33話 集う強者たち
投稿遅れてしまい申し訳ありません。
学生の身なので大目に見てほしいです。
テスト終わったのでまた書いていきますのでどうぞよろしくお願いします。
ギルドに貼り出された緊急S級依頼は、瞬く間に周囲の都市や拠点へと広がった。
その情報が最初に届いたのは、大都市アーリスの北区にある白と青を基調とした、美しく整理されたクランハウス。大クラン《暁の羽根》の拠点だった。
白銀の鎧を纏い、腰まで届く金色の髪を靡かせる一人の美女が顔を上げる。
《暁の羽根》筆頭、Sランク冒険者――シルヴィア・オルディス。
そこへ息を切らしたラフィーナが駆け込んでくる。
「シ、シルヴィアさん! 緊急依頼です! しかもS級ッ!」
「――S級? この国じゃほとんど発行されないはずよ。内容は?」
「鉱山の崩壊と、超大型魔物の出現……それも、古代種の石喰らいの“女王”だとか!」
シルヴィアの青い瞳が鋭く細まる。
「女王」――その単語だけで、S級が乱発されない理由を理解できる。
シルヴィアは椅子を立ち、白銀の槍を手にした。
「……久々に血が騒ぐわね。動けるものは準備しなさい。暁の羽根、出撃よ!」
その一言で、クラン内の空気が一気に戦場のそれへと変わった。
「は、はいっ!」
暁の羽根が動き出したことで、周辺の冒険者コミュニティもざわつき、強者たちが次々とギルドへ向かい始めた。
***
同じ頃、別の場所――スラムに拠点を起き、裏社会を牛耳る《赤犬》の首領にも情報が届く。
「首領……ついに来ました。“例の封印が解けた”とのことです」
赤犬首領――《ルガス・グリード》。
「……ああ、長かった。ようやく我らが野望の幕が開ける。全員に伝えろ。幹部は総出、それ以外も一部は鉱山へ向かう」
報告を受けた男は、椅子を軋ませながらゆっくりと立ち上がり、灰色のマントを羽織った。
その瞳に宿っているのは恐怖ではない。ようやく訪れた“待望の時”に対する狂気じみた歓喜だった。
「クク……ついに来たか。あの化け物さえ手に入れれば、この国は――」
男は部下に指示を飛ばす。
「てめぇら、鉱山へ向かうぞ。計画を完遂する!」
赤犬の組員たちはすぐに鉱山へ向かい、アジトは手薄の状態になった。
それを――ある男が高い屋根の上から見届けていた。
「よし。全員外に出たな」
空だ。
首領が出ていくのを確認した空は、軽く伸びをするとひょいと屋根から飛び降りた。
「さて――ラグンの家族を助けるついでに赤犬のアジトでも見さてもらいますか」
***
そして街の中央──冒険者ギルド本部。
緊急依頼を聞きつけた冒険者たちが、広間に溢れかえるほど集まっていた。
「S級依頼なんて、何年ぶりだ?」
「S級依頼なんて初めて見る……」
「黒鋼の翼のカイルが時間を稼いでるらしいぞ」
「マジかよ……あいつ死ぬんじゃ……」
ざわつく空気の中、壇上にひとりの老人が姿を現した。
「静まれ!」
その声は、神殿の鐘のように広間を震わせ、たちまち全員を黙らせた。
「これより──緊急S級依頼について説明を行う」
ギルドマスター、モルデン・ゴートン。
数十年前、S級冒険者として国中に名を馳せた男だ。
「依頼内容は、《古代石喰らいの女王》の討伐、または撃退だ!
全長は推定100キロ。強さは未知数……だが少なくとも、通常のS級魔物を凌駕している」
「……!」
冒険者たちの喉が鳴る。
恐怖と興奮、両方の感情が混じった音。
「今回の依頼は極めて危険だ。最悪、この街まで侵攻してくる危険がある。現状、戦力は全て現場に送る。ここにいる者は全員、即応戦力として扱う!!」
ぎょっとする者、唇を噛む者、拳を握りしめる者。
だが誰ひとりとして文句は言わなかった。それほどまでに厄介な相手だということを、全員が理解していた。
「現場では、冒険者カイル・ヴァルハイト──《黒鋼の翼》が単独で時間を稼いでいる。
少しでも早く応援が必要だ!」
場の空気が一気に引き締まる。
そして──
「報酬は──大きい功績を挙げた者には金貨300枚。戦闘に参加した者にも一律30枚。
追加で国からの褒賞金も出る」
どよめきが広がる。
「……やるしかねぇだろ」
「金貨300って見たことねぇぞ」
「いや、それ以上に“名誉”だ。S級依頼……こんな機会二度とない」
戦いたい者。稼ぎたい者。名を上げたい者。
様々な野心が集まる。
「では──各自準備を整え次第、転移魔法陣へ向かえッ!!」
その号令で、冒険者たちが一斉に動き出す。
暁の羽根のメンバーが先頭に立ち、続けて各クラン・ソロの強者たちが次々と転移装置の中へ。
白い光が放たれ、冒険者たちは次々と現場へ送り出されていくのであった。
***
冒険者たちが現場へ向かう中。
空は屋根の上から、目を細めた。
「さて……。アイツら、全員出払ったな。」
空は両手を軽く鳴らす。
「よし。じゃ、助けに行くか。」
瞬間、気配を一切消し、赤犬のアジトへと侵入した。
暗い廊下。
血の臭いと鉄の臭いが混じる地下通路。
だが空は眉一つ動かさない。
全身に気を巡らせ、アジト全域の位置を瞬時に把握する。
「……いた。ラグンの家族も、他の人質も。」
足音は一切ない。
気配もない。
だが空は次の瞬間、ふっと姿を消した。
*
廊下の曲がり角。
監視の男が一人、あくびをしている。
その首が、いつ落ちたか誰も気付かないほど静かに切り飛ぶ。
「……悪いな、恨むならこの組織に入った自分をうはんでくれ。」
空は淡々と呟きながら、道を塞ぐ見張りを次々と瞬殺していく。
姿は見えず、音もない。
ただ、首と胴が一瞬だけ離れ、地面に転がるだけ。
まるで死神が通ったように。
---
薄暗い大部屋。
錆びた牢屋が並び、数十人の人が閉じ込められていた。
空がその場に現れた瞬間、囚われた人々が息を呑む。
「な、なんだ……!?」「誰……?」
牢屋の前に現れた男に捕らえられた人たちはざわつき始める。
「全員、助けに来てやったぞ。」
「た、助け……?」
「そうだ。安全なとこまで連れてってやるから助かりたい奴はついて来い。」
空は手を軽く振り、牢屋を構成する鉄そのものを一瞬で砂のように崩壊させる。
「今から外へ転移させるから、安心しろ。」
囚われた人の中に、空は覚えのある似た気配を捉え、手を止めた。
「……いた。」
ラグンの母と妹だった。
「ラグンの……家族か。よかった、生きてるな。」
女性は涙を流しながら空を見つめた。
「あなた……ラグンを……知って……」
「ああ、あいつはあんたらを救うために色々しでかしてくれたからな。まぁ、あいつのためにここに来たんだが…」
空は二人を優しく抱えて転移させた。
「さ、次は残り全員だ。」
牢獄に捕らわれた人々――五十名以上。
その全員を空は数十秒で救出し、アジトから完全に退避させた。
最後に空は誰もいなくなった牢獄を見渡し、小さく呟く。
「ラグン……お前の心の縛りは片付けておいた。
だから――お前も自分を見失うんじゃねえぞ。」
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