028話 まぁ、まぁ、落ち着きましょうね?
筋骨隆々の武器屋の店主、男性。
「鬼峰城?……噂は良く聞くが見たことねぇなそんな城。
俺はよ、十数年ここで仕事してるが、そんな城なんて見たたことがねぇぜ? ガセだよ、ガセ。
……つーか、買う気がネェなら出て行ってくれ。こちとら忙しいんだ、シッシッ!!」
金髪碧眼エルフ耳の冒険者、女性。
「ああ、ワタシも聞いたことありますよ。
確か、『入った者は生きては出られない』とか、そんな噂がありますよね。
まぁこの程度の噂話、どこの街にもあるものですよ。
場合によっては、盗賊団が新米冒険者を狩る為に流している場合もあります。貴方達もこう言う噂には気を付けてくださいね?
……所で、君は何をしようとしているのですか? 手をワサワサさせて…不潔な視線をワタシに向けないでください!!」
ザ・女戦士といった出で立ちの女性。
「ああぁ〜、あの噂ねぇ。
あの近くには特に何も無いからねぇ。わたし達も近付かないから、ちょっと解んないなぁ。
でも多分、無いんじゃないかなぁ…そんな城があったら、わたしも知ってるとおもうよぉ?」
皆で街に幾つかある酒場の1つに入り、聞き込みによって得られた情報を集約する。
ようするに…
「ようするに根も葉も無い噂の可能性が高いと言うことが解ったわけですが…」
キキちゃんが落胆の色を隠さずに告げる。
ここ二時間程で聞き込みした情報を集めると、まぁ、そう言うことだよな。
「まぁ、もともとダメ元で来ている所があったからな。仕方ないと思うぜキキたん?
そんなことより思いだしてくれ、あのエルフ美女の耳を!!
まさか、生きてる間にエルフ耳をここまで間近に拝めるとは…しかも美女の!!
嗚呼、人生とは本当に素晴らしい!!」
俺が叫ぶとキキたんが冷ややかな視線を向けて来る。
「また……発作ですか」
キキちゃんは深々と溜め息を吐き、テーブルの上に置かれたジョッキを呷った。
ふむ、飲まないとやってられねぇ!!…といった所だろうか?
まぁ、飲んでるのがシュースな辺り可愛いですな、うん。
ちなみにこの世界には、《お酒は二十歳になってから》みたいな法律は無いらしい。なんとなく成人してから公の場で飲む…みたいなことになってるそうだ。キキ先生の教えによると、この世界の成人は14歳。うん、俺は余裕で成人越えてるね。
しかし俺は生粋の日本人であるため酒は飲まない。
まぁ、アレだよね、二十歳になってから飲むとするよ。
キキたんが飲まないのは単純に飲めないかららしい…本当に可愛い。デロンデロンにしたい。
俺がそんなことを考えながらキキちゃんを見ていると、グレイブさんが喉を唸らせた。なにやら甲冑姿で腕を組み考え事をしているようだ。
ヘルムで表情は見えないがおそらく難しい表情をしていることだろう。
『むぅ……ここまで情報が無いとなると本当にデマとしか考えられませんな。
こんなくだらない噂話に付き合わせてしまって…本当に申し訳ない!!』
テーブルを頭突きで破壊する勢いで頭を下げるグレイブさん…
うむ、相変わらず大げさだね。
…周りのお客も何事かとこっちを見てる。
「別にグレイブさんが気にすることじゃないよ。とりあえずの目的地だったしな。
本当にあったらラッキー、程度にしか考えてなかったしな。気にするな」
「そうですよ!! 別にグレイブさんが悪いわけじゃないですから!!」
『……かたじけない』
俺とキキちゃんに連続フォローでようやく頭を上げたグレイブさん。
まぁ、本当にグレイブさんは悪く無いし、俺も気にしてないんだよな。ここまでの道中、そんなに苦労したわけでもないし…
俺はクロちゃん(人化版)に視線を向ける。クロちゃんは現在、ウサたん(角兎)と戯れていらっしゃる。まぁ、逃げるウサたんを触手で捕まえて遊んでいるだけなのだけど……ウサたん、ドンマイ。
今現在、俺は然程不安を抱えている訳では無い。
クロちゃん強いし。キキちゃん居るし。俺の能力が大体解ったし。キキちゃん可愛いし。ウサたん居るし。グレイブさんも居るし。キキちゃん可愛いし。キキちゃんケモ耳だし。夢の触手が実現する世界だし。触手プレイ見れたし。異世界だし。キキちゃん可愛いし…あれ、キキちゃん可愛いを三回言ったかしら?
