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創造神の遊戯  作者: 面白味
創造神初めての冒険
34/54

32話 応援要請


 古代を生きた封印されし石喰らいの女王はどんどん地上へと姿を現していく。

 山脈を貫くほど巨大な影。その頭部は城壁のような岩殻に覆われ、眼孔には赤黒い魔力が渦巻いている。

 地響きが絶え間なく続き、小さな生命など容易にかき消すほどの圧が周囲に満ちていた。


 空は女王を見上げ、軽く呟いた。


 「さて……あいつの相手は──」


 言葉の途中、横から鋭く名を呼ばれる。


 「空ッ!」


 カイルだった。

 重傷こそ負っていないが、主との戦闘で身体のあちこちに傷を負い、鎧はへこみ、息はまだ荒い。

 それでも彼は堂々と前へ歩き、空の前に立った。


 「……カイル?」


 カイルは空とエドガーを見つめ、真剣な声で言った。


 「あいつは──俺が引き止める。」


 風が止まったように静寂が落ちる。


 「空、エドガー。

  お前たちはここら周辺の避難を誘導してくれ。

  そして街のギルドにも、この災厄が目覚めたことを伝えるんだ。」


 そして、わずかに笑って付け足した。


 「ギルドには……俺の仲間や俺より強いやつがいるはずだ。」


 空は眉をひそめ、すぐに言いかける。


 「いや、あいつは──」


 (──あれは俺がやりたいんだが。

  何より、あの女王相手にカイルが勝てるとは思えん。)


 そう言おうとした瞬間、カイルが強い声で遮る。


 「空。お前らは……まだ冒険者になったばっかりだだ。」


 その瞳は真っすぐ、澄んでいた。


 「強いのは知ってる。十分に見せてもらった。

  けど──あの化け物に挑むのは無謀だ。

  生きろ。お前らは、これからのたくさん冒険してこの世界を楽しむんだ。」


 空は苦笑を浮かべる。

 勝つことのできない相手から俺を守ろうとするこの男の在り方──


 (くそっ、こういう言い方されると断わるわけにはいかねーだろ。)


 カイルはさらに言う。


 「それに……俺はまだ恩を返しきれていないからな。

  空、お前に助けられた恩をな。」


 胸に手を当て、誇り高く告げた。


 「だからこれは、俺がやる。

  『黒鋼の翼』のリーダーとして──いや、ただの冒険者としての俺のけじめだ。」


 彼は振り返り、女王の巨大な影を見据える。


 「行け。

  俺がこの化け物を引きつけている間に、避難誘導とギルドに伝えてるんだ!」


 空はエドガーを見る。

 エドガーは静かに頷いた。


 (……エドガーも、これは尊重すべき時だと判断したか。)


 空はゆっくりと息を吐く。


 「……わかったよ。

  あんたがそこまで言うなら、ここは任せるよ。」


 カイルの唇がわずかに緩む。


 「任せろ。」


 空とエドガーはラグンを連れて労働者たちがいた方向へと走り出した。



 その背後で──


 カイルは剣を構え、一人きりで鉱山の方へと歩いていく。


 女王が、動いた。


 大地が波打ち、森がなぎ倒され、生物たちが逃げ出していく。

 その巨体が空へと影を落とす。


 空は走りながら、その背を見た。


 (……カイル。

  生きろよ。お前のような奴が死ぬには早すぎる。)


 その願いを飲みこみ、空は労働者たちのいる方向へと走る


 ──戦場に残ったのは、カイル一人。


 鋼の光を纏う冒険者と、古代石喰らいの女王。


 この大陸では比較にならぬほど隔絶した二つの存在が、ついに向き合った。


***


 地震が起こって数分、労働者たちは鉱山から離れて避難していた。

 そこへ空とエドガーが現れると、すぐに疑問が飛ぶ。


 「い、一体何があったんだ!?」

 「鉱山が崩れただけじゃない……あの化け物はなんなんだ!」


 空は後ろにいたラグンを掴んで前に投げた。


 「──そいつから聞け。」


 「うわっ……!」


 地面に転がったラグンは涙をこぼしながら叫んだ。


 「ご、ごめんみんな! 全部、僕が……!

  家族を助けるために……こうするしかなかったんだ……!」


 労働者たちはざわめいた。

 怒号が飛ぶかと思われた。


 しかし──違った。


 一人の壮年の鉱夫が前に出て、ラグンの肩に手を置いた。


 「……儂らはな、お前の父ちゃんからお前のことを託されたんだ。」


 ラグンが顔を上げる。


 「“ラグンを頼む。あいつは不器用だが優しい子だ。

  俺の後を継げるまで、どうか……そばにいてやってくれ”ってな。」


 別の者が続いた。


 「誰だって家族を人質に取られたら極限の選択しかできねーよ。」

 「だから……責めねぇよ。この先食っていけるかわからんがな、ラグン。」


 ラグンは堪えきれず泣き崩れた。


 空はその光景を横目に、手をパチンと鳴らした。


 「んじゃ、避難用意すっか。」


 大地が揺れ、豪風が吹く中──

 空の足元に魔法陣が展開される。


 そして次々に現れる大型のゴーレム車。

 十数台が一気に形成され、その車輪は地形に合わせて柔軟に変形した。


 「こいつらに乗れ。街まで自動で送ってくれる。」


 エドガーは一礼し、労働者たちに向けて声を張った。


 「皆さま、こちらへ! 順番に乗車を!

  安全は私が保証いたします!」


 混乱していた人々は、エドガーの静かな声に導かれ落ち着きを取り戻す。


 空はエドガーに手を振った。


 「エドガー、頼んだ。避難誘導──任せたぞ。」


 「お任せください。」


 そう言ったエドガーの表情は、いつものように冷静だった。


 空はその様子に軽く笑い、


 「……さて、やることは山ほどある。」


 そう呟くと、空の姿がふっと消えた。


 瞬間移動(テレポート)──。


 ***


 街へ到着した空は、真っ先にギルドへ向かった。

 扉を勢いよく開けると、受付のリーナが驚きの声をあげる。


 「わっ!? く、空さん!? どうしたんですか、そんな急いでで!」


 空はカウンターの上に現場に繋がるでモニターを魔力で映し出した。


 「緊急事態だ。至急現場で対応できる人を集めろ。

  ロッキド鉱山で禁忌の封印が解けて、古代級の魔獣が目覚めて鉱山が崩壊した。」


 リーナは真っ青になった。


 「な、何ですって……!?」


 空はさらに言い放つ。


「現場では『黒鋼の翼』のカイルがただ一人、足止めしてる状況だ。」


 その言葉にギルド中がざわめく。


 リーナは慌てて職員たちに声を上げた。


 「緊急S級依頼──発令!!

  冒険者全員に告知! 至急応援を集めて!!」


 ギルドの掲示板に大きく赤字の依頼書が張られ、

 内部は一瞬で緊迫した空気に包まれた。


 空はそれを確認すると、静かに息を吐いた。


 「……よし。」


 そしてギルドを出ようとして、ふと立ち止まる。


 「カイルの所に戻る前に……やることがあるな。」


 空の口元に、意味深な笑みが浮かんだ。


 「あいつの心配のもとでも取り除いとくか…」



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