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創造神の遊戯  作者: 面白味
創造神初めての冒険
50/54

47話 美しき終幕

テストまでに書きたかったところまで書けました。

一章も終わりに近づいてきて話のネタがたくさん湧いて来てます。来週テストなんで書けるか分かりませんが、投稿できそうだったらしますのでよろしくお願いします。


荒廃したロッキド鉱山の底。もはや死を待つのみとなった《古代石喰らいの女王》の巨躯を前に、空は静かにその歩みを止めた。


女王の数千の瞳には、もはや怒りも憎しみも残っていない。そこにあるのは、理解の範疇を超えた存在に対する純粋な畏怖と、終わりを悟った者特有の静寂だった。 


「お前はいいキャラだったよ、女王。今の時代の人間たちに、これほどの絶望と、そしてそれに対する『光』を見せてくれたのだからな。……カイルの覚醒も、お前がいなければ成し得なかったことだ」


空の声には、戦い抜いた強者への純粋な敬意が混じっていた。

しかし、同時にその声は、決定的な断絶を告げる非情な響きをも帯びていた。


「だが、これで最後だ。お前という生命の終わりに、一体「何」に挑み、そして何に敗れたのか。……俺とお前の間にある『圧倒的な力の差』を見せてやろう。……これを理解して死ぬことが、お前にとって最大の救済になるはずだ」


空が右手の指をパチンと鳴らす。

刹那、女王の意識は肉体から引き剥がされた。


女王が次に目を開けた時、

――そこは、音も光も、空気さえも存在しない「無」の空間。


先ほどまで感じていた岩の感触も、血の匂いも、大気の流れも一切ない。物理法則が崩壊し、上下左右の概念すら消失した灰色の世界。

意識体となった女王は、あまりの事態に困惑し、周囲を警戒するように見回した。


(ココハ……ナンダ……? 死後ノ、セカイ、カ……?)


女王は困惑し、自身の巨体を動かそうとするが、感覚がない。

辺りを見回しても、そこには自分を追い詰めた「仮面の男」の姿すらない。ただただ、静寂が支配する異空間。


その時だった。


その思考を遮るように、世界が激しく揺れた。

地震などという生易しいものではない。空間そのものが、何者かの手によって「揺さぶられて」いるかのような衝撃。


女王が顔を上げると、そこには天を覆い尽くすほどの、巨大な「何か」が顕現していた。


『……ッ!? コ、レハ……』


それは、目玉だった。

あまりにも巨大で、星々を瞳の中に閉じ込めたかのような深淵の色をした左目。その瞳孔が、女王という「小さな塵」を捉える。


そして、世界の輪郭が徐々に明らかになっていく。

女王が今いる「無の空間」は、実は巨大な「ガラス瓶」の中であった。


女王を覗き込んでいたのは、天に届くほどの巨神――否、それは紛れもなく、仮面を脱いだ「空」その人の姿だった。 


女王は、瓶の中に閉じ込められた一匹の虫に過ぎなかった。


これまで自分が振るってきた暴力、積み上げてきた歴史、全霊を懸けた咆哮。

それらすべてが、彼にとっては卓上の小さな箱庭で起きた、一時の暇つぶしに過ぎなかった。

彼が指を動かせば、瓶の中の世界は一瞬で崩壊する。彼が息を吹きかければ、万物は消滅する。


『ア……アガ、ガ…………』


言葉にならない衝撃。

圧倒的な、あまりにも圧倒的な「空」との距離。

戦うとか、負けるとか、そんな言葉では到底説明できない「次元の壁」。


女王の魂は、その真実を知った瞬間、あまりの重圧に真っ白に染まり、理解の限界を超えた恐怖が彼女の魂を焼き尽くそうとした瞬間、景色は再び現実のロッキド鉱山へと引き戻された。

 

『……ハァ、ハァ……ハァッ!!』


女王の巨大な眼球が、激しく痙攣する。

戻ってきた現実は、先ほど見た光景に比べれば、あまりにも優しく、そして儚いものに感じられた。

目の前に立つ仮面の男。彼はもう、敵ではない。

この世界という箱庭を統べる、絶対的な超越者なのだ。


空は静かに宙へと浮き上がった。


「理解したようだな。……さて、恐怖のまま終わらせるのも不憫だ。これまで誰も見たことがない、最高に美しい景色を見せてやろう」


空が両手を広げると、彼を中心に、巨大な半球状の結界が展開された。

結界の内部は、外界の喧騒から完全に隔離された。シルヴィアたちの声も、風の音も届かない、二人だけの「最後」の場。


外の光を遮断したその結界の内部には、満天の星空が映し出される。だが、それはただの星空ではない。

一つ一つの星が、空が編み出した極致の魔力回路として機能しているのだ。


空を中心に、今までに見たこともない複雑な魔法陣が幾重にも重なり、宇宙の真理を解き明かすかのような術式を描き出していく。


一枚、二枚、三枚。

幾重にも重なり合う魔法陣は、一つ一つが白銀と金剛の光を放ち、夜空に浮かぶ銀河のような輝きを放つ。その美しさは、それを見つめる女王の瞳から、死への恐怖を魔法のように消し去っていった。


