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呪われ勇者の専属聖女になりました……けれど私にあるのは10キロの米袋だけです!  作者: 天城らん


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5-1 空色のリボンの意味


 私は部屋に戻り急いで身支度を整える。

 神官のユジンさんが、ちょうどメイドさんを引き連れて来てくれた。

 昨日、足りなかった説明や今後のことを相談に来たらしい。


「おはようございます。聖女様。本日のご予定など相談に上がったのですが……お急ぎのご様子ですね?」

「あの、この部屋にあるものって私が勝手に使ったり着たりしていいんですか?」

「もちろんですよ。多くは先代聖女様たちが残した物で我々では使い方が分からない物ばかりですし、ご自由にお使いください。服に関しても着れるものはもちろんいいですし、この後、聖女様の新しい服も仕立てます。遠慮なく必要なものをお申し付けください」


 心配ご無用とユジンさんに、にっこりとキレイな弧を描く目口で言われ、私は気持ちが上向く。


(わあ、全部使っていいの? 太っ腹~)


 こんなドレスがいっぱいの衣裳部屋を見たこともない私は飛び上がって喜びたい気持ちを抑えて、大人らしい返事をする。 


「まだよく見ていないので、確認してお願いしますね。取り急ぎ物がどこにあるか分からないので、メイドさんが助けてくれると助かります。私、勇者様と朝食の約束をしていて……」

「そうでしたか、リサさん、聖女様を手伝って差し上げて下さい」

「はい、ユジン様!」

「では聖女様、勇者様との朝食が終わりましたらお声掛け下さい」


 そういうとユジンさんは、リタさんというメイドさんを置いて去って行った。

 昨日、私の身支度みじたくを手伝ってくれたメイドさんとは違うみたい。

 私と同じくらいの年頃で、明るい栗色の肩までの髪に大きな目で人懐っこそうな感じがあり仲良くなれそう。


「えっと、リサさん。色々分からないことだらけなので、よろしくお願いします」


 私がぺこりとするとリタさんは、わあ、聖女様と期待の眼差しで私を見た。


「こちらこそ聖女様にお仕えできて光栄です。なんでもお申し付け下さいね!」


 あわわ、リサさんの期待を裏切ってごめんなさい。

『聖女』って肩書だけど何の力も無い一般人なんです。

 とはいえずに、私は静かに微笑んでごまかした。


「リサさん、質問なのですがこの服、城内を歩いていいレベルの平服ってどの辺か教えてもらってもいいですか?」


 私からすると、全部いい感じのパーティードレスにしか見えなくてどれを着ていいのかが分からない。

 ずっと、まっ白な聖衣というわけにはいかないというか、目立ちすぎて困る。


「今着ていらっしゃる聖衣はどこに着て行っても問題はないですよ。式典の時もそれに飾りを少し増すだけで着て行けます」


 おお、この聖衣だいぶ格が高い服だったのね。

 普段使いにしてはまずいのでは?

 やはり、聖衣以外の普段着を早急に教えてもらわないといけない。


「あとは、このクローゼットの中だとこの辺はパーティ用、この辺は城内での普段着ですね。あとここからは城下に出るようなときの平民の服です」


 リサさんがざっと教えてくれる。

 なるほど、格式順に服が並んでいた様子。

 これなら私も分かるとホッとする。

 身分制度あるんだ。

 ここはお城だし、勇者様がいて王さまもいるし、剣も魔法もある。

 ここは異世界だ。

 私はまだ、この世界のことを何も知らない。


(すぐに勇者様の呪いを解くこともできないし、元の世界に帰ることもできない私に今できることは、きっとこの世界を知ることだ)


 私は、お腹が空いていることを自覚し、そして朝食をたくさん食べることを決意した。


   *


 私はテオ君との朝食のために、急いで準備をする。

 昨晩、ベッドに吸い込まれるように寝てしまい夕食どころかお風呂にも入っていない。

 そんな姿で、ちょっと髪を撫でつけただけでテオ君のところに駆けつけるなんて、私の女子力は低すぎでは……?

 思い出すとよだれの跡がなかったとか、枕のシワが残ってたりしたんじゃないかと落ち込むけれど、テオ君の体調が心配でそこまで考えられなかったんだから仕方ない。

 私はリサさんに服を選んでもらっている間に、サッとシャワーを浴びて今度こそ身ぎれいにした。

 用意してもらった服に着替える。

 聖衣のようなローブやドレスは私には着なれないため、もう少し楽な普段着に近い物をお願いしたところ、白いブラウスにリボンタイ、落ち着いた青い色のジャンパースカートというコーディネイトにしてもらえた。


(こういうのでいいのよ~。ひとりで着れるしね。聖衣はまっ白は汚しそうで落ち着かないよぉ。生活汚れはつかないっていわれてもドキドキしてたんだよね)

 だいぶ今までの服に近くなり、私は気が楽になった。


「聖女様。お似合いですよ!」

「ありがとうございます。これ気に入りました」


 私はお礼を言ってから、いつものようにひとつ結びに髪を束ねようとすると、リサさんが『もう少し私に仕事をさせて下さい』と、手早く私の髪を編み込みにしてサイドにたらしてくれた。

 お化粧も軽くおしろいはたいてリップグロスを塗ってくれる。


 至れり尽くせりに慣れしまいそうな自分が怖いから、どれを使っていいのかも分かったし、なるべく今後は自分でやろう。

 

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