021話 金銭感覚…おかしいですよね?
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翌日、俺達は直に旅の準備に取りかかった。
グレイブさんの話しによると、ここから徒歩で《プエルト大街》を目指すとしたら、通常、道中に現れる魔物の関係で2日以上は掛かるらしい。
とはいえ、そんな道中の食料も、代えの服も持ち合わせていない俺達である。早急な準備が必要だった。
それらを揃える為に、俺達は村にある《商人組合》の支部に来ている。
かなり大きな建物で3階建て、一階は銀行の様になっており、幾人もの職員が忙しなく動き回っている。一方で、部屋の片隅にはガラクタの様な物を積み上げた老人がおり、その老人の前には大勢の冒険者が並んでいる…カリスマ占い師かなにかだろうか?
グレイブさんに聞いて見ると、アレが例の換金所のオヤジか…
置き引き犯と手を組んでたらしいし、一発殴ってやろうか?
そう思って見ていると、グレイブさんに釘を刺された。
止めとけ…とのことだ。釈然としないが、グレイブさんの声色が本気だった為、今は止めておこう。
建物に入ると、キキちゃんは直に受付の女性(金髪碧眼、エルフ耳、貧乳、目は切れ長、眼鏡属性…総合評価B+)に話しかけ、何冊かカタログの様な物を貰って来た…否、カタログだった。
通販でもするのだろうか?
そのカタログを、俺とグレイブさんに一冊ずつ手渡してくれる。
因みに、キキちゃんはレザーアーマー、グレイブさんの格好は甲冑姿で、クロちゃんは人化した姿で俺の背後に隠れている。
「グレイブさんは、とりあえず旅の必需品を見繕ってほしいです。予算はコレくらいで…」
グレイブさんに、紙を手渡しながらキキちゃんは言う。
手渡されたグレイブさんは、その額面を見て驚いた声を発した。
『うむ……キキ殿? 拙者達は別に山を越えるわけでも、砂漠を横断するわけでも、迷宮に潜るわけでもないのですぞ? コレの10分の1の軍資金で十分でしょうな…』
…どれほどの金額を提示したのだろうか?
グレイブさんが苦笑いを浮かべている。
キキちゃんも、キキちゃんで、驚いてらっしゃるし…
「えっ!!…そうなのですか!?
えーと、すいません、ちょっと金銭感覚鈍くて…じゃ、じゃあ、グレイブさんの思う様に買って来て欲しいです。お願いします」
慌てた様子でそう言って頭を下げた。グレイブさんはそれに頷いて答える。
ふむ…キキちゃんはもしかして、お金持ちのお嬢様かなにかかなのだろうか?
ケモミミ+お嬢様って…盛るね。好きですよそういうの♪
さて、二人は既にカタログに目を落としてらっしゃる。
よく見ると、俺達の他にもカタログを広げて何事か思案している人が何人も居た。
ふむ、コレは通販ブーム来てるな。
試しにパラパラと捲ってみる、俺の後ろからクロちゃんが覗いて来た。可愛い。
カタログの中には本当に様々な物が載っていた。
写真…ではないな、絵だろうか?…で、実に様々な商品が紹介されている。
鍋や包丁、服や食料品、武器や防具、薬や遊具…大人の玩具に至るまで本当に様々な物がある。
あるページで見覚えのあるヤツを見つけて魅入ってしまった。
あのカマキリだ…デカいカマキリが載ってる。それ以外にも魔物らしい生物が載っていた。ふむ、魔物も売り買いされているのか…
興味深く眺めていると、キキちゃんに声を掛けられた。
「なにをしているのですか?
シンジ様はとりあえず、自分の服を見繕ってほしいです。その服装もカッコイイのですが、如何せん目立つですからね…お金はありますので、自分に似合いそうな動き易い服を見つけておいてほしいです。
他の必需品は私とグレイブさんで注文しますから」
それに俺は首を左右に振ってそのまま疑問を口にする。
「この世界の一般的な服装が解らなくてね。
つーか、コレは何のカタログなんだ? 通販でもするのか?」
俺の声にキキちゃんは申し訳無さそうに頷いてみせた。
「そうですよね、説明不足でした。申し訳ないです。
そのカタログで注文した商品を受付の人に伝えると、奥から商品を持って来てくれるです、後はその場で金銭と交換するのがここのシステムです。
そうですね、では、私がシンジ様に似合いそうな服を幾つか選びたいと思です。その中で決めてもらうと言うことで…よろしいでしょうか?」
ふむ、女子に服を選んでもらうなど…初めての経験なのだが?