『キ……レイ、ダ……』


女王の意識の中に、初めて純粋な感動が芽生えた。

これから自分を消し去る力が、これほどまでに澄み渡り、輝かしいものであるという事実に、彼女は魂が震えるのを感じた。


空の魔力が極限まで収束される。

それは破壊の力でありながら、同時に命の源流そのものを感じさせる聖なる鼓動。


「――さらばだ、古代の女王。お前の長い旅路に、相応しい終幕を」


星穿つ極光の終焉アステリズム・フィナーレ


放たれたのは、単純な光束ではなかった。

それは無数の光の蝶が舞い、極光のカーテンが波打つ、幻想的なまでの「輝きの奔流」。

その奔流が女王の巨体を飲み込んだ瞬間、轟音すら発生はしなかった。


光に触れた女王の肉体は、痛みを感じる暇もなく、末端から美しい結晶の欠片となって消滅していく。100kmの巨躯が、光の粒子へと変換され、天へと昇っていく。


(アア……温カイ……。コノ、光ノ、中ナラ……悪ク、ナイ……)


女王は、光の抱擁の中で、満足げにその意識を閉じた。

彼女を包んでいた数万年の孤独と飢えは、空が放った美しき一撃によって、跡形もなく浄化されていった。

光が収まり、結界が消失した時。

そこには、あれほど巨大だった古代の災厄の姿は、影も形も残っていなかった。


ただ、クレーターの底には、女王の残滓であった光の粒子が雪のように降り注ぎ、荒れ果てた大地を幻想的に照らしているだけだった。


結界が消え、静寂が鉱山に戻る。

そこには、ただ平らな地面と、澄み渡った夜空が広がっているだけだった。


崖の上でその一部始終を見ていたシルヴィアたちは、言葉を失い、ただ立ち尽くしていた。


「……消えた……。あんな、化け物が……一瞬で……」

「なんて、綺麗な……」


冒険者たちの中には、思わず跪き、祈りを捧げる者さえいた。

彼らが目撃したのは、血生臭い討伐ではない。

それは、荒ぶる神を鎮めるための、あまりにも美しい「葬礼」だった。


空は、光の粉が舞う中、ゆっくりと地上へ降り立った。

仮面を外し、それを異空間へと仕舞う。

彼の表情には、大仕事を終えた達成感よりも、お気に入りの玩具が壊れてしまった時のような、僅かな寂しさが混じっていた。


その時、脳内に穏やかな声が響いた。


『……お疲れ様でした。空様。鼠の掃除は完了いたしました。……そちらも、無事に「遊戯」を終えられたようですね』


エドガーからの念話だった。



「ああ、エドガーか。……いい遊びだったよ。カイルも無事なんだろう?」

『はい。シルヴィア殿たちの手により、安全な場所へ。傷も空様の慈悲により、完治と言って差し支えない状態です』

「そうか。なら、俺たちの出る幕もここまでだな。あいつらが来たら説明が面倒だ。」


空は一度だけ、女王が消えた場所を振り返り、それから歩き出した。

後方では、シルヴィアたちが呆然とこちらを見ている。彼女たちが正気を取り戻し、この「異常事態」の責任者に詰め寄ってくる前に、姿を消すのが得策だろう。


「街に帰ったら、温かい茶でも淹れてくれ。……少し、休もう」

『畏まりました。最高の一杯をご用意いたしましょう』


空はふっと笑うと、虚空を指で切り裂いた。

そこに現れた空間の裂け目へと足を踏み入れ、彼は一瞬にして戦場から姿を消した。


数分後。

シルヴィアたちが息を切らせて辿り着いたクレーターの底には、何もなかった。

あれほど巨大だった女王の死骸も、天を衝くほどの魔力を放っていた仮面の男も。

ただ、そこには不自然なほど澄み渡った空気と、新雪のように真っ白な、正体不明の光の粉が、クレーターを優しく覆っているだけだった。


「……いない。あの人も、女王も……」


シルヴィアは、自身の震える指先で、宙を舞う光の粒子を掴もうとした。

だが、それは指をすり抜け、消えていく。

シルヴィアは夜空を見上げ、震える声で呟く。


「……終わったのね。……何もかも」



《ロッキド鉱山》の壊滅。古代女王の復活。マフィア《赤犬》の崩壊。一人の英雄の覚醒。

世界を揺るがした大事件は、たった一人の「神」の気まぐれな遊戯によって、幕を閉じた。



感想とか貰えたらモチベ爆上がりするので出来る人はお願いしたいです

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