35話 弱点
今回少し短めですが書きたいとこまで書きました。
よろしくお願いします。
黒鋼の刃が通じない――
それは、戦士にとって屈辱であり、同時に“絶望”という言葉を突きつけられた瞬間でもあった。
だが、ここで立ち止まるわけにはいかない。
女王の巨体が大地を踏みしめるたびに、山脈全体が揺れ、砂塵が舞い上がる。
その振動に膝を揺らしながらも、カイルはまだ剣を握っていた。
(……装甲に斬撃は通らない。黒鋼でも弾かれる。)
女王の進行を止められないまま、カイルは呼吸を荒げつつも必死に状況を読み直していた。
(斬れない……なら、斬れる場所を探すしかねぇ……!)
黒鋼の剣を握り直し、これまで戦ってきた石喰らいとの戦闘の記憶を思い出す。
硬度。
厚さ。
外殻の形状。
動きやすい部分、重心、筋肉の動作。
石喰らいの外殻は、基本的に岩のように硬い。
そして――ふと、視界の端に引っかかる。
「顔……」
主との戦い――顔に対する斬撃は通りやすく、身体ほど装甲が分厚くない。
「……そうだ。お前ら、頭部だけは……柔らかかった」
顔に近い部位――特に口周辺は、装甲が薄く、肉質が露出していた。
それは石喰らいという種に共通する特徴。
ということは――
この女王にも、同じ“種族的弱点”が存在する。
(そうだ……石喰らいは掘るために口部が露出している分、装甲は背中や体側に集中してる。
つまり、真正面は守りが薄い……!)
カイルの目が鋭く光った。
「でかくなろうが関係ねぇ……弱点は、どんな奴にだって存在する!!」
鋼の翼が大きく広がり、魔力が唸りを上げる。
――ゴッ!
カイルは地面を蹴り、女王の巨大な顔。
その中心へ突っ込むように一直線に向かう。
黒い閃光。
山肌に影が走る。
「――“黒鋼・穿黒閃”ッ!!」
鋭い螺旋の斬撃が、女王の顔面、口器の根本――
露出している肉部分へ叩き込まれる。
――ザシュッ!!
ほんの一筋。
わずかに。
本当に“かすり傷”と呼ぶ程度の浅い傷が、女王の肉へ刻まれた。
「……通った……っ!」
カイルの胸に微かな希望が灯る。
だがその瞬間――
女王が咆哮した。
大地が歪んだ。
空気が押しつぶされた。
そして――
――グォオオオオオオオオオオオオオオッ!!!
怒り。
100km級の古代生物にとって“痛み”はほぼ無縁。
だが数百年、あるいは千年ぶりか――
そのわずかな刺激が、女王の本能を大きく揺らした。
女王の巨体が、ありえない速度でカイルの方へ向かってきた。
「ッ!?」
体当たり。
少しでも触れれば山が粉砕されるほどの質量を、そのまま叩き込まれる。
(やべぇ……体制が……!)
カイルは剣を構え、全力で受け止めに入った。
「――黒壁ッ!!」
防御技。
カイルは剣を横にして構え、防壁を全展開する。
黒鋼の翼も守るように回転させる。
――しかし。
そのすべてを嘲笑うように、質量が叩きつけられた。
――バギィィィィィンッ!!
黒鋼の防壁は一瞬で粉砕された。
次の瞬間には、カイルの剣に激しい衝撃が走る。
「ぐっ、がぁぁぁああああああッ!!?」
両腕が悲鳴を上げ、骨の軋む音が響いた。
剣が――折れた。
黒く輝くはずの刃が、根元から完全に折れ、黒鋼の粒となって風に舞っていく。
(嘘だろ……俺の黒鋼が……!)
そして防御を失ったカイルの身体に、女王の質量がそのまま叩き込まれた。
――ドゴォッ!!!
吹き飛ぶ。
人間が弾丸のように飛び、岩壁へと叩きつけられる。
岩と肉が砕ける鈍い音が、無慈悲に響き渡った。
「…………っ」
血を吐き、カイルの身体はそのまま地に崩れ落ちる。
黒鋼が身体を強化していたおかげで即死は免れたが、だがそれでも……生きているのが不思議なほどのダメージだった。
腕は折れ、肋骨も砕け、呼吸すら薄い。
剣は失われ、戦闘不能。
「……まだ……だ……街……が……」
カイルは折れた剣に手を伸ばす。
しかし指先が力なく、地面に落ちた。
女王は、カイルが吹き飛ばされたことを確認すると、再びアーリスへと向き直った。
(……ダメだ……身体が……)
地響きが遠くなっていく。
女王の巨体が、すべての音を吸い込む。
(止め……なきゃ……)
カイルはそれでも立ち上がろうとした。
だが――立つこともままならず、身体がまったく動かない。
視界が暗く染まり始める。
(……ク……クソ……)
倒れた。
完全な意識喪失。
が、その時――
ドクンッ……
カイルの胸の中心、心臓が一度だけ強く脈打った。
まるで何かが呼び覚まされるかのような――
大きく、鋭く、異質な“鼓動”。
ドクンッ……!
折れた剣の残滓――黒鋼の粒子が、カイルの周囲に漂い始める。
ドクンッ……!!
鼓動は、音として周囲に響くほど強くなっていた。
バイトキツイッピ




