3-2 魔獣との戦い
私が心配になり青ざめていると、となりで戦況を確認しながらユジンさんが解説してくれる。
「勇者様は風魔法がお得意なので、飛びかたが綺麗ですよね」
確かに、あれはジャンプというより飛んだにふさわしいかも。
でも、落ちるためにあの高さまで飛んだんだよね!?
しかも、その風魔法とやらで落下速度を増してなかった?
(そんなことして体は大丈夫なの?? 肩が外れたり、腕が折れたりしないの?
おかあさんは心配よぉ!!)
私の心配をよそに、テオ君はまったくもって大丈夫そうだった。
魔物に深々と刺さる大剣を抜くと、すぐさま魔物から飛び降り十数メートル距離を取る。
魔物がどうと倒れた。
そこに、騎士団が警戒をしつつ魔物が事切れたかどうかを確認しはじめた。
その様子を遠巻きにテオ君が、不意に苦しそうに肩で息をしはじめた。
(やっぱりダメージがあったのでは? でも、さっきまでは平気そうだったよね? どうして……)
すかさず騎士団長がテオ君の小脇を抱えてこちらへ連れて来る。
ユジンさんの治療を受けさせるためだ。
私は何の役にも立てずに、ただそれをそばで見守るしかなかった。
「マルスさん、勇者様をこちらへ!」
ユジンさんにうながされて、騎士団長のマルスさんがテオ君を人目につかない木陰で休ませる。
テオ君は樹に背を預けてぐったりしている。
少し顔が赤い。首元に発疹が見えた。
肩で息をしていて苦しそう。
運動したからなのかな?
でも、戦い終わった直後は息は整っていたのに……。
心臓悪いのかな?
でも、だとしたらもっと青ざめるだろうし、戦闘後よりも戦闘中の方が具合が悪くなりそうなものよね。
(医者じゃないから何もわからないよぉ)
でも何かが私の記憶に引っ掛かった。
不思議とこのテオ君の体調不良に既視感があった。
苦しそうな様子が病気がちだった弟のユウちゃんと重なり、私は胸がぎゅっと締め付けられる。
「あの、お薬はないんですか?」
「あります。この聖水と回復魔法で一時的には良くなります。ただ、またしばらくたつとぶり返すことが多いので根本的な治療とは言えない状況です」
ユジンさんは、腰ベルトに下げているに小物入れからキラッとする小瓶を取り出しテオ君に飲ませた。
ユジンさんに渡された聖水を口にすると、テオ君は症状がおさまり意識がはっきりする。
(良かった~)
私はホッと胸をなでおろす。
でもこれってホントに呪いなの?
病気じゃなくて?
病気や怪我は聖水や回復魔法で良くなるらしい。
ただ癌のように、回復より浸食が早い病は聖水では良くならない場合もあるそうだ。
ただ、あくまで体の代謝を上げて回復しているため、体力がない子供や老人には効果がないこともあるとか。
失血しすぎても難しいらしい。
傷は治っても血液が足らずに死に至る場合もある。
聖水も万能ではないそうだ。
じゃあ、テオくんは?
一時的に回復しても、少したつとぶり返したり、また別日の戦闘でも同じ症状が出る。
体力は十分にありそうなのになぜ?
医療知識のない私がここに聖女として呼ばれたことに理由があるならば、この症状は呪いではなく、私の知ってることなのかも知れない。




