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012話 さて、見せてくれるかな?

 さて、結果的に助けてしまった訳だけど、どうしよう?……実はこの後、ノープランなんだけど…


 恐ろしい沈黙…

 今はまだ、観客も三人組も、俺の登場と突然消えた魔法に驚いている様子だが、三人組が正気に戻って切り掛かって来たら…俺、死ぬんじゃないかな?

 マジか、こんな所で死ぬとかありえないよな…俺はアレだぞ、5番目の妻に看取られながら死ぬって決めてるんだぞ? 死ねるか!!


 沈黙を破ったのは、奇声を発して叫び出したチビであった。


「………て、テメェえええ!! なにしやがった、俺の渾身の魔法を…何処に消しやがったあああ!!」


 酒場に居る人間の視線が一斉に俺へと注がれる。

 何コレ…ちょっと、視線が気持ちいいのだけど…視姦されるのもアリだな!!

 最も熱い視線を打つけて来るチビは、杖を俺に向け詠唱を始めた。


「ぶっ殺してやる!!

 我が敵を突風と共に消し飛ば…」

「我が敵に灼熱の一矢を放て!!《炎矢ファイヤー・アロー》!!」 


 しかし、詠唱は途中で遮られ、放たれた炎の矢でチビの杖は燃え上がる。

 炎の矢を放ったのはキキちゃんだ。

 キキちゃんは悲鳴を上げて杖を落としたチビに近付き、即座にチビの顔面を蹴り飛ばした。


「ヤリ過ぎなんですよ!!」


 錐揉みしながら飛んで行くチビ…キキちゃんの御御足で蹴って頂けるなんて、羨ましいヤツめ。

 壁まで飛んで行ったチビは、頭を強く打ち気絶した。


 その光景を唖然としてみていた、兄貴分とナイフ男。

 最初に動いたのはナイフ男だ、ヤツは恐れ多くもキキちゃんに向かって駆け出したのだ。


「死ね、このアマぁあ!!…………っな!!?」


 しかし、次の瞬間、ナイフ男は糸の切れた人形の様に床に突っ伏した。

 何が起こったか理解出来ない、理解出来た者などこの酒場にどれほどいようか。

 しかし、何が起きたのか解ったらしい甲冑男は呟いた。


『お見事……』


 誰に向かって呟かれたのだろうか?

 甲冑男の視線を追うと、そこには野太刀を片手に周りの客に睨みを利かせる酒場のお姉さんが居た。

 え…何時、何処から現れたのこの人!?

 お姉さんは声を張り上げる。


「はいはい、馬鹿騒ぎはコレで終わりだよっ!!

 テメェ等、飯食う気が無いなら金置いてさっさと出て行きな!!

 ワタシは結構短気なんだ…さっさと出て行かないと刀の錆にするよ!!!」


 その声に酒場の客はヘラヘラ笑いながらテーブルに金を置いて出て行く。


「おお、怖い怖い…にしても、また姉ちゃん脱がされなかったかー。連勝記録更新だぁ」

「つっか、今回は甲冑のヤツが出て来たからノーカンだろ…」

「ケケ、また、喰いに来るぜ姉ちゃん!!」

「なかなか、オモロいもんが見れたなぁ」

「よい、酒の肴だった」


 各々が感想を口にしつつ店を出て行った。

 残されたのは気絶した二人と、俺とキキちゃん、甲冑男、そしてどさくさ紛れに逃げようとして姉さんに首根っこ掴まれた兄貴分…

 俺はお姉さんの殺気に気圧され。キキちゃんは呆然としてらっしゃる。甲冑男は何時のまにか俺を庇う様に前に出ている…

 お姉さんは俺達の顔を順に見ると、その殺気を解いた。

 深々と溜め息を吐き、近くの椅子に深々と座った。

 そして、バツが悪そうに話し始めた。


「……まぁ、その、迷惑かけたな。

 うちの店じゃよくある事なんだ。アンタ等、この店に来るの初めてだろ?

 常連の客はみんなあんなのだから、普段はこんな風にワタシがボコして終わらせるんだけど…今日は、刀装備してくんの忘れてさ…取って戻って来るのに時間が掛かったんだ。

 だから……一杯奢らせてくれ」



 荒らされた店内を屈強な男達が整備していく。

 あの騒ぎの影響で店内はかなり散らかっており、その掃除の為、二時間程店を占めるらしい。

 店の奥から現れたお兄さん方は(何人かエプロン姿だった)、この酒場の料理人達なのだろう。合計6人のスタッフだ…ふと、思ったのだがこの人達が出て来てたら簡単に場を納めれたんじゃなかろうか?

 屈強なお兄さんが暴れた三人組を締め上げ、小脇に抱えお姉さんに訊ねる。


「姉御。コイツ等どうしやすか?」

「…ちょっとお灸をすえて冒険者ギルドに突き出しときな」

「うぃ」


 そういって大きなお兄さんに運ばれて行く三人組…

 兄貴分だけ意識があるのだが何事か喚き散らしている。あ…猿轡つけられた。

 三人組とお兄さん二人は店の奥に消えてった。

 なんだろう…お灸って。


 俺達は酒場のカウンターで、それぞれの自由にドリンクを頼んでのんでいる。

 席順は左から、俺、キキちゃん、甲冑さんの順だ。酒場のお姉さんはカウンターの奥に居る。

 お姉さんは先程まで発していた殺気が嘘の様に消えてしまっている、本当に何者なのだろうコノ人?

