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020話 とりあえず目指す城が決まったようですぜ?

「ふむ、では当面の目標はどうしますかな?」

 

 グレイブさん声に反応したのはキキちゃんだ。

 キキちゃんは、一回咳払いをした後に話し出す。


「そうですね、そこなのです。

 シンジ様は現在、《 迷宮の心臓ダンジョン・コア》を持っておられますから。それをつかって、新しいダンジョンを作るべきだと思うのです…しかし、その為には《 迷宮の心臓ダンジョン・コア》を効率良く利用出来る場所を探さねばなりません」


「ふむ、成る程、《 迷宮の心臓ダンジョン・コア》ですか。

 その様なレアアイテムを既に手中に収めているとは…流石の一言ですな。

 と、いうことは、問題は《魔導領域キャパシティー》ですかな?

 だとすると、魔王の名に恥じない、相応の格を持つ場所でなければなりませんな…」


 グレイブさんの返答にキキちゃんは驚きの表情を浮かべた。

 ん、どうしたのだろうか?


「グ、グレイブさん、空間魔法か《 迷宮の心臓ダンジョン・コア》の知識がおありなのですか!?」


 キキちゃんの驚きの声にグレイブさんは気恥ずかしそうな表情で答えた。


「いやいや、素人の知識ですよ。拙者は武者修行の旅を続けておりました故…いろいろと、見聞きし、見識を広める機会が多かったのですからな。広く浅くと言った所ですな。

 《 迷宮の心臓ダンジョン・コア》に関しては、昔、詳しい者と仕事をしたことがある…程度ですな」


 ふむ、流石はグレイブさんだな。

 強くて、カッコ良くて、知識も豊富とは…もう、最強のオークさんだと思います。

 やはり、俺の知ってるオークでは無いんだよな…

 …と、そんなことを膝の上で寝息を発し出したクロちゃんの頭を撫でながら思うのである。

 俺には、《 迷宮の心臓ダンジョン・コア》の知識も、魔法の知識も、この辺りの土地勘も、全くないからな。話しに入って行けないのだ。

 拗ねてなどない。


 グレイブさんの返答にキキちゃんは羨望の眼差しを向けていた。


「…すごいです!!

 グレイブさんは、様々な知識をお持ちなのですね…私には座学での知識しかありませんから、本当にすごいと思います」


 あ、目がキラキラしてる…いいなぁ、羨望の眼差し、いいなぁ。

 ……俺には絶対向けられないもんね!!! 悔しくなんてないもんね!!

 話しに入って行けなくて、寂しくなんてないんだからねっ!!! 拗ねてないもんね!!


「いえいえ、拙者は基本的に武道一筋ですからな。

 広い知識を持っていたとしても、宝の持ち腐れなのですよ。

 それに専門知識を持つ方には劣りますからな…座学は大事ですよ、本当」


 なにか感慨深そうに頷くグレイブさん。

 まぁ、確かに座学は大事だと思うよ、うん。

 俺なんか、テストでは毎回学年最下位だったしさ…あ、そうでもないのか、毎回チキンレースしてたヤツが居たな。変なもので、今になって元の世界のことを思う。

 ちょっと、ノスタルジックな気分だ…変な所で引き金を引いてしまったな。苦笑い。


「さて、グレイブさんの言う通り、相応の格のある場所を迷宮化させたいわけです。

 私の個人的な要望をいうなら、魔王の名に恥じない城か砦が良いのですが…第一候補が崩れてしまいましたからね。まぁ、もう既に倒壊寸前でしたが…」


 と言いつつ、キキちゃんに睨まれた。


「む、その第一候補とは、俺が止めを刺した《シュバルツ・ヴァルト城》のことですか?

 まぁ、あの城は何もしなくても崩壊したと思うけど…止めを刺したことに関してはちゃんと反省してますです、はい。ちゃんと反省はしてますからね…もう屋内では《雷電サンダーボルト》放ちませんから。

 ………多分。」


 《シュバルツ・ヴァルト城》の名前が出た所で、グレイブさんは驚きの表情を浮かべた。そして、俺とキキちゃんを交互に見て、口元を引き攣らせる。


「あの…《シュバルツ・ヴァルト城》が崩れたのですか? 流石…シンジ殿、ですな…」


 あ、ちょっと引いてませんか? グレイブさん?

 数秒の沈黙の後、グレイブさんは咳払いをして話し出す。


「ま…まぁ、古い城らしかったですからな。壊れてもオカシクないですな。

 …所で、提案なのだが。シンジ殿、キキ殿、《鬼峰城きほうじょう》と呼ばれる城をご存知か?」


「きほうじょう? なんでだそれ、城の名前か?」


 俺は即答した。

 この世界の城の名前など知ってるわけないからな!!

 全部、初耳ですよ、はい。

 キキちゃんも少し考えた後…


「聞いたことないですね。城…の名前なのでしょうが」


 と、答えた。

 俺とキキちゃんの反応に満足そうに頷いた後、グレイブさんは口を開く。


「まぁ、知っていなくても無理はないですな。

 知る人ぞ知る城ですから…では、城の説明をさせて頂いてもよろしいですかな?」


 俺とキキちゃんは顔を見合わせ、頷き合う。

 とりあえず、話しを聞いてみないことには始まらない。


「ああ、教えてくれ」


 俺が言うとグレイブさんは語り出した。



「その昔…と、言っても100年と少し前なのですがな。

 まだ、先代魔王様がご存命の時…まだ、世界統一の旗を掲げる前の話しですな。

 この終幕の地が面する海………《南魔洋》の海岸沿いに、大きな城塞を建設する計画が持ち上がっていたそうです。まぁ、当時の《南魔洋》は《海魔連合国》と《海神公国》とが争ってましたからな。国防の意味合いからして無難な措置といえるでしょう」


 《海魔連合国》?《海神公国》?…分け解らん。国の名前でしょうか?

