41話 金色の猛攻
遅れて申しわけありゃせんでした。
色々悩んだり疲れて寝落ちしたりして中々書けなかったのですが冬休みに入ったので時間に余裕ができましたのでまた書いていきます。
大地に響く大きな振動――
巨体が動くたび、地表は波打ち、岩盤は砕け、空気そのものが震える。
その圧倒的な質量と魔力の奔流は、並の冒険者であれば近づくだけで膝を折るほどの威圧を放っていた。
――だが。
その“常識”の外側を、黄金の光が切り裂いた。
女王の側頭部に、閃光が走る。
直後、鈍く重い音とともに、岩の装甲が弾け飛んだ。
「……グ、オォォォ……?」
女王が困惑したような低い唸り声を上げる。
自らの身体に“傷”が刻まれたという事実を、理解するのに一瞬の遅れが生じた。
そこにいたのは――人影。
黄金の魔力を全身に纏い、地を蹴って宙を舞う一人の剣士。
折れたはずの剣は、今や純粋な魔力によって再構築され、実体を持つ刃として彼の手に握られていた。
これまでの攻撃とは明らかに違う。
黄金の魔力が刃を包み込み、剣はもはや単なる鋼ではない。意思を持たぬはずの剣が、女王の存在そのものを拒絶するかのように、装甲を切り裂いていく。
カイル・ヴァルハイト
だが、その瞳に意識はない。
眼から魔力が溢れ、呼吸は荒くも規則的に。そこにあるのは、理性でも思考でもなく、
――本能。
――止めろ。
――己が倒れようと。
――目の前の存在を、ここで。
その衝動だけが、彼の肉体を支配していた。
「――――――――!!」
声にならない咆哮とともに、カイルは再び女王へ剣を振りかざす。
その速度は、以前とは比べ物にならない。
地面を蹴った瞬間、衝撃波が遅れて弾けるほどの加速力。
女王は巨大な体躯をうねらせ、尾を振るう。
山をも砕く一撃。
叩きつけられた尾が大地を粉砕する。
しかし、巻き上がる土煙の中、カイルの姿はそこにはなかった。
刹那、女王の胴体側面に、大きな軌跡が刻まれた。
金鋼の斬撃が、装甲を裂き、内部の肉へと到達する。
「ギィィィアアアアアアアア!!」
女王が初めて、明確な痛覚を伴う絶叫を上げた。
それは、主との戦いですら見せなかった反応だった。
攻撃は止まらない。
―― 一撃、二撃、 三撃
着地と同時に身体を反転させ、再度跳躍。
縦横無尽に空を駆け、女王の身体に斬撃を叩き込む。
一撃一撃は決して致命ではない。
だが、確実に――削っている。
女王の硬質な外殻。
これまで、いかなる攻撃も弾いてきたその装甲が、金鋼の刃によって徐々に傷が増え始めていった。
女王が苛立ちを見せる。
それは本能的なものだった。
力では圧倒できるはずの存在が、自分を傷つけている――その事実が、女王の誇りを刺激していた。
再び突進が来る。
だが今度は、カイルは避けない。
正面から、剣を構え――
衝突。
ドカンッ、と衝撃波が広がる。
かつては吹き飛ばされ、剣すら折られ死の危機におちいった攻撃。
しかし今、カイルはそれを真正面から受け止めていた。
金鋼の魔力が身体全体を包み、衝撃を分散させる。
足が地面にめり込みながらも、カイルは一歩も退かなかった。
女王は理解し始めていた。
――こいつは、危険だ。
咆哮と共に、女王は巨体を大きくうねらせる。
地面に潜ることも考えたが、それは本能が否定した。
目の前の存在は、逃げれば追ってくる。
それも、確実に。
ならば――この場で始末するのみ。
これまで女王は、純粋な肉体の力だけで戦っていた。
圧倒的な大きさによる質量と硬度、それだけで全てを蹂躙してきた存在。
だが――
今、初めて女王は、この戦いで魔力を解放した。