うん、選んでもらおう。
選んでもらった服を後生大事にしよう。うん。
「じゃあ、お願いする。頼むぜ、キキたん」
俺が了承すると、キキちゃんは服のページを捲って俺へと見せてくれた。
その際、キキちゃんは凄く密着して、ケモ耳がこそばゆくって、良い匂いがして…幸せだ。至福である。
俺はこの瞬間の為に生きていた…そうに違いない。
俺は至高の時間を愉しんだ。
■
「…うん、ごめんなさい、キキちゃん。
この服は…俺の高校の制服より目立つと思うんだ。
しかも、コレ……この世界の物の相場が解らないから何とも言えないけど……ゼロの数が多過ぎやしませんでしたかね?
ざっと数えただけでも5個連なっていた気がするのですが…気のせいですかね?
気のせいじゃ無いとしたら、キキちゃんアレですよ? 俺に無駄遣いのことを言えませんよ?」
そんなことを長々と呟くと、服の調整をしてくれている茶髪の少女が苦笑いを浮かべた。
俺は現在、建物の二階に設けられた更衣室で、実際に着て受け渡し前の最終調整をしてもらっている。担当してくれているのは、なんと、酒場でグレイブさんとお姉さんが助けた茶髪の少女だ。
俺は、そこに運命的な物を感じてしまったのですが…やはり、俺のことは知らないデスヨネー
少女は、一番最初に俺に付いて来てくれたグレイブさんに何度も御礼を言っていた。
……その間、俺はボッチです。はい。
ちなみに、キキちゃんとクロちゃんは、下で他の荷物を受け取ってくれている。
さて、調整も終わって、そのまま鏡の前に立つ。
そこに立っていたのは、何と言いますか…ちょっと厨二を拗らせた男子高校生でした。
黒を基調とした…否、黒一色のコートに、これまた黒一色のパンツ、インナーも黒だから、コートの下に装備された胸当ての白さが痛くてたまらない。しかも、なんとこの胸当て、《†》みたいな模様が所々に施されており、厨二臭さを倍増している。
…これは何かのブランドのマークなのだろうか? 手甲やレッグガードも似た様なマークのある、似た様なデザインだし…俺はこのブランドを一生恨むかもしれない。
さらに、美しい意匠の短剣が二振り(髑髏がなぁ、髑髏がなぁ…)、刀身の長い長剣が一振り(コッチのデザインは比較的抑えめ)、振れもしないのに装備される。
この3振りは、一応、身を守る為に、キキちゃんが使い易いのを選んでくれたそうだ。
…と、言いつつ、グレイブさんに確認すると。
『ふむ、なかなかの業物ですな…』
…とのことだ。勘弁して欲しい。
しかも短剣2つには、特殊な能力が付いているとのこと。
かなり、お高いのでしょう? はい、お高いです。
カタログを覗き見た所、この1振りだけでゼロが5個…
はい、お気付きですね?
今回の買い物…俺の防具を揃えるだけで何十万か掛かってます。
もしかしたら、百…いってるかもしれません。
完成された厨二病スタイルの俺を見て、調整してくれた少女は…
「わぁ、すっごくお似合いですよ!!
まるで、昔話に出て来る魔王様みたいですぅ!!」…と言い。
グレイブさんは…
『うむ、流石は我が主。
まるで、地獄の淵から這い出て来た修羅の者を思わせる禍々しい威風ですな!!』…と、言ってくれた。
質が悪いのは、二人とも、それが心からの言葉だと言うことだ。
そう、この世界ではこの格好がカッコイイで通るらしい。
一階に降りて、キキちゃんと、クロちゃんにお披露目すると…
「はい、やっぱりカッコ良いです、シンジ様!!
私の見立てに間違いは無かったですね♪」
「しんじ、かっこいい、まおうさま、みたい、カッコイイ!!」
…とのことだ。
こうして準備を終えた俺達は、この後、村を去るのだけど…
この格好恥ずかしくって、羞恥プレイに目覚めそうです。