 おそらくハテナが浮かんでいたのだろうな…キキちゃんが教えてくれた。


「南魔洋は、《終幕の地》が面する海のことです。魔界は大陸を囲む海を東西南北で分けて読んでいます。

 《南魔洋》は…南の海ということですね。

 その4つの海ですが、《東魔洋》と《西魔洋》には海を生活の拠点とする種族が多く住んでおり。その海を統治する国もあります。

 《東魔洋》は《海魔族》が多く住むため、彼等が統治する《海魔連合国》が…

 《西魔洋》は《人魚族》が多く住むため、海神を信仰する《海神公国》が統治していますね」


「ほほう、人魚とな?

 人魚とは…あれですかな?

 貝を水着にしている、美女が多い種族のことですかな?

 何も頑張らなくても、合法的に白い肌を見ることの出来る種族ですよね!?

 海で溺れてたら、マウス・ツー・マウスしてくれる種族ですよね!?」


 あ…キキちゃん、ゴミを見る様な視線、ありがとう御座います!!

 ちょっと、気持ち良くなってきました、最高です!!

 黙って待っててくれてるグレイブさんも、苦笑いアザっす。

 

「とりあえず、シンジ様は人魚族の方々に謝ってください。

 後、間違っても、海で溺れないでくださいね? 人魚族の方々に失礼ですから」


 こ、こ…言葉責めってやつですね!! …もっと、ちゃんと罵ってほしいです。

 わー、素晴らしい、コレは素晴らしい!! 今まで、俺は《S》だと思ってたけど、もしかしたら《M》でもいけるかも知れない。新しい扉開いちゃったかもしれない!!

 

「すまん、シンジ殿、続けてよいだろうか?」


 グレイブさんが促して来た。

 うん、話し進めようかな。目覚めるのは今で無くても良い。うん、後で目覚めよう。

 キキちゃんのジト目はそのままだが、グレイブさんの話しが再開した。


「それで、ですな。そのとき建設を予定されていたのが、今で言う《プエルト港》の北にある岬らしいのですが…あ、シンジ殿、プエルト港とは魔王領西にある《終幕の地》最大の港のことです。その港がある街は《プエルト大街》と呼ばれておりますな」


 ふむ、最後の解説ありがとう。

 プエルト港とか言われて、それ何処?…って、なったからな。

 そういえば、ちょっと前に大きな街道を西に進めば大きな港町に着くって言ってたな…ソコか!!

 一人納得する俺である。

 その俺の納得顔を見て、グレイブさんは説明を再開した。


「ですが、城塞の建設は途中で頓挫したそうです。

 理由は諸説語られておりますな。土地が悪かったなど、亡霊がでたなど、本当に様々です。まぁ、根も葉もない噂ですな。本当の所はわからんそうです…

 しかし、建設途中の城はそのまま放置されているらしく、その名も《鬼峰城》と決まっている所を見るに…何かあると考えざる終えませんな。

 因みに、城塞自体は違う場所に、今の《プエルト城》が建設されたそうです」


 その話しを聞いて、キキちゃんは首を傾げている。

 

「やはり、そんな話し…母から聞いたこともないですね…」


 ふむ、どうやらキキちゃんは知らないらしいな。

 まぁ…キキちゃんが知らないこともあるだろうが…何か引っ掛かるんだよな。

 別にグレイブさんを怪しんでいる訳では無いが…もしやコレが、胸騒ぎと言うヤツか?


「拙者は、その建設途中の《鬼峰城》を候補に提案させて頂きます。

 現在、管理者はいないらしいですし、比較的簡単に手中に収めることが出来ると思いますぞ?まぁ、荒れ具合いは解らないため…もしかしたら既に廃墟やもしれんしな

 拙者も噂だけで実物を見たことはないのです」


 俺は三人を見た。

 キキちゃんは首を傾げ、グレイブさんは腕組みして応答を待っている、クロちゃんはいつの間にか起きていたらしく大人しく話しを聞いていた。

 さて…このまま目標も無く彷徨っても意味は無いな。

 だとするなら、いわくつきの城だろうと行ってみる価値はありそうに思う。

 キキちゃんを見る、キキちゃんは…頷いてくれた。

 なら、もう、クロちゃんの応えを聞いたら決定だな。

 

「クロちゃんはどうしたい? 鬼峰城とやらに行って見るかい?」


 俺が問うと、クロちゃんはコックリと頷いた。


「あたしは、キキと、しんじに、ついていく…よ?

 だって、いっしょにいたら、たのしい、もん!!」


 ふむ、この短時間にやけに懐かれたものだ。

 可愛いなもう、これが親心というやつか!!…少し違うか。

 まぁ、満場一致なら文句ないよな。


「そうか、楽しいか…それは大事だよな。

 うん、行こう。幽霊城だろうが、欠陥住宅だろうが、行って確かめればいいんだよな。

 それに、みんなで海って……なんか萌えるよな!!! イベントの臭いしかしない」


 こうして俺達は《鬼峰城》を目指すこととなった。

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