011話 まぁ、男を助けたくなる時もありますよ?
突如、現れた全身甲冑の闖入者…
その登場に三人組は面食らい。酔っぱらい共は驚き。お姉さんは突然現れた味方に驚きつつ、直に女の子を抱き起こして、甲冑男の後ろに移動した。
甲冑男はそんな様子を一瞥すると優しい声をかけた。
『…安心されよ、お二方。
拙者が来たからには、この命に変えても下衆の手は触れさせん』
威風堂堂といった感じで仁王立ちする甲冑男。渋めのカッコイイ声が素敵だ。
全身甲冑…プレートアーマーで身を包んだフル装備の男は、しかし、無手であった。
勢いを取り戻した三人組は甲冑男を嘲笑う。
「おい、テメェー…いきなり現れて騎士面してんじゃねぇよ!!
さっさとどけや、イタい目見るぜぇ?」
「そうだ、俺達はそっちの女に用があるんだ!! 関係ないのが出てくんな!!」
「兄貴ぃ、コイツ、鎧で守りを固めた只のビビリじゃねぇーの?
酒場の中でもヘルム被って顔を隠しているのが、その証拠だ!!」
あ、確かにずっと顔を隠してるなあの人。
俺は、『やべぇ、リアルで騎士キター、カッケー』程度にしか考えてなかったが…酒場でもヘルムを被っているのはオカシイ気がする。人見知りなのだろうか?
つーか、食事してたよな…まさか、ヘルムの下からチビチビ食べてたのか?可愛いな…
しかし、甲冑は三人組の言葉など意にも介さない様子である。
『……今ならまだ、怪我せずに済むぞ?拙者は無益な争いは好まないからな』
と、言い放った。
その瞬間、観客ぶって囲んでいた客から口笛が1つ。その後、各々が応援やら罵声やらを発し始めた。まぁ、それはどうでもいいんだけどな。
それにしても、本当に騎士っポイ人だなぁ、否、侍みたいな人だ…ただのコスプレで無ければいいけど…
キキちゃんと頷き合って、しばし、様子を見る事にした。
あの騎士風の人がどうにか出来るなら、手を出す必要も無いと考えたからだ。
つーか、俺は自分がどのくらい手加減出来るか不安でもあった。
甲冑の言葉に三人組の兄貴はこめかみに青筋を浮かべた、あまり我慢強い方では無いようだ。
「……いいじゃねぇえか、この野郎!!覚悟しやがれ!!!」
そう吠えると、兄貴分の男は数mあった間合いを一瞬で詰めて甲冑男に切り掛かった。その動きは人間離れしてみえる。流石、ファンタジー…
大きく横薙ぎに振られた大剣の延長線には、甲冑男の首がみえる。その太刀筋もかなり速い…俺には次の瞬間、甲冑の首が宙を舞う光景が予想できた。プレートアーマーも鉄壁では無い。
だから、直にでも飛び出し助けようと思ったのだが、服の袖をキキちゃんに引張られ引き止められた。
キキちゃんの顔を見る、その顔は真剣そのもので目下の戦いを観察しているようであった。
俺も視線を戻す、俺はてっきり甲冑男が死んでるものと思っていた。
しかし、振り抜かれた刃は甲冑を捉える事無く宙を裂いていた。まるで、甲冑の身体を刃がすり抜けたようである。
俺は何が起きたのか理解出来なかった。
「甲冑の武人が半歩後退ったのです。ただ、それだけのことで刃は宙を切り、あの酔っぱらいの一閃は甲冑をすり抜けた様に見えました。
おそらく傭兵や冒険者だとしたら、かなり高ランクの方ですね。まさに神業…あの甲冑男、達人の域です。
あの酔っぱらいも十分に強い部類ですが、甲冑の方が遥かに格上ですね」
あ、実況入った…
そういえばキキちゃんも剣持ってたしな…飾りらしいけど…一応、剣術に心得があるのだろう。
俺は、素人だからぜんぜん解らないから実況はマジで助かる。
ここから先は実況解説・キキちゃんでお送りします。
さて、視線を一階に戻します。
大剣の兄貴分と、角を生やしたナイフ男が二人掛かりで甲冑男を攻撃するが全て去なされている。
まぁ、俺からしてみれば、あの酔っぱらい二人も十分に凄い領域の技を披露している訳だけど、それを去なし続ける甲冑男の凄さは計り知れない。
しかし、甲冑男は一向に攻撃する素振りを見せない。
そのため、観客ぶって辺りを囲んでいた客からも次第に野次が飛んでいる。勝手なヤツ等である。
よく見れば、お姉さんも泣いていた女の子も姿を消している。あの三人組も忘れているようだし…上手く逃げたな。
戦闘を始めて数分。
最初は威勢が良かった大剣男とナイフ男も、次第に肩で息をし始めた。
切先を甲冑男に向け、兄貴分が吠える。
「……こ、この野郎!! 武器だせや、舐めとんのか!?」
今の状況で圧倒的に不利なのに、甲冑男さんに武器出させたら勝てる見込みゼロだろ…
バカなのだろうか、あの人…
『拙者は自分の力を無闇に振るう様な真似はせぬ…ゆるりと、貴様等がへたるのを待たせて頂こう』
よ、余裕ですね…
しかし、言い終わると兄貴分はニヤリと笑った。
「いけ!! 殺っちまえ、ディルク!!! 余裕ぶっこいてるヤツの顔面を吹っ飛ばせ!!」
兄貴分が叫ぶと、先程まで後ろでコソコソしていたローブのチビが杖を片手に詠唱を始めた。
いつの間にか、床に大きな魔法陣が書かれている。
それを見たキキちゃんの表情が一瞬青ざめた。
「あ…あの方々はバカですかっ!!
