部屋の中に残りのウィスプを飛ばす。

 その時、俺の視界の隅になにやら黒い物が蠢いた…

 なんだ? Gか? この《魔界》にもGが居るのか!?

 人間に、平穏は訪れないと言うのか!!


 直に、視線をそちらに向けると、そこには真黒な球体が浮かんでいた。

 ウィスプが光の塊と例えるなら、こちらは闇の球体と言った所か?

 大きさもウィスプと大差ないように見える。しかし、一番の違いは…


「な、なんだこの可愛らしい物体は!?

 そ、そんな目で俺を見るな!!」


 そう、そのつぶらな瞳である。

 黒い球体に付いた、2つのつぶらな瞳…小さい円形を2つ、黄色で塗りつぶした様な目だが、しかしソコには怯えの表情が見て取れた。

 なんなんだ、この生物は…つーか、コレは生物なのか?


 後ろで何者かが尻餅を付く音が聞こえた。

 振り向くと、驚愕の表情のキキちゃんが一人。ワナワナ震えながら、怯えた表情で黒い球状の謎生物を指差している。


「な、、なんで、こんな所に《暗黒魔獣ダークマター》が居るんですか!?」


 はて、ダークマターとな? 暗黒物質のことですかな?

 俺が不思議に思っていると、黒い球体の方から聞き慣れない声がした。


『…グス、グス…こうさん、いたいことしないで』


 ふむ、どうやらこのビックリ生物から発せられてるらしい。

 地味に可愛い声だな、俺は苦手だがロリ属性のある人が反応しそうな声だ。

 

『こわいの、ヤダ…イタいのヤメテ…』


 んー、見たん感じ無害そうなのだが。

 キキちゃんを見ると、こちらも先程までの怯えた表情では無く、狐に摘まれた様な顔をしてらっしゃる。

 俺の顔と黒い球体の顔(?)を見て、キキちゃんは複雑な表情をした。


「だ、ダークマターと言うのはですね!?

 弱い個体でもC級以上の危険度を持つ、とっても強い魔物なんです!!

 だから、えーとですね…そんなのが現れたら、怯えるのは当たり前で…だから、先程の尻餅も大げさな反応では無くて…

 …まさか、喋るとは聞いてなかったのですしこんな可愛い声と可愛らしい容貌だとは思ってなかったですが…かなり、ビックリしています。はい」


 ふむ、頼んでもいなにのに状況説明をしてくれた。

 声も上ずってるし、かなり、動揺している様ですな…

 そんなに尻餅見られたのが恥ずかしいのか?

 

 そんな話の最中でも、黒い球体は怯えてるらしく身体を震わせて浮遊している。

 目には涙をためており、なんか、俺達が悪い事している気持ちになるな…


『ごめんなさい、いきなり、おそって、ごめんなさい…』


 フルフル震えながら謝って来る。

 ふむ、襲われた記憶が無いのだけど…

 キキちゃんの方を向くと、首を傾げられた、ふむ身に覚えが無いな。


『いきなり、しょくしゅでおそって、ごめんなさい』


 む!! 触手で襲っただと?

 つまり、この黒くてちっこいのが先程の触手の本体と言う事か!?

 詳しく聞かねば…悪い心が出て来た。


「ふむ、とりあえず詳しく話してくれないとな?

 こっちにも、おしおきを考える都合がある」


 極力、悪そうな笑みを浮かべて、出来るだけドスの利いた声で訊ねてみた。

 そうすると、黒ボールは目だけで絶望の表情を浮かべ、これから死ぬのではないかと思えるくらいガタガタ震え出した。

 俺の態度にキキちゃんが、俺にだけ聞こえる様な声で耳打ちする。


(もう、シンジ様。謝っているのですから、許してあげましょうよ?)


 それに俺はもっともらしいことを言って返すのだ。


(いや、コイツは何かをしっている。

 だから出来るだけ情報を集めておかねばならない)


 俺の言葉に渋々了承したのか、キキちゃんは同情の視線を黒いボールに向け後ろに下がった。


「さぁて? 話を聞こうか?」


『はい、ごめんなざい、ずいまぜん…グス、グス』


 怖がらせて愉しんでいるが、俺はこの黒色のカー○ィーのパチものを結構気に入り出していた。なかなかに愛嬌のあるやつなのだ。普通に可愛い。

 シンプルなデザインなのに、百面相を浮かべやがる…

 愛いヤツめ…ククク。




・魔王は《暗黒魔獣ダークマター》を捕まえました。

名 前:黒峰真治

ジョブ:魔王

年 齢:18歳

性 別:男性

異 名:紳士、変態

スキル:NO DATA

魔 法:《雷電》《魔除けの魔法陣》《魔除けの結界【B級】》《???》…

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