俺が墓穴を掘った日
その日は高校も中学も午前授業だった。何やら県内の教師の集まりがあるらしい。
俺も弟も早々と下校のち帰宅、惰性で居間のテレビに向かっていた。
そろそろ必要性の薄れてきたコタツに足を突っ込んでトークショーを眺めつつ
昼食であるカップ麺の残り汁をすすっていた弟。
だらけた様子を横目に見やり、俺はどっかとソファに腰かけて新聞を開いた。
目的は四コマ漫画の読破、および今夜のテレビ番組の放送予定を知ることにある。
「お……」
四つに折り畳まれた灰色の紙束から色とりどりの広告を抜き去ると
その一番外側が中古ゲームショップの広告であることに気がついた。近所にもチェーン店舗がある。
俺はとりあえず新聞を脇に置き、いそいそと広告を読み進める。買い取って欲しいゲームソフトが溜まっていた。
買い取りの値段はカラー印刷の表面ではなく、青の単色で刷られた裏面に記載されている。
いやに光沢のない紙に目を通すと、その中の一文が俺の目を釘付けにした。
そこに書かれたゲームのタイトルが、この店にはおよそ似つかわしくないものに思えたのだ。
「何だこりゃ、何で18禁のエロゲーを高価買い取りしてるんだよ」
すると弟が、俺と視線を合わそうともせずにつぶやく
「何で18禁のエロゲーのタイトルなんて知ってるんだよ、兄貴」
弟はまるで興味なさそうにテレビを観続けている。
何も言わないのが最も被害の少ない選択だと判断した俺は
そそくさと二階に引き上げた。