018話 まぁ、顔を隠すのも程々にね?
さて…キキちゃんが部屋から出て来てくれないので、自室で時間を潰すとしましょうか。
とはいえ、グレイブさんは上機嫌な鼻歌を奏で、甲冑の整備をしているため邪魔しづらい。何て言う名前の曲だろうか? なにか懐かしさを感じさせるメロディである。まぁ、いいや、心地いいから放置しよう。
外に出て暇を潰そうか? 否、止めておこう。迷子になりそうで怖い。
キキちゃんも時間が経てば機嫌を直してくれるだろう。やっぱり怒ってるんだろうしな…
羞恥に震える姿を思いだす。
ヤバい、俺のセンサーが反応して来た。
自重しろ、自重…
よし、まず反省をしよう。俺にはそれが足りない。
何故、キキちゃんのご機嫌が斜めになってしまったのか?
俺触手が暴走して、キキちゃんをヌルウネ束縛し、その結果、ちょっとエロい姿で村を歩くこととなったからだ…ヤバい、俺は何から反省すれば良いのだろうか?
やはり…ことの発端を作った俺触手についてだな。
なら、どうずるべきか? 今回の失敗を次回への教訓とし、早く制御出来る様にしたい。
それは触手以外の他の魔法も同様だ。《雷電》とか威力高過ぎなのだ。
さて…まず考える。
俺が魔法を使えるのは、いつの間にか身に付けたチート能力によって、コピーした魔法を感覚的に扱うことが出来るからだ。コピーした魔法に関しては、ある程度の予備知識も得られるようだが、如何せん感覚的に使ってるため根本的に魔力やら魔法やらが解ってない為、どうしようもない。
さて、どうするべきか?
…魔法の知識を整理してみるか。
もしかしたらヒントがあるかもしれないし、そろそろ、自分の能力も把握したい。
俺は1つひとつの魔法の知識を、脳内で整理し始めた。
《雷電》
魔力を雷撃に変え発射する魔法。
翠蛇が放った魔法で、多分それをコピーしたんだと思う。
そのとき当たったにも関わらず、何故か無傷だったんだよな…俺の能力が起因しているのだろうか?
知識によると、電圧と出力は魔力制御とやらで操ることが可能…しかし、俺の場合は感覚的に使ってるため、常に高電圧・高出力となっている。
いままでコイツを喰らって無事だったヤツはいない。絶対に人に向けて撃ってはダメ、ゼッタイ。
後、何故か無詠唱で放てる。
……もうちょっと使うの自重しようかしら?
《突風砲》
風属性の初級魔法。
酒場で三馬鹿トリオの一角・チビが放った魔法。
俺はそれを複数詠唱と一緒にコピーしたと思われる。
魔力制御によって、弾丸の大きさと威力、そして命中精度もある程度決まる模様…場合によっては、相手を追尾するように魔力で制御する事も可能らしい。俺には無理。
まだ使ったことは無いが、チビの使ってた感じを見るに…ちょっと危なそうではある。
《魔除けの魔法陣》
コレは魔法陣の書き方だけ解る。魔力の流し方…発動のさせかたも一応知っているみたいだけど、よく解らない所が多い。
何処でコピーしたのか不明…多分、キキちゃんが翠蛇から逃げてる時に使ったときだと思うが…保留だな。
《魔除けの結界》の【B級】と【C級】…
全く身に覚えが無い。ただ、儀式的な方法で発動する魔法であり、使う道具の知識もある。
多分、道具さえ揃えば発動出来る。
まぁ、保留。
《狂乱の宴》
触手を生み出す夢の魔法。おそらくクロちゃんが使ってたのをコピーした。
多数の触手を出してる際は、何故か身体がダルくなる。理由は不明。それについての知識は感覚的過ぎて解らない。クロちゃんに聞こうと思う。
また、肉欲のまま暴走するため、使用は控えた方が良い……解ってるのだけど、男のロマンだしさ? 使うなって言われたら使いたくなる。
これも魔力で制御可能らしい。魔力制御しないとな…
また、俺触手が現れると、高確率でキキちゃんが触手によって束縛される。眼福。
《複数詠唱》
魔法陣系の魔法。チビの使ってたのをコピーしたと思われる。
知識では小難しく記憶されているが、端的に言うと、魔法陣の上で発動させた魔法を任意の回数分ほぼ同時に発動させることの出来る魔法らしい。その際、二個目以降の魔法の詠唱は短縮される。ただ、魔力は回数分持っていかれる。
使い手を選ぶ魔法だと思うが、十分凄い魔法だと思う。
まぁ、任意の回数指定の所でやはり魔力制御が必要らしく、今の俺が使ったら大変なことになることは眼に見えている。
魔除けの魔法陣ほど、発動に魔力を必要としないのか、それとも魔法陣の構造自体が違うのか謎だが。複数にしたい魔法を詠唱した後に発動を唱えるだけで発動する。
《空間魔法》《創造魔法》《消去魔法》《魔力走査魔法》
知識はある。知識はあるのだけど…理解出来ない魔法。多分、発動する事も可能だが絶対に失敗する。
よく解らない、今の段階では使えないと言う所だろうか?
