7-1 くり返される魔獣退治
私はこの日も次の日も、魔獣退治に同行した。
魔獣は頻繁にあらわれる。
『魔獣あふれ』と呼ばれる天災は周期的なもので、数年前から魔獣が増えているそうだ。
統計で行くとあと一、二年でピークを迎える。
それに備えて勇者や騎士団が日々、魔獣退治や鍛錬に励んでいる。
普通の魔獣が増えると、その中から変異種という大型化や特殊な力を持った変異魔獣があらわれる。
さらに変異魔獣の中から、頂点に君臨する『魔獣王』が誕生する。
その魔獣王を倒す聖剣を操れるのが『勇者』だそうだ。
(テオ君の持つ大きな剣が『聖剣』だったなんて!剣の良し悪しなんてわからない私にも、なんだか特別な感じがしたものね)
私は、テオ君のキラキラ光る剣捌きを見ながら納得と何度も心の中でうなずいた。
大型の魔物退治は、最初はゲームのモンスター退治やテーマパークのアトラクションようで私にとってはあまりにも現実離れして見えていた。
けれど、すぐに魔獣のすえたような獣くさい匂いもするし、倒したときは鉄さびのような生臭い血の匂いもして、それが現実だと突きつけられる。
私は、みんなが戦っているのを遠巻きに見ているだけだというのに、初日も2回目もこらえきれずに何度も青ざめてうずくまってしまった。
迷惑をかけたくなかったけど、どうしようもなく、神官のユジンさんに背をさすられながら、この世界がファンタジー映画でないことを思い知らされていた。
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同行も3回目になると、魔獣を見慣れるかと思ったけど、そんなことはなかった。
その日は、ワニのような魔獣が外郭の森にあらわれた。
ただ、今回も大きさは普通のワニとは違いトレーラーほどの大きさがある。
(なんで、こんなに大きいの!? 普通のワニの何倍なの? 一口で食べられちゃうよ……)
猪の時も熊ような魔獣の時も私は怖くてしゃがみこんでしまったが、今回は震えながらもなんとか気力で立ち続けた。
この国に出る魔獣は、通常は日本にいる野生動物らとそう変わらない。
けれど、魔獣あふれが近くなると大きな個体が増える。
それで町や村の警邏隊では駆除するのは無理なるため、騎士団が忙しくなるそうだ。
(何度見ても魔獣は怖い。例え動物園でも、ライオンやトラを何度見ても怖いのと一緒だ。怖いものは怖い)
自分の力でどうにもならない獣と対峙するのに、慣れるわけがない。
本能的な死への恐怖は拭うことができなかった。
(私に魔獣を倒すようなすごい聖女の力か何かがあればいいのに……)
けれど、私が命のピンチにおちいって物語のように聖女の力がパァァッと覚醒するようなこともなかった。
テオ君も騎士団さんも慣れた様子で、魔獣の力を削いでいく。
それを感心しながら私は思う。
(魔獣退治って熊に追いかけながら、食肉を捌くのを見ているような感じじゃない……? 私には、む、無理……)
しかし、仮にも『聖女』と頼られ期待されているのに、またもしゃがみこんで迷惑をかけるわけにもいかない。
私は、震えながら両手を握りしめ、魔獣退治を見守っていた。
ただ、目のいいテオ君にはそれが見えていたみたいで、離れたところから声をかけられる。
大剣を振りながら、こちらに顔を向けていた。
「千穂、怖いでしょ? もっと下がっていいよ」
その声に私はハッとする。
(テオ君、よそ見してちゃあぶないよぉ。私、震えてるの見られて心配させたかな? しっかりしないと!)




