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003話 まぁ、押してみようか?

 壁には無数の亀裂があり、その亀裂から植物が蔦を伸ばす。それが、建物中を覆っているようであって。今にも崩れてしまいそうである。

 威風堂々とした佇まいであっただろう石像は緑の苔まみれで、○もっこりの様になっていた。

 すげー、等身大の◯もっこりだぁ…◯もっこりって2mの高身長だったんだな。

 俺がそんなことを考えていると、キキちゃんが『それは、先代魔王様の石像です』と不機嫌そうに呟いた。

 成る程、先代魔王は◯もっこりだったのか…驚きの事実だ。

 そして、キキちゃんはご機嫌斜めだ、怒ってる姿カワユス。


 今俺達が居るのは、《漆黒の樹海》の南端にそびえる旧・魔王軍の城砦の1つ《シュバルツ・ヴァルト城》…先代魔王の居城だったこともあるらしい。厨二な響がカッコイイ古城…否、今では、住む者は一人も居ないらしいからな廃城といったところか?

 俺は普段見慣れない西洋風の城に、厨二心をくすぐられている。だって、仕方ないだろ? 男の子だもん。

 因みに、魔物はこの城には近づけないらしい。なんでも、そういう魔法がかけられているのだとか。


 さて、厨二心を活性化させた所で、なんでここに来たのか聞くとしようか。

 俺をここに連れて来たのはキキちゃんだ、流石に何の目的もなく、ココまで来た訳では無いのだろう。


「それで、キキたん、俺達は何故この城に来たんだい?

 ここを俺とキキたんの愛の巣にするのは吝かじゃないけど…流石にリフォームが必要だね♪」


 俺の言葉にキキちゃんがジト目で返す。

 あっはん…新しい属性に目覚めそうダッゼ!!


「…なんで、魔法が使えないなんて嘘をついたのですか?

 私、これでも心配したんですよ? ねぇ、聞いてますか?」


 涙目である。

 ああ、ヤバい、泣かれる…

 そう考えた瞬間、俺は口を開いていた。


「…あー、うん、心配かけてゴメン。

 でも、俺もなんか使えちゃった…て、感じなんだよな。

 だから、あの時俺は嘘を言った訳では無い。何だったら、神様にだって誓ってやる。

 俺もあの場面で初めて、『あれ? 俺、魔法使えるんじゃね?』って、思った訳だし…

 なんか土壇場で自分の隠された能力に目覚めた的な、そんな感じであってだな…」


 俺の言葉にキキちゃんは、沸々と震え出した。

 ああ、コレは大きな噴火の前触れかな?

 そう思った瞬間、先程までの涙目とは違い、怒気を含んだ目で、笑みを浮かべたキキちゃんが現れた。

 え…笑顔なんですか? ああ、ヤバい、そっちのが怖い…


「《雷撃サンダーボルト》撃たれて無傷で、そのまま《雷撃》撃ち返して…

 こんなことまでして、魔法が使えないなんて訳無いですよ!!

 無傷なのは、どう説明するんですか!! 偶々、外れたって言う気ですか!?」


 あー、やっぱり怒ったー

 こうなる事は予想してたんだよな…

 だって、あの現場からずっと無言だったんだぜ?

 いつか、絶対爆発するやん…


 ん? そう言えば確かに俺、あの電撃当たったよな?

 なんで無傷なのだろうか?

 そういえば、あの電撃喰らった後に、なんか同じ様な事が出来そうな気がしたんだよな…

 どういうこっちゃろ?


「第一、なんで、会ったばかりの私のために囮になるなんて考えるんですか!?」

「…………だからだ」

「はぁ? なんか言ったですか?」

「ケモ……だからだ」

「だから、ちゃんと言ってください聞こえないです!」


 俺は大きく息を吸い込み、言ってやた。


「キキたんがケモミミだからだ!!!

 ケモラーの俺としては助けずにはいられなかった!!

 俺は誓ったんだ、あの中学一年の夏の日に、『リアルでケモミミ少女が現れたら、なにがあってもその娘の耳は守る』と…

 だから、だから、だから!!!

 助けたご褒美にモフモフさせてくださいっ!! お願いシャース!!」


 流れに任せて頭を下げた。

 このまま了承してくれれば僥倖。モフモフし放題だ。

 了承してくれなかったら残念だが、口が裂けても『女の子の怯える姿を見ていられなかったから…』とか、主人公補正が付きそうな台詞は、鬼畜系のエロゲが大好きな自分として断じて言えない。

 しかし、了承にしても拒絶にしても、一向に決が下されない…どうしたのだろうか?

 恐る恐る顔を上げると、複雑な表情でワナワナ震えるキキちゃんの姿があった。

 ほんのり頬が赤いきが…あれか!? 走った余波が今頃現れたのか!? まさか、心臓に負担が…


 しかし、そんなことは無かったようだ。

 何故なら俺の視線に気付いたキキちゃんが、元気一杯、俺にビンタをくれたからだ。

 はい、この威力なら心配無いですね。



「ここには《 迷宮の心臓ダンジョン・コア》を探しに来ました」


 右頬に赤い紅葉を咲かせた俺を一瞥しながらキキちゃんは話し出した。


「ふむ、ダンジョン・コアとな?

 何となく想像するに、ダンジョンの…RPGでいう所の迷宮…中心部分ということか?