あんなものこんな下らない喧嘩で使う何て……トンデモナイ阿呆です!!!」
そう言って、急いで飛び降りるキキちゃん。俺もその後を追いかけて飛び降りる。
キキちゃんは、周囲を取り囲む観客を押しのけディルクと呼ばれたローブのチビの所に向かおうとするが…
「俺達に逆らった事、死んで悔やめぇえええ!!!」
チビは叫ぶと詠唱を始めた。
「我が敵を突風と共に消し飛ばせ!!《突風砲》!!…複数詠唱、発動!!」
詠唱を唱え終わると、最初にチビの頭上に緑色の魔法陣が1つ浮かんだ。その魔法陣から空気の玉の様なものが現れる…え、それだけ? しかし、無論、それだけでは無かった。
次の瞬間、チビの足下の魔法陣が青く輝き、頭上の魔法陣の数がどんどん増えて行く。俺はその数を、10を越えた辺りから数えるのを止めた、それほどの魔法陣が浮かび、それだけの空気の弾丸が生成されたのだ。
天井を埋め尽くす空気の弾丸…危険を察知した客はいち早く酒場を後にし始める。察知出来ていないものはその行く末を喜々とした表情で見守っている。おい、俺でもコレはヤバいと解るぞ…
最後の一個を生成し、チビは肩で息をしながら不敵に笑った。勝利を確信した笑みである。
ココまでの生成に用いた時間は数秒…かなり速い。
チビが吠えた。
「消し飛びやがれ、この野郎ぉおお!!!」
空気の弾丸が甲冑男のもとに降り注ぐ。
しかし、甲冑男は避けようとしない…何故だ、死にたいのか!?
「なに、してんだオッサン!!
早く、逃げろよ!! 死にたいのか!!」
つい、そちらに向けて駆け出していた。
良かった事に、安易にあの弾幕が落ちて来ると予想出来る甲冑男の周りは閑散としていた。
逃げ場はある、しかし、甲冑男は動かない。なんでだ!?
甲冑男は俺を一瞥して叫んだ。
『拙者が避けない限り、他に被害は出ない!! だから、近付くな!!』
くそ…間に合え!!
俺が甲冑男の前に滑り込むのと、空気の弾丸が降り注ぐのは同時だった。
■
拙者の命も最早ここまで…
思い返せば、種族の地位向上に努めた人生であった…ぜんぜん、向上出来なんだが…
と、いってもまだ28歳…どうせ、死ぬなら娼屋にでも行って捨ててくれば良かった…
武の道も志し半ばであるし、仕えようと思える主にも出会えなんだ…
そして辿り着いたこの村で、ただ、女子供を守っただけで死ぬ…
自分で決めた制約など捨てて、成敗すれば良かったか?
否、それでは、いままでの人生の意味が無い。
名誉の死やもしれんが、後悔の多過ぎる人生だった。
だから、最後に後悔させてくれるな…
人族の青年よ、どうか、どうかこっちに来てくれるな…
母さんゴメン、僕、死ぬわ…
甲冑男…こと、《グレイブ》は空気の弾丸が降り注ぐ直前にそんなことを考えていた。
実はまだ彼は28歳であった。そして、童貞でもあった。死を間近に後悔したり、母の事を思い浮かべたりする、結構普通の正義感と使命感、そして自己犠牲の精神の強い青年であった。
しかし、死を覚悟した彼の元に一向に死は訪れない。
訝しみながら、恐怖しながら目を開けると、ソコには一人の青年が立っていた。
自分の前で両手を広げる青年は間違いなく、先程、近付くなと忠告した青年である。
自分より身長も、幅も小さい青年は、しかし無傷であった。
あの無数の《突風砲》は何処に消えた!?
拙者は何故に生きている!?
そしてこの青年はなにものだ!!!
ここに、一人の武人の運命が決まろうとしていた。
驚きの表情を浮かべるグレイブよそに、シンジはシンジで今起きた事に驚いていた。
まず、一撃、確実に自分の身体に当たった。しかし、その一撃は一瞬にして消え去り、他の弾丸は身体に触れる前に消えた。何事だよ、コレは!?
そして、もしかしたら…と思い、記憶を探ってみると…
あったのだ、あの空気の弾を作り出す知識が。
あったのだ、複数詠唱という言葉の意味と、それを発動させる魔法陣の書き方に関する知識が…
コピー能力…
頭を過ったのは、小説でおなじみのチート能力であった。
名 前:黒峰真治
ジョブ:自称魔王
年 齢:18歳
性 別:男性
異 名:紳士、自称変態魔王
スキル:NO DATA
魔 法:《雷電》《突風砲》《魔除けの魔法陣》《魔除けの結界【B級】》《魔除けの結界【C級】》《 狂乱の宴》《複数詠唱》《空間魔法》《創造魔法》《消去魔法》《魔力走査魔法》…
※前回入れ忘れたので、前回のコピー分も追加しております。