周囲の大地が黒く染まり、空気が歪みだした。
ゴゴゴゴゴゴ……。
異変は、明確だった。
女王の身体が変化を始める。
外殻はさらに厚く、より結晶化したような質感へと変化してき、装甲の隙間から紫黒色の魔力が噴き出し、それが形を成す。
ぬるり、と生々しい音を立てて無数の“触手”が生え出した。
一本や二本ではない。
数十、数百、数千、数万――胴体の各所から、魔力と肉が混ざり合った異形の腕が伸びる。
一本一本が装甲のように硬く、先端は刃のように尖っていたり、吸盤が広がっていたりと様々な形をなしていた。
「――――――――――――――――――!!!!」
女王の第二の咆哮。
それは怒りであり、恐怖であり、進化の宣言だった。
触手が、一斉にカイルへと襲いかかる。
風を裂く音が、重なり合う。
回避不能とも思える数。
だが、カイルは止まらない。
黄金の魔力が身体能力がさらに引き上げられる。
紙一重でかわし、斬り、跳び、受け止める。
――ザシュッ。
しかし、さすがのカイルも、全てを避けきることはできなかった。
肩を掠める一撃。
脚に走る衝撃。
一本、二本――三本と徐々にカイルの金鋼の身体に、触手が掠っていく。
金鋼の魔力が防御を果たしているとはいえ、確かなダメージが蓄積していく。
しかし。
それでも、カイルの動きは鈍らない。
痛みを認識する“意識”が存在しないからだ。
あるのは、止めろという本能のみ。
触手が絡みつこうとすれば、剣で断ち切る。
背後から来れば、振り向きざまに斬る。
空中で足場を失えば、魔力を使い無理やり軌道を変える。
その戦い方は、普通には程遠い。
だが、純粋な破壊力と速度で、女王を押し返していく。
女王の巨体が、わずかに後退する。
――ありえない。
この星に生まれて以来、数え切れぬほどの生物を喰らい、この地の王として君臨してきた存在。
その女王が、“人間一人”に押されている。
だが同時に、女王も理解していた。
女王の触手が次々と斬り落とされ、再生し、また斬り落とされる。攻防は完全な消耗戦へと突入していた。
だが、その最中。
誰も気づかぬほど微細な変化が、カイルに起こり始める。
黄金の魔力が、わずかに不安定になり始めたのだ。
煌めいていた光が、時折揺らぐ。
剣の形状も、刹那的に歪む。
――限界が、近い。
残り少ない魔力を、本能が無理矢理引き出している。倒れないが――限界が近いことは明らかだった。
この覚醒は、持続するものではない。残された魔力を、命を削るように燃やし続けているだけ。
それでもカイルの身体は理解していた。
今、止めなければならない。
ここで引けば、全てが水の泡になる。
女王もまた、それを感じ取っていた。
――こいつは、長くは持たない。
目の前の黄金は、燃え尽きる寸前の炎だ。
残り少ない魔力を無理やり引き出し、肉体に負荷をかけ続けている状態。
ならば。
その力を削り切る。
女王は触手の攻撃をさらに激化させ、同時に体内から膨大な魔力を放射する。
周囲一帯が、魔力嵐と化す。
それでも。
黄金の剣士は、進む。
一歩、また一歩と。
女王の正面へ。
剣を構え、魔力を集中させる――
次の一撃に、すべてを込めるかのように。
意識なきまま、カイルの本能は叫んでいた。
――ここで、止めろ。
――これ以上、進ませるな。
黄金の魔力が、さらに強く輝く。
その光は、遠く離れた場所にいる者たちの目にも、はっきりと映っていた。
メリークリスマス!
友達は風邪、彼女はできずなので家族と楽しく暮らします。サンタさん!プレゼントは想像力でお願いします。




