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「ペルム紀」で絶滅してみませんか?  作者: 遠藤 世羅須


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第二話:絶滅のかほり ( Part 3 )連番⑥

古生物学者ドクター・ゴンドワナと助手アキは、オルドビス紀でライバル、ドクター・パンゲアとの珍勝負を繰り広げた後、ミッションコンプリートすべく再びペルム紀へ。本当にコンプリート出来るのか?

時代: 2億5200万年前、ペルム紀末期。

場所:シベリア・トラップ。


クロノス号は再び、硫黄の臭いと熱気に包まれたシベリアの台地に降り立った。

ドクター・パンゲアの「テクトニクス号」の姿は既になく、

勝手に次の絶滅ポイント(たぶんデボン紀あたり)へ向かったのだろう。

アキは再び呼吸器を装着し、ぐったりと船外へ出た。大地はさらに割れ、

空は噴煙で真っ赤に染まっている。


「ドクター、いよいよです。緊急帰還タイマーまで、残り10分を切りました。

私たちは、最後のミッションを完了しなければなりません。

腕足動物の『絶望のサイン』の回収です」

ドクター・ゴンドワナは、オルドビス紀で採集した、

氷漬けの三葉虫のボックスを抱きしめていた。

三葉虫たちは、凍りついたまま、

まるで笑っているかのように完璧な姿で保存されている。

「その前に、アキくん。集めたサンプルを比較検討しなければならない。

見なさい、この三葉虫たちを!」


ドクターは三葉虫の入ったボックスと、

ペルム紀の泥の中から拾ってきたブラキオポッド(腕足動物)を並べた。

ブラキオポッドは溶けかかった殻の中で、かろうじて生きていた。

「オルドビス紀の三葉虫は、美しく、完璧に凍りついた。

まるで『私を忘れないで』と言わんばかりに、最高のポーズで死んでいった。

これは『劇的な絶滅』だ」

次にドクターはブラキオポッドを見た。

その殻は酸性雨で溶け、体からは粘液がにじみ出て、

まるでぐちゃぐちゃの泥の塊のようだ。

「そして、このペルム紀の腕足動物たち。彼らは、

熱と毒ガスでドロドロになり、『もう面倒くさい』とばかりに、

粘液と排泄物で最後のメッセージを書き残した。これは『投げやりな絶滅』だ」

ドクターは両手を広げ、感慨深げに結論を述べた。

「つまり、アキくん。私が導き出した『絶滅』への最終結論はこうだ!」

ドクターは、声のトーンを上げて叫んだ。

「絶滅とは、生物がその時代の環境に対し、『最高のコスプレで死に絶えるか』、

それとも『ドロドロのパジャマ姿で自棄になって死に絶えるか』、

という『死に様のスタイル』の選択に過ぎない!」


アキは深いため息をついた。

「スタイル……ですか。ドクター、あなたの結論は、いつもロマンチックで、

そしてどうしようもなくふざけていますね。

でも、ペルム紀の生物の投げやりな絶望は、私にも伝わってきました」

「だろう?さあ、早く最後のミッションだ。

『絶望のサイン』を回収して、乾杯だ!」

アキは、以前、アースロブレウラの巨大な脱皮殻に書かれた

ブラキオポッドの粘液(ドクター曰く『脱糞』)のサインを、

細心の注意を払って回収した。


帰還とフィナーレ

帰還タイマーがゼロになる直前、クロノス号は激しい振動と共に

シベリア・トラップを後にし、無事に現代の研究所へと帰還した。

ドクター・ゴンドワナは、泥まみれの服のまま、オルドビス紀の三葉虫と、

ペルム紀の粘液付き脱皮殻を、研究所のテーブルに並べた。

「アキくん、ミッションコンプリートだ!これこそが、

地球の歴史が私たちに教えてくれる、『絶滅のユーモア』だ!」


ドクターはポケットから取り出した、最後のシャンパンを、

アキの目の前で勢いよく開けた。

「さあ!乾杯だ!私たちは、史上最悪の『ペルム紀』と、

史上最もスタイリッシュな『オルドビス紀』という二つの絶滅を、

特等席で見送った!我々の勇気と、狂気の科学的探求心に!」

「乾杯、ドクター」アキは疲労困憊の顔で、差し出されたグラスを受け取った。

「もう二度と、ドクターのタイムトラベルの助手なんてやりません!」

「そう言うな、アキくん。これが我々の世紀の発見だ!」


ドクターは、未来へのメッセージが描かれた(という設定の)巨大な脱皮殻を、

古生物学界の権威であるマッド教授の前にドスンと置いた。

「カンブリア教授、これこそが、ペルム紀の絶滅を生き延びたブラキオポッドが、

未来へ託した『メッセージ』です!

