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「ペルム紀」で絶滅してみませんか?  作者: 遠藤 世羅須


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3/7

第一話:タイムマシンは絶滅ポイントに止まる( Part 3 )

石炭紀で騒ぎを起こした後、本来の目的のペルム紀でミッションコンプリートとしたいアキだったが、ドクターは今日も自由で・・・

 時代: 2億5200万年前、ペルム紀末期。絶滅イベントのクライマックス。

 場所: シベリア・トラップ。


大地は割れ、溶岩流が海へと流れ込んでいる。

空は黒い噴煙と硫黄ガスで赤茶けている。

クロノス号は、元の着陸地点から北東100km、シベリアの台地に降り立った。

周囲は地獄絵図そのものだ。割れた大地からは、

真っ赤なマグマがゴボゴボと湧き出し、

それが何百万年にもわたって噴出し続ける、史上最大の

「トラップ(階段状の玄武岩地帯)」を作り出している。

アキは呼吸器の酸素濃度を最大に上げたが、

それでも皮膚がヒリヒリするのを感じた。

「ドクター!見てください、あの空の色!硫黄のガスと火山灰で、

 太陽光線が届いていない!

 地表の温度は上がっているのに、植物はどんどん枯れていく!

 これが、あの酸性雨と温室効果ガスのダブルパンチですか!」

アキがパニックに陥る中、ドクターは目を輝かせ、双眼鏡を構えた。

「ブラボー、ブラボー!アキくん、落ち着きなさい!これこそ、

キミと私が時間を超えて見に来た究極の光景だ!

見てごらん、あの噴火口を!」

ドクターが指差す先、数百キロメートルにわたる亀裂から、

オレンジ色のマグマが滝のように流れ落ちていた。

「あれはただの火山じゃない。地殻を突き破ったマントル物質が、

 地球の歴史上最も長く、最も大量に噴出し続ける、

『地球のガス抜き』現象だ!我々は今、地球の悲鳴ではなく、

 地球の『最高のゲップ』を聞いているんだ!」

 アキはめまいを覚えた。

「ゲップなんかじゃありません!この大量の二酸化炭素と硫化水素で、

 海洋の生態系の90%以上が死滅するんです!

 ドクター、これが絶滅の原因ですよ!早くサンプルを採取して…」

ドクターは双眼鏡を肩にかけ、ポケットから取り出したのは、

なぜかシャンパンの小瓶と、アルミホイルに包まれたクラッカーだった。

「アキくん、サンプル採取は後回しだ。

 今、この瞬間、人類は誰も目撃したことのない

『史上最高の花火大会』が開催されている!この光景に、

 文明人として、敬意を払わずにいられるか!」

ドクターはシャンパンの栓を抜き、泡が硫黄の空気に溶けていくのを

無視してグラスに注いだ。

「さあ、アキくん、乾杯だ!人類が文明を築いたおかげで、

 我々は、2億5200万年前の終焉の輝きを、

 特等席で見ることができる!これぞ、科学者の至上の喜びではないか!」

 アキは目の前のドクターの狂気じみた行動に、とうとう限界に達した。

「ドクター!何を言ってるんですか!この噴火は、

 私たちの時代まで続く石炭紀のデカい木の墓標ですよ!

 私たちだって、あと数時間ここにいれば、酸欠とガスでペルム紀の

 一部になって絶滅します!

 シャンパンじゃなくて、酸素ボンベをください!」

「ああ、アキくん、相変わらずキミはネガティブだ。じゃあ、これでどうだ」

ドクターは、先ほど石炭紀で採取してきた、

巨大なアースロプレウラの脱皮殻を取り出した。

「実は、この脱皮殻こそが、今回の『絶滅を巡る奇妙なミッション』の

 真の鍵だ!」

アキは石炭紀の悪夢の再来に、再び絶叫した。

「ま、まさか、これを、絶滅ガスを中和するために燃やすつもりですか!?」

「まさか。これは、ただの『絶滅寸前生物たちへのメッセージボトル』だ。

 私はこの巨大な殻に、『恐竜時代は最高だぞ、君たちも頑張れ!』と

 メッセージを書いて、この溶岩流に流すつもりだったんだが…」

ドクターは溶岩流を指差した。

「溶岩が熱すぎて、殻が燃えてしまう。そこで、キミだ、アキくん。

 キミの任務は、この脱皮殻を、まだ死んでいない腕足動物のリーダーに渡し、

『この殻に未来への希望を託し、メッセージを書いてもらう』ことだ!」

アキは目を丸くした。

「絶滅寸前の腕足動物に、未来へのメッセージを書かせる!?

 ドクター、何の意味があるんですか!」

「決まっているだろう!これは、未来の古生物学者たちへの、

『絶滅期の生物が最後に何を考えていたか』という、

 究極のサイエンス・ジョークだよ!」

ドクターは、アキに巨大な脱皮殻と、特注の耐熱ペンを押し付けた。

「さあ、急げアキくん!最高の花火が、もうすぐフィナーレだ!

 君の助けが必要だ!そして、30分後、無事に戻ったら、

 この最高に不味いシャンパンで、『絶滅記念』の乾杯をしようじゃないか!」

 アキは脱皮殻を抱え、絶望的な表情で溶岩流の向こう側を見た。

「絶滅記念…!もういいです!勝手に飲んでください!

 私はメッセージを集めて、とっととこの地獄から帰還します!」

 こうして、アキの「絶滅回避」ミッションは、

「絶滅生物からのお土産収集」ミッションへと、

最悪の形で変貌を遂げたのだった。


(第2話に続く)

シリーズは完結までいってますが、現在加筆修正中です。

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