 なんでも好きなモノを頼んで良いと言われたので、俺はオレンジジュースみたいなジュース。キキちゃんは、紅茶のようのもの。甲冑男さんはコーヒーを頼んでいる。そんな俺達の注文を聞いてお姉さんは…


「アンタ等、好きなもの頼んで良いんだよ?

 高い酒頼んでもワタシは怒りゃしないよ、コレは御礼だかんね」


 と、言ってくれた。とはいえ、俺は基本何もして無いしな…

 そんなガッツクこともしたくないのだ。頼むとしたら、あの二人を直接相手した甲冑男さんか、チビを蹴り飛ばしたキキちゃんだろう…俺の活躍など微々たるものだ。

 しかし、キキちゃんは俺に遠慮したのか紅茶を頼み、甲冑男さんはコーヒーを頼んでいる。

 食べ物を頼もうかと思ったが、料理人のお兄さん方が掃除をしている以上、頼み難い。

 美人のお姉さんのご好意を無下にするのは忍びないが、如何せん、一応日本人である俺はこの状況で厚かましく振る舞う事は出来ないようだ。

 

 頂いたオレンジジュースの様なモノを一口啜る。

 うん、旨い。

 日本で普段飲んでいたオレンジジュースに比べ、少し苦みが強い気もするが、十分俺の好みの範囲だ。

 何の果物を使っているのだろうか?

 …好奇心がそそられる。


 好奇心…といえば、今更だが甲冑さんの素顔が気になって仕方ない。

 甲冑さんをチラ見する。出されたコーヒーに手をつけていない…さぁ、早く飲めよ!!さぁ!!


 しかし、酒場に入って飯を食うときも外さなかったヘルムだ、余程、素顔を見られたく無いと見える。

 まぁ、こういう場合のテンプレで素顔が超美形とかなんだろうが…だって、声が渋くてカッコイイしな。

 と…同じことを考えながら甲冑さんを見ているのだろうか? キキちゃんもチラチラ見てる…可愛い。

 そんな俺の邪な気持ちが伝わったのか、キキちゃんは俺の視線に気付き、その気まずさを払拭する様に声を発した。


「その、シンジ様? お怪我は無いですか?」

「ああ、問題ない。この通りビンビン元気だ!!いつも通りの健康体だぜ。

 それより、キキちゃんの方も大丈夫か? あの糞チビを蹴り飛ばした時、変な汁とか付かなかった?」

「……へんなしる? 別に付いてないですよ?

 まぁ、かなり本気で蹴り飛ばしましたからね…あのチビ、顎は逝ってると思います」


 はい、ニッコリ笑顔ですね。

 確かに凄い蹴りでした。是非とも尻に一撃欲しいです。

 俺とキキちゃんの会話を聞いていた甲冑さんが不意に立ち上がり俺の所へとやって来る。


『……本当に怪我はないか?

 拙者は、先程、貴殿に命を救われた《グレイブ》と申す旅の武人…

 出来る事なら、その恩に報いたいと思うのだが…その前に怪我が原因で倒れられては、返すに返せないからな…本当に大事ないか?』


 命を救った、か…

 別に大した事をしたつもりは無い。

 おそらく自分がチート能力を使ったと自覚しているからだろう。

 だから、恩に報いると言ってくれているグレイブさんの言葉も若干重く感じてしまう。

 

 日本に居た頃、主人公チートの小説を好んで読んでいたが、実際自分がチートを有してみても、別に『俺TUEE』とか好き勝手する気にならない。だから、グレイブさんの申し出も結構悩んでる自分が居る。


 確かに、俺はエロゲが好きで触手が好きだ。

 そして、この世界に来て触手を生み出す術を手に入れた。

 やろうと思えば、触手で女の子をヤリタイ放題出来る立場にある。

 しかし、俺はそんな妄想だけで夜のオカズに事欠かない人なのだ。


 それだけで満足…と、まではいかないが、別に相手の了承無く蹂躙しようとは考えない。

 まぁ、鬼畜系・陵辱系・調教系のゲームも大好物なんだけどさ…それをゲームの中だけで止めておく理性が俺にはあるのだ。


 それに今の所、キキちゃんを愛でるだけで結構満たされている。

 クロちゃんも、もうちょい人化状態で大きければ俺のストライクゾーンなんだけど…まぁ、純粋な意味で子供も大好きだから愛でるけども。


 さて、グレイブさんの申し出をどう受け流すか…

 そこで思いついた事があったので言ってみる。駄目なら駄目で、次を考えるつもりでいた。


「本当に大丈夫だ。

 …それで、恩返しの件なんだけど、俺、どうしても気になる事があってさ」


 俺の言葉に反応したのは、キキちゃんと酒場のお姉さんであった。

 うん、キキちゃんは気付いてたけど、お姉さんも気になってたのね…

 しかし、当の本人は気付いて無いようで首を傾げている。


『拙者に出来る事なら、なんなりと言ってくれ』


 よし、言質はとった。

 じゃあ、遠慮なく聞かせて頂きます。


「そのヘルムの下の顔…凄く見たいんだけど?」


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