第二章
『十月二日
現場に行って、亡くなった人を見て、それから、犯人を見つけ、手錠をかけて。
それから思う。
俺も逮捕されるべき人間なんじゃないのか、と。お前の命を奪ったのは俺だ。
あの時お前の両親が俺に怒ったのも不思議じゃないと思うし、十六年しかこの世にいなかった大貴の命を奪い、お前が生きてる時に謝りたくても謝れなくて。大貴がいる時にしたかった事できなかった。』
「結局お前、告んなかったのかよー」
呆れた俺は椅子に腰をかけながら、大貴にサイダーを渡した。
あの日は文化祭の準備を終えて、疲れていた俺たちはそのまま俺の家に泊まった。俺たちの家はそんなに遠くはなかった。歩いて十分もかからないところにあったが、学校から「近い」のはこっちだった。
今日こそは、と言っていた大貴。無理ならメール、と言っていた大貴。
どっちもやってない。
結局はどっちもやらず、帰って来てしまった。
缶を開ける音が部屋に響き、「お疲れ」と言って、サイダーを飲んだ。
大貴はモテる男だった。
幼稚園の頃からあの、よくあるやつ(「あの子が大貴くんの事好きなんだって」のやつ)を何度も何度も言われていた。
誰にでも優しかった大貴。
なんでも悩みを聞いてくれた。そんな大貴の命を俺がゼロにした。
俺たちはずっと一緒だった。
これからもずっと一緒と、事故が起きるまで、思っていた。大貴が横にいる事が俺には当たり前だった。だけど、そんな日々はもう終わり、もうこの世界では味わう事ができない。ああ、あんな荷物持ちゲームなんて思いつかなきゃよかったんだ。俺がやりたい、なんて言いださなければよかったんだ。もし、そのゲームを始めてなかったら俺たちは今でもこの世界で一緒に笑う事ができたはず。大人なって、違う職業に就いたとしても俺たちは頻繁に会っていたんだろう。憎んでいるに決まってる。あったはずの、手に届くところにあったはずの、大貴の未来を俺が壊した。そして、無くした。「無」にしてしまった。
『時々お前の母さんが言ってた事思い出すんだ。「あんたが生きていく資格なんてない。」そうだよな。だけど、俺はいつもこう信じる。いや、こう信じたい。俺がお前の分まで生きる、と、そうすればいい。』
途中まで日記を書いたら手が止まった。そして震えだした。もう一度自分が書いた事を読み返してみる。「俺がお前の分まで生きる」。俺これできるのかな。書いた後にそう思う。大貴が歩むはずだった、「今」を俺はお前の分まで、歩む事ができるのだろうか。
神がもし存在するならば、俺は会って聞きたい事がある。
「大貴ではなくて、俺を生かしてくれた意味はなんですか」
そして、
「俺はこれからの道を歩んでもいいのだろうか」
『十月三日
なあ、大貴。
俺って生きてる意味あるのかな』