 ラノベや一次創作の小説などでは、そのコアを手に入れた主人公が迷宮ダンジョンを自分の好きな様に作り替えたりするな。

 そういうアレで間違いないのだろうか?」


 俺の言葉にキキちゃんは首を傾げながら。


「《あーるぴじー》とか、《らのべ》とか意味の分からない単語がありますが、大体その認識で良いです。

 ただ、自分の好きな様に自由に作り替えれる訳では無いですけど」


 キキちゃんは俺の台詞に訂正を入れながら、草が生茂った床に何やら魔法陣を書き始めた。

 ふむ、見た感じ先程見た《魔除けの魔法陣》とは違うようだが…

 今度は一発で成功したらしく、魔法陣から青白い光が溢れ、それが幾つかの形を成し、それぞれが球体にまとまり魔法陣の上に浮遊する。大きさは、10cm程くらいか、それが7つ。

 不思議に眺めていると、キキちゃんが説明をしてくれた。


「使い魔を召喚したのです、この子達に手伝ってもらいます。その方が効率的ですから。

 あ、この子達は《ウィスプ》と呼ばれる下級の妖精ですね。戦闘には不向きですが、探し物を手伝ってくれたり、夜の明かりなど、いろいろと便利に使えます」


 ほほう、使い魔か。

 使い魔といえば、猫とかカラスとかを思い浮かべるが、この世界では違うのかな?

 それにしても…


 ウィスプの一体が俺に近付いて来た。


 うん、良く例えるならデッカいホタル。

 悪く例えるなら、空飛ぶ懐中電灯…

 夜の情事のときなど、『ねぇ、恥ずかしいからウィスプを消して』となるのだろうか?

 まぁ、あれだよな、少し情緒がありすぎるかな?


「それでは、探して来てくださいです」


 キキちゃんがそう言うと、ウィスプ達は各々飛び去った。

 ウィスプが戻って来るまで、果てしなく暇なので、雑談でもしようか。


「なぁ、キキちゃん。なんで、キキちゃんはここにコアがあるって知ってたんだ?

 この城は無人になって長いんだろ?」


 俺の声に、キキちゃんはウィスプの飛び去った方向を確認しながら答えてくれた。


「母が知ってたんですよ。

 母は、先代魔王の城でメイドとして働いていたですから。その関係で、この城に《 迷宮の心臓ダンジョン・コア》があると知ったらしいです」


 ん?おい、待て…メイド、だと?

 その瞬間、脳裏を過ったのは今までやって来た、エロゲの攻略対象メイドキャラの《アへ顔》…

 

 ふむ、メイドとは良いものだ、メイドは素晴らしい、メイドは至高である…触手ともよく合う。


 次に浮かんだのは、キキちゃんのメイド姿…

 尻尾は…どうなるんですかね、グへへ…

 耳ピョコピョコして可愛いのですかね? グへへ…


「気持ち悪いので、こっちを見るの止めて欲しいです」


 道端に転がる犬の糞を見る様な目で見られた。

 だから、新しい扉を開いちゃうよ?


 ウィスプを飛び立たせてから数分。

 戻って来た一体が、なにかしら見つけたらしく、俺達の前で八の字飛行を始めた。


「どうやら、なにか見つけた様ですね。確認しに行くですか」


「ああ、解った」


 他のウィスプが戻って来た時、俺達が居なくて大丈夫かな? と、思ったが。キキちゃん曰く、待たせていても大丈夫だし、自分の居場所へ呼び戻す事も可能らしい。

 ウィスプはかなり入り組んだ道を飛んで行く。

 たく、お前は飛んでるからいいが、後から続く俺とキキちゃんのことも考えて欲しい。

 そんなウィスプは、例の◯もっこりのような魔王の石像の前で八の字飛行を始めた。


「この下になにかあるらしいですね…ちょっと、待っててくださいね」


 そう言うと、キキちゃんは何事か石像を調べ始める。


「魔法的な仕掛けは無いですね

 …ボタンも見当たらないですし…

 単純にこの下になにかあるのですかね?…だとしたら、どうやってこの石像を破壊しましょうか?」


 なにか物騒なことを言っていたので、こういうときのRPGのお決まりを試す事にする。

 調べて駄目なら、押してみな!!


 俺が思いっきり石像を押すと、いとも簡単に石像は動き、今まで石像があった場所の下に大きな木の扉が現れた…ふむ、某《ゼ◯ダの伝説》なら、あの音が流れているな。


 木で出来た扉を開く。

 そこにあったのは延々続く黒い闇。井戸の様なその空洞は真下が見えなくなる程の深さである。

 おそらく地下への入り口なのだろうが…

 この暗黒を降りる為に備え付けられているだろう木製の梯子は、なんとも頼りなかった。

 俺は今一度、地下へと視線を向ける。

 ああ、うん、怖いわこれ…

 次にキキちゃんに視線を向ける。

 わぁ、青い顔してんな、おい…


 俺の視線に気付いたのだろうか?

 こちらを一瞥したキキちゃんは、口元を引き攣らせながら、梯子に足を掛けた。


「な…なにしてるんですか!?

 は、はやく行くですよ? さ、さぁ、怖じ気づいちゃったですか?」


「…キキたんの方が、ビビっとるやん…」

名 前:黒峰真治

ジョブ:魔王

年 齢:18歳

性 別:男性

異 名:紳士、変態

スキル:NO DATA

魔 法:《雷電》《魔除けの魔法陣》《魔除けの結界【B級】》…

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