コピーしたのは、おそらく…《 迷宮の心臓》に触れたとき。そういえば、《 迷宮の心臓》の中にはルルちゃんが居るのだったな…また、発動させれば出て来てくれるだろうか? そのときに聞いてみるのもいいかもしれない。
空間魔法とか絶対に強いだろうし…
……これくらいか?
全体的に《魔力制御》なるものが重用だと言うことが解った。
それが出来てないから、俺の魔法は暴走するのだ。
さっさと制御出来る様にしないと、触手でキキちゃんに愛想を尽かされかねない。
由々しき事態である。
後、俺の能力でも幾つか解ったことがある…
まず1つ。俺の能力は、俺が触れたことのある魔法を確実にコピーしている。
《雷電》・《突風砲》・《狂乱の宴》…と、いった所だな。それ以外の魔法も、触れる機会のあった魔法だと思う。もしかしたら触っていたのかもしれない。
逆に触れてない魔法はコピーしてない。キキちゃんの《炎矢》や《風刃》などは、見ては居るがコピーしてない。これはつまり、俺のコピー能力は写◯眼や複◯眼のように見た技をコピーするスキルでないということだ。
次に、俺の触れた魔法は少なくとも一回だけ無力化されていること。
コレは《雷電》を喰らったとき無傷だったこと。《突風砲》を喰らった際、魔法が消えたことを思い出しそう推測した。
最初は、《幻想◯し》みたく異能の力を消し続けられるのか?…とも思ったがそうでない。
それは黒触手が証明している。
黒触手は最初の一回触れたときは消えたが、それ以降は俺を束縛することも可能で消えなかった。
それらを踏まえると俺の能力はこうなる。
・自分が触れた魔法をコピーする(例外があるのかもしれない為、未確定)。
・触れた魔法は最初の一回だけ、コピーすると同時に打ち消せる(これについても不確定要素が多い)。
・コピーしたとしても使えない魔法がある。
…といった具合か。
まだ解らないことが多過ぎるな。
こういうのって、最初に美人の女神様が出て来て説明してくれるものじゃないの?
俺の女神様はシャイなのかな? 出て来てくれても良いと思う。
まぁ、これだけ解ればいいか。
前にも考えたことだが、俺は別に《俺TUEE》とか好き勝手したい訳では無い。
だから別に、自分の能力が強かろうが弱かろうがどうでも良いのだ。
まぁ、今の段階では便利に使わせてもらってる。
あれだな…女の子が困ってる時に、敵を打ち倒せるだけの力があるのは有り難い。
さて、これ以上一人で考えても不毛かな?
そう思って部屋の窓をみると、あら、やだ…夕方じゃないっすか。
…そもそも、俺から謝りに行くのが礼儀じゃね?
そう思い立ち上がった瞬間だった。
部屋のドアが叩かれたのである。
音に反応したグレイブさんが立ち上がりドアを開いた。
「ん?…君は誰かな? 迷子か?
シンジ殿、見知らぬ娘が訊ねて参りました」
「???…な、なんで、ぶたさん、ここにいるの? ここ、しんじと、大きいひとのへや、だよ?
へんな…ひと? しんじ、こわい、たすけて」
片方の声はグレイブさん、もう片方はクロちゃんの声であった。
不思議に思いそちらを見る、二人ともさっき面識あるじゃないですか。
見て気付いた。成る程と…
グレイブさんは甲冑を着ておらず、勿論、ヘルムも被っていない。
クロちゃんは魔人化し、黒髪少女の姿だ。
確か、この状態では二人とも面識ないな…
部屋に入って来て俺の後ろに隠れグレイブに警戒心剥き出しの視線を向けるクロちゃんと、オロオロするグレイブさん…
それを見て、笑いがこみ上げて来るシンジであった。




