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016話 わざとじゃ無いっすよ?

 さて、触手リベンジ戦だ。

 逞しく大きな濃い紫色の触手が俺触手(俺の触手の略)。俺触手より細いが、鞭の様にしなやかで種類も豊富な黒色の触手が黒触手(クロちゃんの触手の略)だ。

 触手同士の夢の大戦ではあるが、今回の勝負は俺触手の勝ちのようである。

 黒触手の動きが繊細さを欠いたのだ。あの搦め捕る様な美しい動きが無かったのだ。

 故に、力押しで蹂躙する俺触手に押し負けている。理由はおそらく…


『あわ、あわわわわ…』


 クロちゃんがパニクってるからだろうな。たしか魔力で制御してるとか言ってたし。

 今の黒触手は、無差別に振るわれる鞭のようだ。コレなら最終的に俺触手が押し勝つだろう。

 とはいえ、長期戦になりそうだな…さっさと、蹴りをつけるべきか。

 しかし、何故か知らんが触手出してるときは身体が重いんだよな…多分だがコレは、触手を多く出してるためだと、なんとなく思う。この魔法の知識はあるが、如何せん、その知識が感覚的で困る。

 例えるなら、説明書が『アレをアレして』とか『ドーンみたいな感じで』とかで書かれている感じだ。

 何故だろうか? 他の魔法はそんなことは一応無いのだけど。

 まぁ、いいか…今度、使い方はクロちゃんに聞こう。

 

 そのクロちゃん救出は、キキちゃんに手伝ってもらうかしら?

 どちらにせよ、今の俺が動くと直に黒触手に捕まりそうだ。


「キキたん、グレイブさんと一緒にクロちゃんを捕まえてくれ!!

 そして、ついでに魔法陣も破壊してくれれば助かる。それで、止まる筈だから!!」


「解りました、グレイブさんお願いするです」

『相、わかった。まかされよ』


 返事をした二人は、取り押さえた置き引き犯を置き去りに駆け出した。グレイブさんを盾に後ろからキキちゃんが続く感じだ。迫り来る黒触手をグレイブさんが抑えている。

 しかし、手数が多いのが触手の利点である…徐々に、グレイブさんも無手では捌き切れなくなっていた。

 そう、彼はこの場においても無手であった。


『ふむ、流石に獲物無しではキツいな…仕方ない。キキ殿、少し後ろに下がってくださらぬか?

 獲物を取り出す故…』

「!?…わかりました、頑張ってください」


 む…グレイブさんが武器を取り出すだと!? 何処から??

 謎である…グレイブさんは甲冑以外に何も持っていないのだ。それなのに何処から武器を取り出すというのだろうか? まさか、『四次元◯ケット』でもあるのだろうか? そこから、武器を取り出すのか…素晴らしいな!!


 しかし、勿論、そうではないらしい。

 グレイブさんはキキちゃんが後ろに下がったのを確認したあと、触手を去なしながらその詠唱を始めた。


『大地よ、その怒りを槍に変え貫け!!《大地の槍アース・ランス》!!』


 詠唱を終えると、グレイブさんの目前の地面に茶色の魔法陣が浮かび地面が盛り上がり、一瞬後に地面からそれが突き出た。

 それは、土で出来た巨大な槍である。土で出来たそれは、3〜4mはありそうな程に長い。

 形状は、グレイブさんの甲冑姿に似つかわしいランス状である。

 モン◯ンのランス(槍)を思いだした。あれと似た感じだ。


 しかし突き出たそれは触手を貫くことはなかった。ただ、そこにそびえ立っている状態である。

 昔やったRPGにも似た魔法があった、あれ、当てるの難しいんだよな…


 グレイブさんは、その土製の槍に近付くと、迷うこと無く根元をへし折った。

 そして、さも当然の如くそれを三回素振りした後、構えてみせる…


 え…グレイブさんの武器ってそれですか?