地球史上最大の悲劇の、究極の証言!」

カンブリア教授は、分厚い眼鏡越しに、

巨大な脱皮殻に描かれた粘液の痕跡を凝視した。

「これは…粘液。しかも、ひどい臭いだ。この横線は一体…何を意味するのかね?」

ドクターはしたり顔で、腕を組んだ。

「その通り!それは、絶滅寸前の生物の最後の言葉です!」

「で、それは何だと?」マッド教授が尋ねる。

ドクターは声を張り上げ、アキに向かって親指を立てた。

「あの巨大な粘液は、ブラキオポッドのリーダーが、

最後の力を振り絞って排泄した、ただの『脱糞』です!

そして、アキくんが言った通り、あの横線は『もう疲れた』、

二重線は『もう二度とごめんだ』。つまり…」


ドクターは咳払いをした。

「『絶滅』とは、『生物が未来への希望を託すことすら面倒になって、

最後の最後に、ただ排泄して終わる』という、

究極の諦めのエンディングだったのです!

これこそ、絶滅の真実、『ペルム紀はうんざりだった』という、

地球史上最大のサイエンス・ジョークですよ!」


アキは、泥まみれのまま、力なく叫んだ。

「サイエンス・ジョークじゃなくて、ドクターの単なる悪ふざけです!

…ところで、ドクター、最後の質問だ。

あなたは、なぜこの絶滅の瞬間に立ち会いたかったのかね?」

ドクターは、窓の外に広がる現代の平和な景色を見つめ、

少しだけ真面目な顔をした。

「絶滅を、最高に楽しく、大笑いしながら見送るためですよ。

なぜなら、絶滅とは、次の時代の主役を決める、

最高のオーディションだからです!

アキくん、次は白亜紀末期に、巨大隕石を鑑賞しに行こう!

あの火花は最高に美しいぞ!」

アキは、サバ缶の匂いが染み付いた服のまま、顔を青くした。

「断固拒否します!私はもう二度と、あなたの絶滅ツアーには付き合いません!」

その日の夜、研究所のゴミ箱には、アースロブレウラの巨大な脱皮殻が、

サバ缶の空き缶と共に捨てられていた。

そして、ドクターは、次の白亜紀ツアーの計画を、

楽しそうにノートに書きつけているのだった。


そして、研究所の電話が鳴った。

アキが電話に出ると、受話器の向こうから、

ヒステリックなドクター・パンゲアの声が響いてきた。

「助手くん!聞いてくれ!私はデボン紀の絶滅ポイントへ飛んだ!

あの絶滅は、森林の異常繁茂による二酸化炭素の吸収が原因だ!

美しく、植物的! だが、タイムマシンの燃料が底を尽きた!

今すぐ、助けに来てくれ!」


ドクター・ゴンドワナは、シャンパンを飲み干し、にっこり笑ってアキに言った。

「パンゲアくんは、また絶滅の波に飲み込まれたようだね。

アキくん、じゃあ次はデボン紀だ。

パンゲアくんを助け出しがてら、

あの時代の『植物の野心による絶滅』を観察しようじゃないか!

デボン紀は、きっとオーガニックな死に様を見せてくれるぞ!」


アキは電話を置いた。その目には、もはや諦めしか宿っていなかった。

「ドクター、私はもう、あなたの絶滅ツアーの助っ人ではなく、

原始時代の遭難者レスキュー隊員になっている気がします……。

コーヒーと酸素ボンベを準備してから、デボン紀へ向かいましょう」

こうして、ドクター・ゴンドワナとアキの、地球の歴史を巡るコメディ絶滅ツアーは、

休むことなく次の時代へと続いていくのだった。


(第3話  Part 1 に続く)


次の第3章は自分でも気に入っているパンゲアが「活躍」してくれます。

なお、本作、シーズン1はほぼ完結しています。現在シーズン2創作中です。

定期的(3日に一度くらい)投稿を心がけています。

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