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ズドンと目が覚めました


う…あ?


ここはどこだ?


仰向けの状態で私は空を見上げた。


その状態のまま、ぼんやりとする頭で私は記憶を掘り返す。


あー…、そういえば…ガキ助けようとして車にはねられたんだったけか。


とはいっても、とてもここが病院とは思えない。


なんとも薄暗く、生ごみの散らばった衛生状態の悪そうな路地裏だった。


そこに仰向けに寝転がっていたもんだから、当然髪や服にもごみや埃がついて汚いったらありゃしない。


はねたトラックの運転手が、人を殺したと思って騒ぎになるのを恐れて私をそこら辺の路地裏に捨てたんだろうか。


だとしたら、そいつはとんでもない大馬鹿だな。


私は生きてるし、怪我もしてない。


まぁ、若干背中がなぜか痛んでいるが、怪我には入らない程度のもんだろう。


さて。ガキも助かっただろうし、私も家へ帰るか。


よっこらせ、と堅くなっていた体を起こして私は路地裏から抜け出した。



そして、唖然とする。


どこだ、ここは。


おいおいおい、冗談はよしこちゃんだよ。


トラックの運転手、一体私をどこまで捨てに行ったんだ?


明らかに。


明らかに、ここは日本じゃねえ!


路地裏から出れば、そこは日本では見たことのない街並み。


ヨーロッパ風の建物に、寂れた大通り。


銃や刀が隅の方に散乱し、淋しく吹きすさぶ空っ風が、カラカラと空の酒瓶を転がしていた。


まるで、人のいなくなった死んだ街のようだ。


ここがどこかも、どうすれば家に帰れるのかもさっぱり分からない。


誰でもいい。


誰でもいいから誰か助けてくれぇ!!



私は大通りの真ん中で呆然と突っ立っていたのだった。





「おい…」


「!は、はい!」


どれぐらい突っ立っていただろうか。


突然後ろから声をかけられて私は驚きつつも、ほっとして振り返った。


そして、後ろの人影を見上げる。


そう。見上げるほどの大男が私のすぐ後ろに立っていたのだ。


「ひっ!」


だ、誰でもいいなんて思ったからこんなことになったのか!?


確かに、人には会いたかったけど、この人駄目だよ!


顔や腕など肌が見えるところにはすごい傷のあと。


そして凶悪そうににやりと笑う気持ち悪い口元。



ここは普通イケメンのお兄さんに助けられて恋に落ちるパターンじゃないのか!


所詮、そんなドラマティックな物語は少女漫画でしか起こりえないのか!


なんてことをぐるぐる考えていると、ぐっとその男に肩を掴まれる。


この男、とんでもない握力だ。


それだけで肩の骨が折れてしまいそうだった。



「お前、この町の人間にしちゃあ、いいなりしてんなぁ。金あんだろ?とっとと出せや」


凶悪っぽそうな人からの突然のカツアゲ。


傷だらけで凄む恐ろしい顔に、出来るものなら素直にお金を差し出して許してもらいたかったが残念なことに私は一銭も持っていない。


ポケットをごそごそと漁ってみたら、いつのか分からないイチゴミルク飴が出てきた。


「…これ、どうぞ」


精一杯の笑顔でそれを差し出すが、もちろん冗談が通じるわけなくて。


「ふざけんじゃねえぞ!何もねえんだったら、その立派な服脱げや!」


なんと腰からピストルを出して突き付けられました。


じゅ、銃刀法違反!




その上に服を脱げだと!?

ふざけんな、この気持ち悪い変態極悪男め!


なんてことはもちろん口に出さずに、引きつった顔でにっこり笑って相手を宥める方法に出てみた。


「あ、あの…どちら様かしりませんが、家に行けばお金あるのでそれで勘弁してくれませんか?」


家への帰り方なんて分からないけどね。

とりあえず、その場をなんとか凌ごうと言うと、男はふんっと鼻を鳴らして私の顎をぐいっと掴んで顔を上へ向けさせた。


痛っ。


突然、強い力で顔を上げさせられて首の後ろがゴキッていった。


「へへ。よく見たらお前いい顔してるじゃねえか。こりゃあ、殺すより売りとばした方がいいかもなぁ」


勝手に算段を立て始める男。


私は、恐ろしさで動けない…なんてことはなく、首が痛いのを耐え忍んでどうにか逃げられる方法を考えていた。


と、そのとき


視界の端にちらりと動くものが見えた。


あれは…子供!?


そう認識したのと同時に、木箱の影に隠れていた子供が小さな石ころを投げた。


そして、それは見事に男の頭に当たった。


「あぁあ!?誰だ!?ごるぁあ!」


しめた!

男の意識がそっちに向いた隙に、私はダッシュでその場を逃げ出す。


伊達に警察官を目指してるわけではない。


体はそれなりに鍛えてあったし、一瞬の隙さえあれば、私はその男から逃げれた。


はずだった。


振り向きさえしなければ。




「…あ!」


ちらりと振り返って見た、その光景に私の足は止まった。


あの、木箱の影に隠れていた子供が、凶悪男に首を掴まれて宙に浮いていた。


子供は空高く持ち上げられて、足が苦しそうにじたばたと動いている。


男の方は、相当ぶち切れているのか今にも子供を撃ち殺してしまいそうな雰囲気だった。


…!


ああ、もう!


ガキを見捨てて自分が助かるわけにいくかよ!


大通りを見渡せば、さっき見たようにあちこちに散乱する刀や銃。


そのうちの小型のピストルを拾い上げて瞬間に中身を確認する。


何とも時代遅れな不恰好なピストルに込められている弾は一発。


これを外せば、あの男は私に気付いてもう発砲するチャンスをつくってはくれないだろう。


それを構えて、私は意識を集中させる。


生きているものを的にしたことなんてなかったから、ぶるぶると手が震える。


それでも、あの子供が助かるかどうかが私の腕にかかっている。



くそ!


私は深呼吸して、トリガーにかけた指に力を込める。


大丈夫。いつものように。


射撃訓練だと思え!


私は鋭く狙いを定めた。



そして、静かな町に鋭い発砲音が響き渡った。




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