 キキちゃんを見ると、俺と同じで驚いた視線をグレイブさんに向けている。

 その視線に気付いたらしいグレイブさんは、申し訳無さそうな声を発した。


『……武者修行の旅を続ける身としては、出来るだけ旅費の節約をせねばならんかったからな。

 それに豚人族と言うだけで、なにかと因縁を付けられることも多く、物を盗られることも多かったからな…だから、出来るだけ盗まれそうな高価な物は持ち歩かぬようにしているのだ。

 そこで武器も、こうやって即興で作ることが多くなった。

 シンジ殿の仲間としては些か頼りないかもしれぬな…

 ちゃんとした槍を持った方がよければ言ってくれ、用意しよう。

 とりあえず、今はこれで活路を開くキキ殿、進んでくれ』

 

 えーと…多分だけど、グレイブさんは、かなりぶっ飛んだことしてると思うんですけどね。

 いや、まぁ、この世界の常識に疎いからよく解らんけども…

 キキちゃんを見る、キキちゃんは神妙な顔付で頷きながら、しかし視線はグレイブさんの槍を見ていた。そして呟いたのだ。


「魔法で作ってそのまま振るうとか……滅茶苦茶ですね」

 

 ふむ、キキちゃんいわく滅茶苦茶なことらしい。

 なら俺の認識はあながち間違ってないのかもな。

 

 そんなことを考えながら見ていると、丁度、ランスを持ったグレイブに黒触手が迫って来た。

 それを軽く払うグレイブさん…槍を持ったグレイブさんは強かった。

 その土の槍から繰り出されるのは変幻自在の妙技…素人目でも黒触手が軽くあしらわれているのが解る。うん、とんでもない達人と言うことだけは解った。

 だから声を高らかに言いたい。

 グレイブさん…本当に俺なんかが主で良いのですか!?

 

 グレイブさんが触手を払うのに乗じてキキちゃんが飛び出した。

 改めて見るがキキちゃんの動きは速い。

 やはりコレは種族の差なのだろうか? たまに常人離れした速さで動くことがある。

 《翠蛇グリーンスネーク》から逃げてたときは、かなりグロッキーだったが、アレは俺を引き摺りながら走っていたからだろう。本来はかなり速いと見ている。

 でも、簡単に触手や蛇に捕まっちゃう所を見るに…ちょっと、ドジなのかもしれない。


 しかし、今回は黒触手に捕まること無く駆け切った。

 そして、オロオロと震えるクロちゃんを優しく抱き寄せ、腰の剣を引き抜いて黒触手の魔法陣に突き刺した。その瞬間、魔法陣は消え去り、黒触手も徐々に霧散して行く…

 よし、これで一件落着…と、俺が気を抜いた瞬間であった。


「え!?……なんで、ですかぁああ!!!…いや!!…ひゃめて、くだしゃい!!

 も、もう!! 怒りまひゅよ!!…きゃあああ!!」


 キキちゃんの悲鳴と共に、俺触手によるキキちゃん拘束プレイが開始されたのである。それはまさに、電光石火の動きであった。

 

 よっしゃぁあ、よくやった俺触手ぅう!!

 勿論、俺は歓喜である。

 

 眼福です…眼福ですよ、うん。

 ちらりと、グレイブさんを見る…

 後ろを向いて目を逸らしているように見えますが、気付いてますよ?

 チラチラ見てますよね?

 そうですか、そうですか…グレイブさん、もとい、同士グレイブも触手はいける口ですか…

 ムフフ…触手って良い物ですよね。素晴らしい、至高です。


 あ、あれ?…ちょ、ちょっと待って俺触手!!

 なんで魔の手をグレイブにも伸ばしてんの!?

 ぐ、グレイブも後ろ向いてないで気付いてくれ!! じゃないと大変なことに…あーーー、やっちまった…

 あ…気付けば、置き引き犯にも伸ばして…否、置き引き犯は既に触手プレイに移行してる様に見え…


「………」


 俺は俺触手の魔法陣に無言で掌を向けた。

 そして、血の涙を流しながら叫ぶのである。


「……《雷電サンダーボルト》!!!」


 激しい雷撃が一瞬にして魔法陣を消し去った。

 それによって触手は霧散し、解放される各々方…

 くそ………俺には、俺には無理だったんだ…


 中年のオッサンの触手プレイと、甲冑のオークの触手プレイを目の当たりにするのは…俺には耐えれなかったんだ!!!

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