まぁ、充実してる。
「シンジ様? 何、ニヤけてるんですか?」
キキちゃんがジト目で睨んできます…ふむ、愛のオーラが滲み出てしまい感付かれたようだ…自重自重。
それにしても…ご機嫌斜めなのでしょうかね?
俺の視線に気付いたキキちゃんはムッとした顔をした。
「……別に怒ってるわけでも、機嫌が悪いわけでもないですよ?
ただ、何事も楽観的に考えていた自分をバカだと思ってただけです。
私は、魔王様に付いて行けばどうにかなる…とか、考えてた甘ちゃんだったんですよ。
事前にもっと下調べしておけばもっと楽に行動出来たのですが……はぁ、後悔しっぱなしです」
自虐的な笑みを浮かべるキキちゃん。
ふむ……悪い空気だな。どうにかしないと……
俺が、どうやってキキちゃんをデレさせれるか?…を、真剣に考えている時に、酒場の奥から言い争う様な叫び声が響いた。
「だ・か・らぁ!! 真剣に聞いてくれよ!!
俺は見たんだよ。あの噂の城をよぉ…本当だって、なぁ? 俺が嘘を付いたことあっか?」
「てめぇ、いつもそんなことほざいてるじゃねぇか!!
俺は、もう手前のことなんざ信じねぇかんな…騙すなら新人の冒険者でも騙すんだな!!」
「くっそ……昔、一緒にパーティー組んだ仲じゃねぇか!!
一、二回騙した程度でグチグチ、グチグチ…漢ならもっと器の広さをだな…」
「……その一、二回で俺がどんな目に遭ったと思ってる?」
視線を向けると2人の中年男性が言い争っている最中だった。
一人はこの酒場の店主だ。今はこのオッサン一人で酒場を切盛りしているみたいだな。ガッシリした体つきと、右目の眼帯がワイルドなナイスガイだ。
もう一人は、ひょろ長い痩せた男。顔色も青白く不健康な印象を受ける。身に纏っている服が白いローブであるため一層顔色の悪さが強調されてるな…店主のオッサンと並ぶことでより貧相にも見える。
青白い男が下卑た笑みを浮かべる。
まるで死神の微笑みだな。俺は死神も女の子なら嬉しい。
「いいぜ、いいぜ、もうお前の所になんざ儲け話を持ってかねぇからな!!」
「手前の話しに乗って儲けれたって話しを聞かねぇな!!」
「あー、あー、あー、そういうこと言うんだ。
二十年来の付き合いも今日でおしまいだな、コノ野郎!!」
「あ、手前!!……いきなり掴み掛かってくんじゃねぇよ!!
いいぜ、相手になってやんよ覚悟しやがれ!!」
いい歳した中年が子供の様な言い争いをした挙げ句、戦闘態勢に移行した。
俺とキキちゃん、グレイブさんは引き攣った笑みを浮かべるしか無かった。呆れて声も出ない感じだ。
店主のオッサンが出刃包丁(の様な包丁)を取り出した所で慌てて止めに入る。
「おい、刃傷沙汰は不味いだろ!! オッサン達落ち着けって。
キキちゃんと俺で青白い方、グレイブさんはそっち抑えて!!」
『了解しました』
「仕方ないですね」
3人で手分けして2人を押さえ込む。
目の前で流血事件なんか起きたら夢見が悪くなるからな。
しかし、この中年…なおも抵抗を続けやがる。
「おい、手前等も野郎の仲間かっ!!
手前等も俺の話しを信じないんだろうがコノ野郎!!」
青白い方は口から酒の臭いを放出しながら叫び出した。
店主の方はグレイブさんが上手く止めており、早くも冷静さを取り戻しつつあるようだが…
「おい!! このクソ野郎!! 出て来いや、それでも玉付いてんのか!!」
「……あのクズ、やっぱり殺して」
『落ち着きなさい、おちついて!!』
この青白が煽るからあっちも怒りが治まりきらないようだ。
ふむ、仕方ないな…
「クロちゃん!! 悪いけどこの青白いのやっちゃってください!!!」
「ん、わかった………はい、出て来て!!」
その後、お馴染みの黒触手が現れ、青白い中年男を束縛プレイ……
見るに耐えない情景だったので割愛します。




